トラウマ
目を開けると見た事のある景色が広がっていた
それは、青い空に水だけの世界
「これ夢? それとも、殺された?」
眠る前にベルンハルトに首をグキっとやられた気がするが痛みは無いので、夢か死後かだろう。そういえば、前回もベルンハルトに殺られたな……
「夢だ。物騒な事を言うでないわ」
突如、女の人の声が辺りに響いた。慌てて起き上がり、辺りを見回すと、光の反射で色々な色に見える長い髪にヴェールを被り、髪と同じ色の目をした、とても神秘的な女性が立っていた
「妾は【エリク】。またの名を 【創造の魔女】。オリジナルの魔女にして、【魔女】の魔族、最後の魔女だ」
「創造……」
また、夢の中で魔女に出会ってしまった。というか、魔女は皆んなヴェールを被っているのだろうか?
「最後……」
「そう、最後だ。妾の妹、【黄昏】は死して向こうに渡った。だから、妾が最後。魔族と言う名の魔女はな」
いつの日か、ニキートビィチが魔女は魔族だと言っていた気がする
「【魔女】は、彼方側の生き物に狩られ、妾を残して全滅した。妹の 【黄昏】も策略に嵌り、死して向こうに行った。残ったのは妾だけ」
黄昏の魔女は死んでいたのか。だから、私の体を欲しがった?
「お前は、これまでの【魔女の複製】が辿って来た道と少し違う。だから、コレを渡しておこうと思ってな」
そう言って、創造の魔女は何も無い所から、髪と同じ色の剣を出して来た
「綺麗……」
「この剣は、いずれ役に立つ。妾は手を貸せない。死にたくないのであれば、あの男をこの剣で殺せ」
そう言うと魔女は溶けて消えてしまった。
「ちょっ⁉︎ まだ聴きたい事が!」
私の声は、この夢の中に虚しく響いた
「……ろ……起き……きろ……起きろテンキ!」
ゴスっと言う音と共に脳天に痛みが走った
「痛……あ、王子、おはよう」
「おはよう、じゃない。一体いつまで寝てる気だ! とっとと起きろ! 兄上がお待ちだ」
痛みに声を上げて起きると、ベットの横にフセフォーロド王子が仁王立ちで立っていた。右手を上げているので、多分シバかれたらしい。ここ数回、良い目覚め方をした覚えがないし、良い寝方をした覚えもない
「うわぁ……ベット……この部屋、凄い……」
フセフォーロド王子を見て、辺りを見渡して見ると、お洒落で豪華な部屋の天蓋付きのベッドに寝かされていた
「此処は私と兄上が住んでいる屋敷だ」
「マジか……ユエソンヌ邸」
とうとうユエソンヌ邸にまで、お邪魔してしまった。コレで知り合いの王族のお家コンプリートだ。
「あら、起きましたのね」
「アントニー⁉︎」
部屋をキョロキョロ見渡して居ると、何故かアントニエッタが扉から入ってきた。何故、ユエソンヌ邸にアントニエッタが居るのだろうか? そしてノエリアは居ない様だ
「心配したんですわよ? 途中で居なくてなって、迷子だろうと思い探し回って、でも見つからなくて……誘拐かもしれないと思い、色々な方々に連絡して探してもらっても見つからない」
「アントニー……」
申し訳ない事をしたと思うが、コレは私が悪いのだろうか?
「エスペランサ様が軍を動かすと言っていらしゃいましたが、ベルンハルト様が必要無いと……そして今日、学校の試合の観戦に行くと両者共に現れず」
「それどころか、シルヴォック全員、会場に現れなかった……それに兄上も。可笑しいと思い、兄上に詰め寄り、事情を聞いた」
「他の者達は、この事を存じてませんわ」
随分、大きな話になって居たらしい
「ゴメン……」
「別に貴女が悪い訳ではないでしょう?」
「それより、首元が大変な事になってるぞ? 貸してみろ」
フセフォーロド王子が私の首に手をやると、私は反射的に驚いて逃げてしまった。それを見た2人は痛ましそうに私を見る。
「すまない……辛かったな……そうだ、兄上が起きたら言ってくれと言っていた。話してくる」
「そうですわね! よろしくお願いしますわ!」
多分、この2人は勘違いをしていると思う。2人はサルヴァトーレに首を絞められたのを、トラウマに感じて手を避けたと思っていると思うが、別に首を絞められる事をトラウマに感じている訳ではない。
トラウマなのは、ベルンハルトに首をグキっとされた方だ。あのグキっはかなりの痛みだったので、出来れば二度と体験したくはない。
原因はサルヴァトーレではなく、ベルンハルトだが、やはり2人は勘違いしているようで、かなり、気を遣った様に話す2人。そうじゃないんだよ……
しかし、王子は何処かに行ってしまったので、誤解を解く事は出来ない。それより、首はどうなっているのだろうか?
「アントニー、そんなに首がエライ事になってるの?」
「なってますわよ。はい、これで見てごらんなさい」
アントニエッタは懐から手鏡を取り出して、私に渡した。鏡を持ち歩くなんて流石の女子力だ。私なんて、鏡どころか、ハンカチすら持ち歩いていないと言うのに……
借りた鏡で自分の首辺りを見てみると
「うわぁ……ホラー」
首は、紫色になっており、痛々しい感じになっていた。コレは残すのはマズイと思い、 回復魔法の【クーラー】を掛けようと思ったが、口からしか出せない私は首に魔法が届かない。詰んだ……
「私が治して差し上げたいのですが、なにぶん回復系は苦手なもので……」
「気にしないで、そのうち治るよ」
話していると、扉がノックされエスペランサ王子とフセフォーロド王子が入って来た




