遺跡
船に揺られる事、早2日。
世界は今、大変な事になっていた。
扉が全部で4つ開き、世界中にディムオブヂィクトゥが溢れ出した。コレにより人間・魔族は大打撃を受け、その数を1人1人と減らして行く。
その中でも帝国は壊滅的で生存者は、ごく僅かと言われている。今、扉が開いているユエソンヌの情報は何も入って来ず、私は焦る一方だ
「皆んなは無事かな……」
「帝国は5日で崩壊していた。扉が開いてから2日経った。無事では済まされないかもな」
不安になりソワソワとアッチに行ったり、コッチに行ったりして居た私だが、取り敢えず落ち着く為、ベルンハルトの隣にチョコンと座っておく
その彼に話掛けると、無情な答えが返って来た
「軍の連中も動くと思うが、なにせ数が数だ。軍も回らなくなる。ヴィエールの奴らでどうにかしなければならないが、彼処は学生や戦えない住人が多く居る。それらが対処出来るとは思えないな」
「フセフォーロド王子は?」
「奴は大勢を纏める事をした事が無い。ヴィエールの全員を動かすなんて無理だ」
その言葉を聞き余計に心配になった。此処には安心しに来た筈だったのに……私は外に視線を移す。外は朝なのに暗く、一寸先は闇だった。
それを暫く眺めた私だったが、ふと、思い付き、ベルンハルトに視線を移す。それから、首に着けている魔力を貯めた首飾りを外し、それをベルンハルトの眼前に差し出した
「はい。コレ、あげる」
「……成る程。最後は俺にか。中々、考えたな」
「考えてはないけど、必要かもしれないから。お前に死なれたら困るし……それに今まで沢山助けてもらったから、そのお礼」
ソッポを向きながら話す私を、面白そうに眺めるベルンハルトは口を開く
「勘違いはするなよ。何も善意でお前を助けた訳じゃない。俺はお前を利用する為に、死なない様にしただけだ」
「……分かってるよ」
私から首飾りを受け取ったベルンハルトは、そのまま自分の首に首飾りを付けた。そして私に向き直り、顔を近づけて来て、そのまま唇同士が引っ付いた。私は、それをされるがまま受け入れた。相変わらず、不快感は拭えなかったが……
空が赤くなり始め、黒い月が登り始める頃、私達はヴィエールに到着した。急いで船を降り、中に入ると其処は帝国の王都と同じ様に地獄と化していた。
辺りには人の亡骸が散乱し、建物は瓦礫と化し、唯一帝国と違うのは、まだ戦闘が続いている事ぐらいだろうか? あちこちで銃声等の戦闘音が響いている。それを呆然と眺めていた私は
「扉はコッチだ。早く来い」
ベルンハルトに呼ばれて我に返り、その後に続いた
扉の前にはディムオブヂィクトゥが溢れており、中に入る為には一掃しなければならない。それを見たベルンハルトは
「邪魔だ」
手をかざすだけで辺りの敵を一掃した。マジつょい……
「ベルンハルトか……遅かったな。お陰でこのザマだ」
中からフセフォーロド王子が登場した。久々のフセフォーロド王子だ。その後ろには他の人達も居る
「マルビナ! オレーシャ! ヘタレ! ピッチーにオカマも! 皆んな無事だったんだね!」
「何とかな……」
「大変な事になっちゃったわねー」
「うむ」
「もうクタクタだヨ」
「同じく」
私の後にヘタレ、オカマ、ピッチー、オレーシャ、マルビナと続いた。
「あれ、アントニエッタとノエリアは? それにリスチーヌとアルレーヌも……帝国に残ったのか?」
「それは……」
私は答えに詰まった。それを見たのかフセフォーロド王子が
「今は話している暇はない。テンキ、中に他の魔女がいらっしゃる。会って来ると良い」
「他の魔女?」
私は中に入り、空いた扉の前に立っている4人を確認した。1人は【鏡の魔女】で、もう1人は【創造の魔女】。なら後2人は【影の魔女】と【森の魔女】だろう。全員集合だ
知らない2人の内、1人は長い黒髪にヴェールを被った綺麗な女性で、もう1人は緑の長い髪にヴェールを被った、コレまた綺麗な女性だった。
というか、やっぱり魔女は皆んなヴェールを被っているのか……私も被った方が良いのだろうか?
「時間が無い。手短に話を済ませる」
「此処は私達が抑えるから、地下の遺跡に向かいなさい」
始めに黒髪の女性が話し、次に緑の髪の女性が話す。その後に
「地下の遺跡には、より多くのディムオブヂィクトゥを出せる場所が有るわ。彼処を開けられれば、魔女の夫が出て来る」
鏡の魔女が話す。
地下の遺跡には、この扉よりも巨大な扉の様な物が有るらしい。そこからなら、化け物と化したシルヴォックかつての王も出て来れるらしく、解き放たれたら非常にマズイ。彼は帝国の首都で戦った皇帝より、遥かに強く、大きいと行き道でベルンハルトに教えてもらった。
「あそこは大きい為、一朝一夕では開けられない。だから、まだ開いて居ないが開くのも時間のだ。止めて来い」
黒髪の女性は言う。後から聞いた話だが、女性は【影の魔女】らしい。緑の方が【森の魔女】だ
「此処の扉を閉めようか迷ったけど……根本的な問題を解決しないと閉めた所で意味がない」
っと鏡の魔女が言う
「此処から、妾の妹が出てこようとしていてな、それを食い止める故、妾らは手を貸せない。どうにか自分の運命を打破して、止めてくるがよい」
魔女達に促され、私は来た道を戻る。
「話は着いたか?」
「うん。此処は私達が食い止めるから、遺跡に行けって……」
「行くぞ。時間がない」
そう言って前を歩きだすベルンハルトの背中を慌てて追いかけた。




