戸籍の登録
メルミーナは、アメリを見て、驚いていた。
「いやはや、リリアーナ、あなたが私の元に入ってきた時を思い出すよ。なぜここまで似ているのかね? あなたの養子にすると書いてあったが、そのままあなたの子供と言われて違和感がない」
「アメリは、私の長兄の子です。侍女との間にできたのですが、母親はアメリを生んで2年後には亡くなったようです。家の中で彼女を守ってくれる人がおらず、虐待を受けていたので、5歳の時に強引に引き取り、以来我が家で育ててきた秘蔵っ子です。もちろん私が直接勉学を教えました」
話を聞いて納得したのか、その後アメリと別室に行き、少しやり取りをした。
そして、部屋から戻ってきて、メルミーナは満足げに答えた。
「アメリは賢い。ジルベールも将来が期待できる。安心しなさい、両目が金眼であることは、私が上手く隠します。任せなさい。
そしてこれからは私が後見人となる。教育についても、私が用意しよう。
あと、子育てもあるだろう、領地経営は人手が足りないのではないかね?」とたずねてきた。
私がうなずくと。
「解った。まずはすぐに1人送ろう。給金は心配しなくても良い。
10年たったら返して戻してもらうので、それまでの実践教育費として私が出すことにする」言った。
リリアーナは、「この子が大きくなるまで、よろしくお願いします」と礼を言った。
メルミーナは帰ってから、提出された順に用紙を並べ、一番下に両目が金と記載した正しい届けを挟んだ。そして、ライラに、両目金眼を秘密にする事と、さらに夫婦で10年間の移動を命じた。
ライラは、厄介な事件に巻き込まれたことを面倒には思ったが、10年後の昇進と、移動中の給金アップに気を良くし、喜んで自宅に帰った。
そして家に帰ると、妻に、田舎に転勤になった事を伝える。
妻のウルラーレから
「あなたの性格だといつかは失敗してそうなるだろうと予想していましたが、思ったよりも早い降格でしたね。でも、私は覚悟はできていましたが、何処までもお付き合いしますよ。
ちょうど子供も田舎でのびのびと育てられますし、すぐに出立ですか?」
「いや、失敗してないし、降格じゃないから、給金もアップ、10年後は昇進だぞ」
「うそ。ほんとに?」
「いや、厄介ごとに巻き込まれたとは思ったけど、運が向いてきたぞ」
「給料アップ。あなた、なんの不正をしたんですか!
昇進しなくても良いから、悪い事だけはやめてください。私は、あなたが昇進しなくても、万年平役人と馬鹿にされても、生きていけますから」
「いや、悪いことしてないし、おまえ、このあたりでそんな事を言われていたのか?」
「あなたの同期の奥様会では、いつも。でも私は大丈夫ですよ。
あなたの馬鹿正直で融通の利かないところは、大好きですから」
「まあ、それは、いままですまなかった。とりあえず転勤はちょうど良かったかもな。
私は、明日から休みになるので、すぐに準備をして出立しよう。
ずっと馬車移動だから大変だが、移動費用は、メルミーナ様が支払っていただけるので、少し贅沢な旅館にも泊まれるし、2週間の移動だが、楽しんで行こう」
そして、ライラは、新たな地へと旅立った。