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冥福を

※死ネタ注意

 

 敵の攻撃の緩んだ隙に、王子を確認すると……胸の辺りが真っ赤に染まった王子は、動いていなかった。

 ただ、ただ、グッタリと横たわるだけ。目は瞑り、口の端からは血が流れている


「あ……あに……うえ? ……兄上!!」


 凄い声で兄を呼び、駆け寄る弟。それを眺めるサルヴァトーレ。いつしか、私を攻撃していたヌメヌメ感抜群の生き物の攻撃は止んでいた。他の人達には続いていたが


「サルヴァトーレ……嘘」

「嘘じゃないよ。死んだんだよ。彼は死んだ」

「……なんて事を!」


 切れた私は、力の限り魔法を放とうとしたが、サルヴァトーレの足元にエスペランサ王子を抱えるフセフォーロド王子が居り、巻き添えを避けると手加減して撃つしかない。しかし、手加減して勝てる相手ではなく、難なく避けられ接近を許した


「じゃあ、名残惜しいけど君もだ。テンキ。さよなら!」


 目を瞑り衝撃を待ったが、いつまで経っても痛みは襲って来なかった。目を開けて確認すると


「ヴィヴィちゃん?」

「お待たせ」


 私の前に立ち、サルヴァトーレの剣を受け止める、ヴィヴィちゃんの姿が確認出来た。随分、カッコいい登場の仕方である


「あぁ。ヴィヴィ……僕を殺しに来たの?」

「そうよ! 弟と妹の仇!」


 2人の剣は何度も交わる。しかし、流石サルヴァトーレだ。ヴィヴィちゃんが、だんだんと押されて来た


「そこまでだ2人共」


 辺りに声が響いたと同時に、辺りに居た敵が一瞬で倒れた。その声の主はベルンハルトの様だ


「早い到着だね。もう少しモツと思ったけど」

「あのデカブツの事か? あれで俺を足止めした気になるな」


 ベルンハルトは到着前に例のデッカい怪獣と戦って来たそうだ。流石ベルンハルト。軍が束になっても仕留め損ねたのに、キチンとトドメを刺して来たらしい


「やっぱり、君には無理か……」

「ねぇ、サルヴァトーレ。もしかして、モンスターを操ってる?」

「操っていると言うより、手を貸して貰ってるって言った方が良いかな?」


 辺りの敵も一掃し、いつの間にか他の兄弟も集合していた。


「これじゃ、部が悪いね。またね、テンキ。あ、ベル帝国で待ってるね」


 それだけ、言うとサルヴァトーレは煙の様に消えて行った。


「何あの魔法! 見た事無い!」

「それより、エスペランサだ」


 皆んなはエスペランサ王子の周りに集まり、様子を見た。ニキートビィチが屈み、エスペランサ王子を確認する


「残念だけど……」

「分かっている。いつまでも縋り付いたりしない」


 泣きそうなフセフォーロド王子を見ている事しか出来ない私は、何て無力なのだろうか


「エスペランサ王子に御冥福をお祈りします」


 ヴィヴィちゃんの言葉を合図に私は黙祷をエスペランサ王子に捧げた。目を閉じている間、フセフォーロド王子の啜り泣く声が聞こえて来たが、聞こえないフリをした




 その後、ベルンハルトに連れられ、私はシルヴォック邸にお邪魔する。私の他には、あの場に居たフセフォーロド王子以外がお邪魔してしており、私はベルンハルトの部屋に、他はリビングに居る。私はベルンハルトの部屋で休みながら、話を聞く


「だいたいの事は奴らに話した。大事な事は言ってないがな……それと、お前の事も言って有る」

「言っても良かったの?」

「良くは無いが、こうなってしまえば、どうしようも無い」


 目を伏せて言うベルンハルト。


「王様は?」

「父は死んだ。叔父の手によってな。本来、叔父は父より弱かった筈だが、奴も魔女から力を貰い強くなっていた様だ。後は、弟が1人と妹が1人、妃2人が殺されて、扉も開けられた」

「扉……」

「だが、閉じた。しかし、溢れ出てきたディムオブヂィクトゥで、かなりの被害が出た。立て直そうとしたが……それより、先にサルヴァトーレを、どうにかしなければならない。国は優秀な家臣と叔母に任せて、こちらに来た」


 サルヴァトーレに、ヴィヴィちゃんの同腹の弟と妹、その母親と、ニキートビィチの母親が殺されたそうだ。そして、シルヴォックに有る扉を開けられ、そこから 【ディムオブヂィクトゥ】が溢れ出し、国中がパニックになったらしかった


「ディムオブヂィクトゥは、母体となる生き物と、その母体が生み出した生き物に分かれる。今回、外に居た巨大な生き物が母体だった」


【ディムオブヂィクトゥ】は、人間から変わったモノが母体と化し、手駒を増やす為、子供の様な兵士の様な生き物を作り出すという。

 今回、襲って来た人並みの大きさの生き物は、外に居た母体が生み出した兵士だそうだ。だから、主と言って居たのだろう


「元が人だっただけに、知能も有り、言葉も理解する厄介な相手だ」


 そんな面倒な生き物を相手にしないといけないのか……


「サルヴァトーレが帝国に向かったのなら、早めに動いた方が良い。あそこの国にも扉が有り、開けられると厄介だ」

「……アントニエッタは?」

「知らん。奴の事は奴に聞け。まぁ、帝国の扉が開けば、無事では済まされないだろうがな」


 ソファで横になりながら聞いていると、だんだんと眠たくなって来たので、目を閉じる。








 なんだか、とっても恐ろしい夢を見た。

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