後見人決まる
その年の年末に、王の前に3公爵全員が揃う場でメルミーナはジルベールの件を話した。なんと言っても100年ぶりの両金眼。上手く育てば建国以来の両金眼の成人だ。
今、ジルベールが両金眼とはっきりと知られると王位継承権が1位にまで上がる可能性がある。ジルベールを王家の継承者の中に組み込まれては困るのだ。両金眼の男児は過去の歴史どおりきっと成人するまでに毒殺されるだろう。少なくとも7歳までは隠す。できれば10歳。望みは薄いが成人まで隠せば生存率はかなり高い。
だからと、嘘をつけば、将来ばれた時に王に対する不敬罪となってしまう。それはまずい。
嘘はつかないが、余計なことを話してはいけない。
メルミーナは慎重に話を進めなければならなかった。
上手く真実を隠し、その上で自分に反逆の意図が無いことを示しておく必要がある。そして両公爵に余計な事をしゃべらせてはいけない。なんといっても片方づつ金眼を確認しているのだから。
メルミーナは、王にゆっくりと説明を始めた。生まれた子の父が死亡し、生きている母親が自分の元部下で、家系的にもメルミーナの系統であることから、自分を後見人としたい名乗り出た。
そして、続けて、現在探している自分の後継者候補の筆頭とする。つまり成人したら公爵を継がせる意思があると宣言した。
対して、他の2家は、侯爵として迎える予定だった。そこに、公爵を継がせると宣言されては、いかに自分の系統の金眼といえど、口を挟む余地は無い。
王は、それを聞き、そこまでほれ込む才能があるのかとたずねれば、15年ほど前に女性でありながらあっという間に役職を上げて伝説となった文官リリアーナの子です。
前王妃から女性文官で初の表彰された経験があります。私も注目していた子です。
必ず宰相の器があると確信している。
そう自信を持って答えられると、皆は黙るしかなかった。どのみち成人するまでは解らないのだし。それまでの後見人である。特に目くじらをたててまで主張することではない。
文官の才能があればメルミーナ、そうでなければ自分が取れる。2家は黙ってメルミーナに後見人を譲ることにした。
とはいえ、現在の領地的はハイルデン領である。ちょうど隣の領地が王家直轄であるので、ハイルデン公の協力分を隣の直轄地から支援をする事で合意した。
アレクサンドロ公爵が派遣した医者は、そのまま残ってもらい給金はメルミーナが支払うことで合意。
その他のことも、あっというまに提案を行い無事全員が合意してこの問題は終わった。
メルミーナの思惑通りことは進んだ。
その日、ルカ王子が5歳となり、婚約者候補や将来の部下を選定するための王子の友の会を作る事になり、総勢30名ほどのルカ王子のお友達会のメンバー人選でもめた。
実は、既に21名の募集で第1回の会議を行ったがとてもまとめる気配が無かった。そして今回人数を増やしての第2回人選会だ。今日決めなければならなかったので、皆も必死だった。この話し合いが始まるや、ジルベールことはすぐに頭から抜けていた。
メンバー表は、各公爵家の妻が作ったものだ。ルカ王子を将来支えるであろう自分の人選でもある。自分の系統のメンバーが減ればそのまま将来の関係を示す可能性がある。
この国では、王都に住む下位貴族、平民でも商人の子供は、5歳から6歳になると国立の小学校に通う。これは、人口の密集している王都と、その近隣の3都市でしか行われていない。
高位の貴族は、これとは別に家庭教師を雇い、自宅にて教育を行う。王家でも、一般教育は全て家庭教師が行うが、これと別に週3日で高位の貴族の子供を集めて、国のエリートを育てるための教育を実施する事になった。
集められるのは、ルカ王子の前後2歳まで。それ以下になると、第2王子、第1王女の世代になるので、その時にまた集めることになった。
3公爵による会議は、夜までつづき、案の定ジルベールの話を思い出すことは無かった。
メンバーの割合は、各公爵10名だが、きっちり10人にならないから、どうしても揉める。最後は、結局メンバーが36人に増えて話し合いが終わった。