特に無し
※ 死ネタ注意
side オレーシャ
「どうすル?」
「私が、あの斧を防ぐ。お前は本体の鎧をどうにかしろ」
横に居たファリゴリが走り出す。それに続いて、ワタシも槍を構えて走った。
『ふんっ!』
接近したが、薙ぎ払われて2人して飛ばされた。
「イタタ……」
力が半端なく、正面からでは勝てないだろうと思い、回り込む作戦に変更した。ファリゴリが正面で敵の相手をしている隙に、ワタシが後ろから攻撃を……
「うそ!」
何と、手がもう2本生えて来て、抑えられた。そのまま、水辺にポーンと放り投げられ、敢え無くドボーンだ
水中はかなり広く、深い。なので思い付いた。あの鎧で巨大なら水に落とせば沈んで上がって来れないのでは? っと。ワタシ勢いよく水から飛び出し、頭上から鎧の敵を攻撃、そして直ぐさま回避行動を取り、離れた
「水の中に落とそウ。水の中は深いから、あの鎧なら沈むヨ」
「うむ」
ファリゴリも作戦に同意してくれた為、この作戦で行く事に。
「猫を舐めるなヨ!」
お互い四獣族の猫同士という事もあり、フットワークは軽い為、右に左にと相手を撹乱される。相手は巨体と鎧という事も有り、このスピードには付いてコレて居なさそうだ
スピードで圧倒し撹乱させては、魔法で攻撃を繰り返していると
『オノレェェエェェエ!』
相手は激オコ。当たる当たらない関係なしに、斧を振り回し始めた。コレでは近づけない。魔法で攻撃しようにも、流石に魔法を使いすぎた為、魔力は殆ど残っていない。こんな時、正直テンキが羨ましく思う。しかし、アレにはアレの過酷な運命が有る。それを思うと羨ましくは思えない。
ーー自由に生きられない人生なんか、人生ではないーー
「オレーシャ」
「何?」
「世界は今、大変な事になっている」
分かっているが? それがどうしたと言うのだろうか?
「世界は今、何処にも逃げ場はない。人々は逃げ惑い、怯え、そして殺される。そう、何処にも逃げ場は無いんだ」
「……」
「私達も逃げ場は無い。そして、ベルンハルトの様に強さも無い。だから生きるか、死ぬか、それは運だ」
「成る程ネ。逃げ場が無いから戦ウ、強くは無いから運に頼ル。良いんじゃ無イ? 所で君って、そんなに話せたんだネ」
「うむ」
純水に驚きだ。しかし、運か……
確かに、この世界は今、逃げ場は無い。何処もかしこもディムオブヂィクトゥが溢れてかえっている。何処に逃げても同じ。なら、戦へば生き残れるのか? 違うな。ワタシは、あの子の様に強くはない。ならば、生きるのは運次第だ
私達は同時に動いた。そして鎧の敵の斧を食い止めるが……
「がっ!」
「ファリゴリ⁉︎」
手が、また増えて、そして斧も増えた。その斧がファリゴリの左肩から右腰辺りまで、深く斬り裂いた。しかし、ファリゴリは手を離さず斧を握ったままだった。早く手を退けて、相手から遠ざけて手当せねば!
「オレーシャ……私に運は無かったらしい。そういえば、くじ運も悪かったかな?」
そう言い、ファリゴリは笑った。それを見たワタシも覚悟を決め、鎧の隙間を縫い、相手の首を落とした。しかし、鎧の敵は頭を斬り落としても死ぬ事なく動いている。コイツ不死身か?
それに気を取られていると
「グッ……」
私は右肩から左腰辺りまで切られたのと、左手も持って行かれた。コレでは、槍は握れないな……
『コレは失態だ。私が押される等と……彼の方に顔向け出来ない。ならば、此処で死ぬのみ」
敵の頭が叫ぶと同時に、この空間の壁と天井が爆発した。
『お前達も道連れだ!』
この空間が崩壊し始める。早く此処から脱出しなくては。
しかし、敵がそれを許してくれる筈はなく、手を掴まれてワタシとファリゴリは水の中に引きずり込まれた
敵の重みで沈んで行くワタシ達。慌てて水面に出ようとするが手が離れず登れない。慌てるワタシの上に、追い討ちを掛ける様に、大きな瓦礫が落ちてきた。天井が崩れて落ちてきたのだろう。それはゆっくりと、でも確実にワタシ達を沈めて行く。
コレではもう、上に上がれない
「……⁉︎」
急に手が離れ、体が吹き飛んだ。今まで居た場所を見ると、ファリゴリが相手を抑えて落ちて行く所だった。どうやら、ファリゴリが突き飛ばしてくれたらしい。一瞬目が合った。そして、微笑みかけて彼は沈んで行った
「プハッ」
水面に上がり、沈みそうになりながら陸地に辿り着き、上がった息を整える。そして辺りを見渡したが……
「あーア。逃げ場無いヤ」
其処には、もう逃げ場は無かった。瓦礫で来た道も、進む道も塞がれ、辺りは崩れて瓦礫の山。未だに崩壊は続いており、今立ってる場所も危なくなるだろう
ーーあーア。ワタシ、運は良い方だったのにナーー
逃してくれたファリゴリには申し訳ないが、ワタシは此処で終わりの様で非常に残念だ。まだ、やりたい事とか沢山有ったのだけれど……
瓦礫の山に腰を下ろして、傷口に手を当てて物思いにふける。
マルビナは大丈夫だろうか? アレは結構、責任感が強いから意地でも全部倒しそうだ。
それから……アンセルモは……うん。特に無し
ヴィヴィ王女の恋模様は見たかったが見られそうにないな……
テンキは、この先大変だろうな。
なんて、他人事みたいに思う。出来れば支えてあげたいが、もう無理な様だ。
だってホラ、もう目の前が暗い……
ーーそういえば、バント結局出来なかったネ。それが心残りかナ?ーー
〜〜〜〜〜〜〜〜
side テンキ
「……っ⁉︎」
「そうか……彼らも」
オレーシャとファリゴリの魔力結晶が、ほぼ同時に割れた。あの時、私が戦って居れば! マルビナの時も私が! 私の所為……
「自分を責めるのは良くないよ。どの道、世界の何処にいても、助かる保証は無い。彼等は良く戦った」
「貴方が、扉を開けなければ……」
「そうだね……」
サルヴァトーレは目を伏せて言う
「テンキ、次で終わらせよう。君も、もう辛いだろう? お互い、次で最後にしよう」
「そうだね」
その言葉に今まで持っているだけだった、剣を握り直す
私と愛しい彼は赤い空の下、向き合っている。
空には黒い月が有り、私達を見下ろしている
これは、【永遠の愛】と言う名の呪い
選択できるのは2つに1つ
《愛を選んで死ぬ》か《愛を選んで生きる》か
私は向き合う彼に言った
「貴方を愛してる」
彼は微笑み、自分もだと言った
私は己の信念の為に剣を構えた。もう、何も失わない為に……
彼も剣を構える
私と彼は同時に動いた……
ーーコレが最後ーー




