青空を、うんと遠くまで
※死ネタ注意
side マルビナ
羽ばたきながら思う。こんなに自由に飛ぶのは、いつぶりだろうかと……
故郷に帰れば、羽を出して飛んでも目立つ事はないが、此処で羽ばたけば目立ってしょうがない為、ずっと我慢していた。
私は、空を飛ぶのが好きだ。まぁ、鳥族なのだから、好きで当たり前か……その中でも、青空の中を飛び回るのが1番好きだった。その次は、夜空だ。
ーー青空を、うんと遠くまで……何時迄も遠くまで……ーー
「チッ。ホント、多いな!」
私と同じくらいの大きさは有るであろう図体で攻撃してくる虫が鬱陶しくて仕方がない。それを、魔法で焼き払い、剣で斬り伏せ、また飛んで遠くまで羽ばたくを繰り返すと、だんだんとその数が減って来たが
「なんだアレ……」
壁に何かが、へばり付いている。それは脈動している様にも見える。そんな物が辺りに沢山有った
「気持ち悪っ」
あまりの光景に吐き気を覚えたが、何とか持ち直し、虫の数を減らしていく
「嘘だろ……」
減ったと思ったら、また増えている。何故か……辺りを見回すと、それは分かった。
「あれ、卵か⁉︎」
壁に張り付き、脈動する物体は、どうやら虫の卵らしく、アレをどうにかしないと、いけないらしい
卵に魔法を放ち、全て焼け焦がすと……
『ギシャァァア』
何か大きな声が聞こえて来た。その声は地鳴りと共に、こちらに近づいて近づいてくる。やがてそれは私の前で止まった
「おいおい……コレは、アレだな……」
それは、辺りにいる虫より、更に大きい虫だった。確か前にベルンハルトが言っていた様な気がする。ディムオブヂィクトゥは母体と、その子供で構成されていると
「という事は、アレは母体か……」
その母体は卵を燃やされて大層ご立腹のようだ。戦闘は避けられそうにないな
「ズラかろうと思ったが、コレは無理だな」
私は魔法と剣を駆使して限界まで戦った
刃は母体に届かず、頼みの魔法はアレ程、強くもない為、私の攻撃は届く事は無かった。しかし、諦めきれずに踏ん張り戦ったが、辺りの虫に邪魔されて、いつしか羽の大半は毟られて、私の体は地面に落ちる。それを、母体は愉快そうに眺めていた
《腹が立つな……》
落下しながら思う。せめて、コイツは道連れにしたい。何故なら、この遺跡の外には戦えない女子供が多い。ただでさえ、被害が出ているのに、これ以上の被害は出せない。
父が昔言っていた。『戦士として、戦えない者を護りなさい』っと。か弱き者を守れと
《そういえば、初めてテンキと話た時、武道の時間だったけな……アイツ、ホントに弱くて》
なのに、こんな過酷な運命を抱いて生きてきたのか……
想い出が走馬灯の様に流れていく。プリクラを撮った。【宝探し】をした。【鬼ごっこ】も【模擬戦争】も……祭りでは花火を皆んなで見た。舞踏会では1人だけ着物を着て居たのが、1番印象的だった。流石アイツ。
沢山、楽しい事が有った。嬉しい事も有った。私はこの想い出を胸に……
「せめて、お前は道連れだ」
ーーお前達の生きる未来に祝福があらんことをーー
自らの体が燃え始める。コレは母が教えてくれた魔法だ。自らの体を糧とし、爆発的な魔法を使える。でも、使ってしまえば最後だ。
辺りに飛んでもない火力の火が撒き散らされる。母体は慌てて、此処から離れようとするが、もう遅い。衝撃で脆かった壁は崩れて初め、それに足を取られて抜け出せなくなっていた
「ザマァみろ」
辺りの敵も燃えていく。
体が地面に叩きつけられたが、痛みはもう感じなかった。私はそっと目を閉じる。
《心残りは、バントが出来なかった事かな……》
折角、オレーシャと練習したのにな……まぁ、まだ曲すら決めてなかったけど……
誰が歌うつもりだったのか? 確かアントニエッタは音痴だった筈。アンセルモとか? それは、なかなか面白そうだ
そんな事を夢に見ながら、私の人生は幕を閉じた
「じゃあな!」
〜〜〜〜〜〜〜〜
side テンキ
魔法を放ち、攻撃を避け、そうしているとパリンっという音が聞こえて来た。嫌な予感に、サルヴァトーレを忘れて手首を見る。
「マルビナ……」
「そうか……彼女は逝ったか」
サルヴァトーレは律儀に動きを止めてくれ、私の手首を見た
「彼女は素晴らしい女性だったね」
目を伏せて言うサルヴァトーレに、どの口が! っと言ってやりたい
私は怒りのまま、魔法を放つ。
ただ、ただ、怒りのまま……




