リリアーナ・アインスロット
リリアーナ・アインスロットは、子爵家の末子だった。リリアーナは幼い頃から聡明で、家族からは男性でなかったことを残念がれていたが、本人は全く気にしていなかった。
貧乏ではあったが、長兄をはじめ、多くの兄弟の支えもあり、16歳で貴族が標準で卒業する高校をトップの成績で卒業。その後、学長の推薦で王宮の文官に採用された。
さらに文官の中で、成績の良い人が官僚候補として、政治・経済大学へ進学する。ここでも2年間勉強に励み、大学をトップの成績で卒業。
この国は、女性でも王宮の文官は仕事をすることができた。リリアーナは男に混じり、遺憾なくその才能を発揮した。そして、数々の伝説的な偉業を成し遂げ、同期の男子を抜き去り、あっと言う間に昇進した。
また、その美貌から多くの男性からの求婚を受けるも、彼女はそれらを無視し仕事に打ち込んでいた。
美人で頭脳明晰さらに巨乳と、彼女の周りには沢山の男が押しかけてくる。しかし、リリアーナは、都合の良いように情報だけをかき集め、仕事をこなす。まさに鉄壁の女であった。
しかし、いつまでも結婚から遠ざかっているわけにもいかず、リリアーナが25歳の時に、リリアーナを見かけて気にいったという伯爵家の長男と見合いをすることになった。
相手は年下の20歳。容姿は長身でかっこよいらしい。軍隊に所属する小隊長だ。
20歳で小隊長は早いほうらしい。周りの子達からはうらやましいと言われたが、リリアーナは年下に興味が無かったので乗り気ではなかった。
ところが、お見合いの当日、一目ぼれで恋に落ちた。
残念ながら見合いの相手アナベル・クロスロード(20)ではない。
その父親のカイン・クロスロード。右眼が金の優種な血筋の人だ。
カインは、30歳までは軍隊に所属していた。隊長として参加した魔物の討伐中にS級指定の魔物が2体襲ってきて、隊のメンバーで倒したものの、重傷者多数。カインもその時に左足の先と左手のひじから先を失い、除隊した。ミルワルド侯爵家の次男であったカインは、S級2体を討伐した功績を評価されクロスロード伯爵家を受け継ぎ領主となった。
この世代は、たまたま金眼を持つ者が多く金眼であっても侯爵家以上になれる訳では無かった。
そのときに同じ隊で怪我で除隊したメンバーを引き連れ、現在のクロスロード領土の発展に貢献した。
話を戻すと、リリアーナは、アナベルでは無く残念ながら父親に一目ぼれしてしまった。
もちろんこの縁談は実らないだろうと思ったが、母親つまりカインの妻と話をするうちに可能性が見えてきた。
実は、母親は、アナベルが髪も目の色も自分に似たことを恥じているようだった。
母親のレイルーラは、元はハブスブロン侯爵家の娘で父親は左目が金眼であった。なので二人の子どもには、100年ぶりとなる両眼が金。悪くても片眼のどちらかが金であることが期待されていた。
ところが息子のアナベルは金眼どころか、父親から目も髪も受けつがなった。アナベルが子供の頃は、親戚中から不貞でもしたのではないかとひどくいじめられたようだ。
さすがにアナベルが大きくなると、長身に、剣の才能など、父親の血を受け継いでいることが解ってきているが、昔のしこりはなかなか解消されないようだ。
この話を聞いて、私は母親に交渉を持ちかけた。いわく、息子であるアナベルとは結婚するが、最初の3年はアナベルとはこっそり避妊をし父親であるカインと結ばれたいと。
うまくいって、私から金眼の子が生まれれば世間は、アナベルに父親の血が流れていたことの証明となり、昔、不貞とののしった人たちを見返せるのではないかと。
この世界では、血の濃いほうの子を生むのは良くあること。なので、父親と行為を持つことは特別なことではない。こういう父親が金眼で子がノーマルなケースでは、相手側から交渉があってもおかしくない状況であった。
母親は、裏に父を呼び出し今の話をしている。不機嫌そうな顔をしたものの、私がにっこりと微笑むと、照れた顔をしたあと難しい顔で息子を見ていた。
結局、この交渉は息子には内緒で合意された。
息子のアナベルが、私を気に入っており、交渉が成立しなければ息子の望みも叶わない。
断る選択肢は無かった。
それから、計画通りに実行されたが、残念ながら私には子どもできなかった。
ただ、私の文官としての能力は遺憾なく発揮でき、クロスロード家の財務状態は一気に改善された。
私の領地での活躍を聞き、王都では私を慕う女性文官の希望者が増えたらしい。王都では、女性の地位向上への貢献度が高いと、当時の王妃から表彰を受けたぐらいだ。
子はなかなか生まれぬが、充実した日々を過ごしていた。
補足追加 2017/01/03
領主経営は、役場に行って仕事をします。
領主館ではあまり仕事をしません。
クロスロード家の管理する役場も50名以上の文官が働いています。
文官とは別に警護部隊も30名ほど勤めています。
領主は、イメージ的に伯爵が市長、侯爵が県長、複数の県をとその中央の県をまとめるが公爵と思ってください。
王都の東側がハイルデン公爵領
王都の西側がアレクサンドロ公爵領
メルミーナ公爵は全体を見ているので自分の直轄地だけです。
メルミーナは宰相です。
その下に財務省、建築省などの省長は、領地無しの侯爵、伯爵が行います。
彼らと、領主が貴族院の構成メンバーになり、大きな物事を決めるときに貴族院で判断します。
ただし遠方の領主は王都での貴族院の会議に参加できないので、変わりに代理を送り込んでいます。
代理は、誰でも良いわけではなく、国の文官試験に受かった人でなければなれません。
子爵で領地を持つ人は少なく、子爵、男爵は基本的に文官や騎士、魔道士です。
長男以外の貴族、主に男性は文官や、騎士、魔道士になり、政府、軍に入ります。
役職、功績によって、子爵、男爵をもらえます。
リリアーナの話に戻ると
リリアーナは、結婚してすぐに領主代理として役所で働いてます。
父親のカインが亡くなる前に、領地管理権限をリリアーナに引継ぐ証明書を記載し、彼女だけで領地の管理が出来るようにしていました。
それは、カインが亡くなった後も有効で、引き続き役所に通い勤務を継続しています。
領地の剥奪がない限り、前伯爵の決めたことは有効です。
彼女が領地管理を行いようになってから、領地の経営状態はさらに良くなり、領民の生活も向上しています。
リリアーナが結婚して国の文官を辞めた後、彼女をしたって数名の文官、男女含むが移動してきています。
領地の経営状況が良くなると人口が増え、それにあわせて文官が不足してきます。
結局、リリアーナは不足している文官をメルミーナに頼み管理能力の高い文官を数名貸して貰っていました。
このように、メルミーナは、ほぼ全ての領地に自分の配下を置き、領地が正しく運営されているか確認していました。