3.8 竜撃退後
次の朝になっても倒れた女性は起きていないそうです。
おかあさまから、無茶をした行動をひととおり叱られた後、
とりあえず昨日の黒狼のところに行き、復活した魔力を使って傷を回復させ、食べ物を与えました。
食べ終わると、お礼を言いたいのか、すりよってきたので、なでておきました。
もう一眠りするようだったので、その場を離れます。
再び女性の下へ、レイさん、エイミーさん、クインさんが見守る中、女性へ回復魔法を使います。
すると、ゆっくりと目を覚ます女性。
起き上がったので、水を渡すと飲み干します。
銀髪に、両目が銀眼。
この人、透き通る様な綺麗な目をしためちゃくちゃ美人です。
そしてベッドから起き上がろうとするが、クインさんがそれを押しとどめた。
ベッドに入った状態で、少し起こし、そのまま女性がしゃべった。
「あのような状態の後にも関わらず、助けていただきありがとうございます。
私は竜王バハムートの娘、ティアムトです」
と綺麗な礼をした。
お、やはりちゃんと人の言葉をしゃべれると安心。
「私を倒した貴方様のお名前を教えていただけないでしょうか?」と私を見つめるティアムト。
ちょっと緊張。
「私はジルベール・クロスロードです」
と、頭を下げて挨拶をする。
「すいませんが、状況を教えていただけないでしょうか?
一つは、なぜホワイトドラゴンがあそこにいたのか、
そして、なぜ倒したホワイトドラゴンがあなた、つまり人間の女性になったのか?」
その他にも訊きたいことは沢山ありますが、まずはこの二つでしょう。
「はい、私たちの竜族は、100歳になると、成人の儀として10年間、
世界を回る旅をする事になっています。旅の途中で強き魔物を倒し、さらなる強さを身につけるためです。
私が、この地にいたのは、単に旅の途中の道中であっただけです。
たまたま強き黒狼の生体を見つけたので、戦っていたところ、あなた方と遭遇し、そのまま戦いになりました。普段は人間と争うことはありません」
「そう、それでなんで貴方は人間の女性に?」
一つ目の質問に答えただけだったので、もう一度質問をしなおす。
「我が種族は、皆、人間に変身できます。
私の母は、人間であったようです。
なので、私だけは、平常が人間で、戦う時だけホワイトドラゴンになると言ったほうが良いかも知れません」
話を続ける。
「私は、始祖バハムートの娘。私は、少し小型ではありますが、
他の竜達より、はるかに強いのです。
我が一族で私に勝てるのは、父バハムート様ぐらいです。
まさか人間のしかも子供に負けるとは思ってもいませんでした。
しかし、戦いの最中、貴方の目は金色でした。
今はなぜ色が茶色になっているのですか?」
「あー、普段は魔度具で色を変えてます。見たのならもう良いか」
とイヤリングをはずしました。
すると「貴方様も、父と同じですね」
「竜王バハムート様と一緒とは?」
「父も、両金眼です」 しばし沈黙。
両目が金眼が、他にいた。しかも 人間ではなく、竜王。
もしかして竜王バハムートも転生者なのか? 疑問はあるが、ティアムトに訊ねても解らないだろう。
機会があれば、会ってみたい。
が、会いに行けば死にそうで怖い。
止めたほうが良いだろな。と勝手に納得。
「ところで貴方の旅は後何年残っているのですか?」
「はい、あと5年残っています」
「そうですか、では体調が戻るまでは、ゆっくりと休憩し、回復してから移動してください。
それと、貴方が倒した黒狼の子供もここにいます。
あなたを見かけて、敵と判断するかもしれないので、気をつけてください」
「解りました。子供については、申し訳ないことをしましたと思っています。
そもそも戦いになってしまった理由が、子供を守る黒狼の領域に入り込んでしまったためだったのですが、最初はそれに気が付かず、気が付いた時には混戦になってしまい。
こちらも退けば一瞬のミスで致命傷を負いかねない状況でした」
「そういことですか。
まあ、黒狼はまだ小さいですから、どう行動するか解りません。
あなたに戦いを挑むとは思えませんが、襲っても手助けはしません。
それについては、ご自分で対処下さい」
そして、侍女が、おかゆやスープ、果物などの軽食を持ってきました。
「まずは、おなかに優しいものを胃に入れてください。
後でもう少し力の付くものを持ってきます」
ティアムトが食事をを始めたので、侍女を残し、我々は席をはずしました。