偽自動販売機
ドンドンっと大きな音がなっている。
全学年の実施訓練が終了し、制服が夏服に変わり、季節も夏に変わる前頃に行われる行事
そう、【鬼ごっこ】だ
鬼ごっこは全校生徒でやる競技で、赤組、青組、緑組、黄組に別れており、クジでどの組に入るか決め、その色のハチマキをつける。ハチマキを取られたら捕まった事になるのだ
逃げても良い場所は、建物内に入らなければ学校内、何処に逃げてもいい。魔法は無しで武器も無しだが、小道具は有り
始めは時間まで、組ごとに決められた敷地を出ては行けないが、時間を過ぎれば追いかけるし、追われる。
赤→青→緑→黄→赤 が追う順番で、例えば黄色は赤を追えるが、緑からは逃げないといけない。青は緑を追えるが、赤から逃げないといけない。仮に青が全滅したら、赤は緑を追いかける事ができる様になる
以上が鬼ごっこのルールだ。追って、逃げてをしないといけないのでかなり大変だと思っている。
しかし、私には秘策があり、追いかける事は出来ないが逃げるのには自信がある。私は今回、赤組だ
「テンキちゃん、赤なんだね。私、青だよ」
ヴィヴィちゃんは青らしく青色のハチマキを着けている。とっても可愛い。私はハチマキがズレてきたら嫌なので、髪を前の部分は残して後ろを編み込みのアップにして、それをハチマキで結った。ちゃんと引っ張ったら取れる様にはしているので、ズルではない
「器用だね。私は、そんな事出来ないよ」
「三つ編みで一緒に編み込んで後ろで束ねてみたら? 可愛いと思うよ? これなら長さが無くてもアレンジできるし」
「私、不器用だから……」
らしいので、私がヴィヴィちゃんの髪を弄ってみた。上手く出来た気がする
「ありがとう! 取られない様にするね!」
ヴィヴィちゃんが、とっても嬉しそうなので私も嬉しい
「やぁ、テンキ、ヴィヴィ。あれ、ヴィヴィ? それどうしたの?」
「テンキちゃんに結ってもらったの」
サルヴァトーレの登場だ。流石、彼氏。彼女の変化に1番に気がついた。嬉しくなりドヤ顔でサルヴァトーレを見ると……
「え、黄色……」
「うん。あ、テンキは赤だね。頑張って逃げてね」
まさかの展開だ。サルヴァトーレが鬼とか……逃げられる気がしないな
「その髪型似合ってるよ? 解いちゃうのが勿体ないくらい」
サルヴァトーレが私にトキメキそうな事を言うが、良く考えると「お前を捕まえてやるぜ!」って意味なのが分かって怯えた。捕まってたまるか!
「ヴィヴィ⁉︎ どうしたんだ、その髪は!」
突然フセフォーロド王子が乱入して来たが、視線は全てヴィヴィちゃんで私は彼の視界の隅にすら入らないらしく、蚊帳の外だ。別に良いけど。そんな、フセフォーロド王子はヴィヴィちゃんと同じで青。羨ましい
「ヴィヴィ……もし、私が緑を全滅させて、そして……サルヴァトーレを捕まえる事が出来たら、僕とデートしてほしい」
「いいよ」
「えぇー⁉︎ 彼氏がいる前で、とんでもない事言った!」
それに対してヴィヴィちゃんは悩む事なく了承したが、横にいたサルヴァトーレは気にする素振りを見せず微笑んでいる。余裕か!
「これは、良くある事なんだ。他の人達もしてるよ? もし、誰かを捕まえる事が出来たらとか、逃げ切れたらとかって賭け事みたいな事をするんだ」
サルヴァトーレが教えてくれた。そうこうしている内にヴィヴィちゃんは他の人からも告白の様な、賭け事の様な事を受けていた。流石ヴィヴィちゃん
「流石、ヴィヴィ。囲まれてるな」
「ロドが居るから大丈夫でしょ」
「……」
「ふふ」
上から、トシュテンヴェリン (青)、ヴィアンリ (青)、ベルンハルト (黄色)、ニキートビィチ (黄)だ。
ごめん、アントニエッタ。君の事を運が悪いって言っていたけど撤回するよ。悪かったのは私だった。だって、ニキートビィチとベルンハルト、サルヴァトーレが同じチームだもの……私の敵だもの……私は物凄く絶望した顔をしていたと思う。だってヴィアンリが笑っていたもの
「そろそろ、行こうか。僕たちも囲まれそうだし」
「あ、待って」
私は、周りの人達に便乗してみようと思ったので、ベルンハルトとサルヴァトーレを止めた
「もし私が逃げ切れたら、この前の事、全部話して。隠す事なく」
「……」
「それは……」
これは賭けだ。私は本当の事が知りたいと思っているので賭けに便乗した。すると、ベルンハルトが
「いいだろう……」
「ベル!」
「その代わり、お前が捕まれば、この事は一切聞くな」
「……分かったよ」
賭け事が決まった。正直、逃げ切れる気がしないが頑張ろうと思った。私は赤の集合場所まで行く為、その場を離れると王族達は女の子に囲まれていた。大変だな……
集合場所まで着き、私は準備する。この鬼ごっこで小道具は使ってもいいそうなので、今まで準備していた秘策がある。召喚魔法でそれを取り出して組み立てていく。すると
「何作ってるんだ……」
ヘタレがいた。しかも、同じ赤組である。ここまできたら、もはや運命ではないだろうか?
「隠れ家を作ってるの」
「追う気なしか」
「あたぼうよ!」
そんな、会話を続けていると、後ろから
「君が弟の言っていた、テンキかな?」
声を掛けられて振り向くと、白銀の長髪で、とっても美形なお兄様が……どちら様だろうか?
「ああ、申し遅れてしまった。私は【エスペランサ=ブーゲンビリア=ユエソンヌ】 フセフォーロドの兄に当たるよ」
え、第1王子が登場してしまったのだが……しかも、同じ組だ。どうすれば良い?
「あ、私は烏兎 テンキです。こちらこそ、よろしくお願いします」
「弟から話は聞いているよ。弟と同様、仲良くしてほしい」
「はい、是非」
弟のフセフォーロド王子と仲良くした試しは無いが、余計な事は言わないでおく。そう言うと王子は微笑んで去っていった
「うひゃー……第1王子に会ってしまった」
「あの王子は4年で先輩に当たる。因みに、ヴィヴィアンヌ王女に惚れているらしくて、今回も王女に何か賭け事を持ちかけたみたいだぞ?」
「マジで⁉︎ ヴィヴィちゃんモテモテだな!」
横でヘタレが苦い顔をしているがスルーしておく。もう、輝きで勝ててないもんなヘタレ。
私は作業再開。組み立てた骨組みを自販機の横に置く。その上から、自販機のプリントが入った布を被せてテントの様にする。あっという間に偽自動販売機の完成だ。因みに、お金は入らないし、ジュースも出て来ない、完全な偽物だ。ここの自販機は全部で5つある為、今更1つ増えていても誰も気づかないだろう。
「え……無駄に凄いんだが……クオリティ高っ!」
「エッヘン! 手作りだよ」
私はドヤ顔をする。近くにいた人達が写メり出した
「どっかの画像に上がってたのを参考にしてみたんだ」
この中に椅子を置き、時間まで隠れておくって戦法だ。
セコイとは言わないで!




