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黄昏の魔女

※死ネタ注意

 

「彼は、もう此処には居ないよ」

「マジで⁉︎」

「此処を開けて直ぐに向かったのだろうな」


 何と此処に、もうサルヴァトーレは居ないらしい。此処に居るのは……


「魔女に体を取られたランシーヌと、化け物に変わった皇帝だけだ」

「化け物に?」

「あぁ、外に居る巨大な化け物がそうだ」


 皇帝陛下は自ら化け物の姿となり、暴れて居るらしい


「さっき、化け物になる瞬間に立ち会ったんだ」

「立ち会ったんだ……」


 ヴィアンリが楽しそうに言っているが、全然楽しく無いだろう。しかし、この話で何故アントニエッタが攫われたのか納得がいった。お父さんだったのか……


「処で扉が開いてるんだよね? 閉めないといけないんじゃ……」

「そうだな」


 私の問いにベルンハルトが外方を向きながら答える。何処を見てるのだろうか?


「扉って生贄がいるんじゃなかったっけ?」

「そうだ。魔力量を【1000】捧げれば閉まる」


 扉は、生贄の魔力と命を捧げると閉まるらしい。扉を閉じるのに必要な魔力量は1000。大体の人の魔力量は100、有るか無いかなので、生贄は10人前後いるという事だろう。


「私なら1人で行ける? あ、後100居るのか……」


 私が900なので、後100……


「お前が死ぬのはマズイ。そのまま、魔女が体を使う」

「生贄は後で考えようか。先ずは、アントニエッタだ」


 私達は走って、魔女と皇帝の居る場所まで向かった





 そこには、ランシーヌが佇んで居た。その奥に巨大な化け物と化した皇帝陛下とアントニエッタ、ノエリアや、その他大勢が居た


「ランシーヌ……」

「良かった! やっぱり、ランシーヌだ!」

「ちょ、リスチーヌ! それは!」


 慌てて止めようと手を伸ばしたが遅く、リスチーヌは走ってランシーヌの所に向かってしまう。その勢いのまま、リスチーヌはランシーヌに抱きついた


「死んだって言われていたけど、信じられなくて……嘘だって! でも、やっぱり……っつ⁉︎ ランシーヌ?」

「リスチーヌーー!」

「今はダメだ」


 横に居たアルレーヌが悲鳴と共に走り出そうとしたが、それをニキートビィチが手を掴んで止めた。


「ラン……シ、ヌ? 何で?」


 リスチーヌの背中辺りにから、何かが出ていた。それは……手だ。真っ赤に染まった手


『馴れ馴れしい子ね』


 ランシーヌの声だが、ランシーヌの声では無かった……


 リスチーヌから手が抜けて、彼女はその場に倒れた。私の手に付けて居る腕輪の魔力結晶が1つ砕け散る。私は走って駆け寄ろうとしたが、ベルンハルトに止められた。


「後ろを見ろ。背後にアレが居る。迂闊に動けば、リスチーヌと同じ末路が待っているぞ」

「下手に近づかない方が良いね」


 奥に居るアントニエッタやノエリアが驚愕の表情をして居るのが見えた。その近くで魔女が高笑いをして居る


「そんなっ……」


 後ろに居るアルレーヌの悲痛な叫び声が聞こえてくる。


『さぁ、私に体を渡して頂戴? それは、私の体。コレは中々扱い難い。魔力量も少ないし、出来も悪い』

「なら、何で殺したの……」


 振り絞った声で私は問うた。魔女は死んだ器にしか入れないっとベルンハルトが、いつの日か言っていた。という事はランシーヌは……


『貴女達が早く体を渡さないからでしょう?』


 貴女達とは、私の他に歴代の器達の事だろう。そう易々と渡してなるものか


「魔女よ。黄昏の魔女よ。問おう。この場でコレを殺して体を手にし、どうするか?」

『ウフフ。聞くまでもないでしょう? あの方と、もう一度やり直すの』


 魔女は私に手を向け、魔法を放って来た。それを、ベルンハルトが前に出て防ぐ。


『へぇ……』

「その体の割に、随分な威力がでるな」

『舐めないでちょうだい。確かにこの体では魔力量も少なくて使いにくいけど、扉が開いて居るの。扉の向こうに有る本体から魔力を引っ張ってこれるわ』

「なるほどな……」


 どうやら魔女は、ランシーヌの魔力だけでは足りないと思い、扉を通じて本体から魔力を持って来て居るらしい


「やはり、扉をどうにかするしかないか……テンキ、お前は俺と魔女の相手だ。他は、皇帝の相手をしてやれ」


 ベルンハルトは奥に居る、皇帝を見据えて言う。奥の皇帝は今、家臣と思われる人と、アントニエッタ、ノエリアが戦っている


「分かった。2人共、気を付けて」

「テンキちゃん……皇帝陛下は任せて!」

「ありがとう」


 アルレーヌは、そのままで、他の兄弟は皇帝の所に走って行った


 そして、私はベルンハルトと共に魔女に向き会う……







 月と太陽が逆を向く


 空は血の様に赤く、三日月の形をした黒い月が出ている


 その三日月が、私達を嘲笑っているようで……




 ーー目の前の女が笑うーー


 知っている筈(ランシーヌ)の顔なのに、知ってる笑顔ではなくて……



 ーー目の前の女が笑うーー


 足元に転がる()を踏み付けて……



 ーー目の前の女が歌うー


 ……知っている声のはずなのに、知らない声で




 私の知る者はもう、そこには居ないのだ。






 赤く染まった空の向こうから、奴らはやってくる


 自らの無くしたモノ()を喰らう為


 奴らはやってくる



 ーーそれらは、世界の終わりへ向けて進んで行くーー

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