5.24 前世持ちがばれる
またまた、タイトルでネタバレです。
さて、王様は、どうやって聞き出すのでしょうか?
次の週に王城に来た時の事。
王城に泊まっている夜、王様から部屋に呼ばれた。
先日のルカ王子の救出、シドニアへの協力についての相談だと。
王の私室に入る。
王様から
「さてジルベール。ルカの救出にグランスラム帝国への戦勝、それに王女達への守護精霊といろいろあった礼をしたい。
まずは、言葉を先に伝える。
ありがとう。
これからもいろいろ頼むと思うが、よろしくな」
「お礼など、偶然の重なりですし、当たり前の事しかしていませんから」
「うむ、それで礼として何か欲しいものがあるか?
ああ、シュミットはやらんぞ。それ以外だ」
「王、ここで冗談を言うと締まりませんよ」
「うん、そうか? 半分は冗談ではないぞ」
「全く、まあ良いです。それは。
グランスラムでの復興は、順調に準備ができそうです。
そちらを除くと、今回も協力してくれる領地の民へなにかしてあげたいと思っています。
それには領地までの道路整備が一番良いと思うのですが」
「道路か、公共事業の割り振りか。今日の褒美はそなた個人にと思っていたのだが」
「領地までの道路整備についてですが、私も責任者にして欲しいのです。
将来にも備え、大規模な公共事業に携わりたいです。
私が領地で行っているのは工房の立ち上げが多く、公共事業は経験がありません。
それで私個人へのお礼となりませんか。
領地までの道路建設なら、一石二鳥。ぜひお願いします」
「うむ、道路となると実現性や予算など含めメルミーナと相談しなければならんが、おそらく問題ないだろ。
今年の道路計画の一部をそちらに優先させれば大丈夫であろう」
「ありがとうございます」
「まあそれとは別に自分の欲しいものは無いのか?」
「別に、私は子供ですからお酒など必要ありませんし、高級な剣も光の剣を出せば良いので。特に何も?」
「うむ、欲が無いの。受け答え方を聞く限りお主ほんとは幾つなのだ?」
「見た目も、心も、立派な子供そのものですよ」
「まあ良い、礼だが例えば建国王とその家族の肖像画を見るとかどうだ?」
「え、見れるのですか?」
「うむ、建国王の簡単な肖像画は紙幣にもなっておるから見ておろうが、正確ではないからな。
それに家族の肖像画となれば、出回ってはおらんからな」
「では、ぜひ見せてください」
「良かろう、すぐに見せてやるからこのまま私についてきてくれ」
と言って、王の私室の壁を押すと階段が出てきた。
王様と一緒に地下へと向かう。
最下層に降り、幾つかの部屋がある中で、赤い扉の前で止まった。
王から
「この部屋は、1人ずつしか入れないのだ。ジルベール、先に入ってくれ」
と言われ、扉に手をかける。
すると扉が少しひかり、そのまま押すと扉が開いた。
中が暗い。
扉を全て開けて、中に入ると明るくなった。
「扉を閉めなさい。その後でワシがはいる」
と言われたので、そっと扉を閉める。
王様が続いて入ってきた。
そして話し始める。
「ここは、代々の王家の肖像画が締まってある所で、300年前からの100年分が保存されている部屋だ。
一番奥に建国の王シンの肖像画があるので見に行こう」
「はい」
そして、一番奥に到着すると、王が2枚の肖像画を取り出した。
「これは、建国の王に嫁いだ2人の妻の肖像画だ。
結婚当初と言われている。誰に似ていると思う」
それは、夢で見たスーレリアとマキだった。
「お顔立ちは、2妃様、3妃様に似てますね。
目の色はスザンヌ様、マリア様に似ていると言えますが」
「そうじゃろ。私が王になってこの肖像画を見ておったから、レオニー、アナと結婚した時は自分が建国の王の再来ではないかと思ったこともあった。
しかし、マリアの聖女、ジルベールの金眼を見たときに、このための準備で会ったのかとやっと解った。
決定的だったのは、スザンヌの未来視じゃな。片眼とは言えワシの娘から建国の王の子が2人も生まれた。それで、一つの仮説を立てた」
「どんな仮説ですか?」
王は、次にもう一枚の絵を出した。
「これが建国の王の結婚当時の肖像画じゃ」
黒髪、金眼。
ああ、私なのだろう。
家で見たお父様の肖像画にも少し面影がある。
「決定的だったのは、今この部屋に入った時だ」
「入った時とは、どういうことですか?」
「この部屋は、王となったものとその王妃しか入れぬ魔法がかけれておる。
特にこの300年前の肖像画のある部屋は、建国王以降全て王が登録されておる。
つまりお主が今世で特別な儀式もせずに入れたと言うことは、過去この扉に認識された魂を持つということだ」
ガーン。
なにそれ。
あっさり決定的な証拠を見せてしまったか。
しかも、自分でもまだ信じ切れてはいなかったの。
「ジルベール。お前は、本当は何歳だ?」
「え、10歳ですよ。8月が誕生日でした」
「いや、前世を足してだ」
「前世ですか?」
「そうだ、前世だ。たまにそのような症例がある事は、書物の記載で解っておる。
扉を開けた事で確定しておる。
おぬしの前世は建国の王じゃ。間違いないじゃろ」
「解りました、正直に答えます。
ですが、それでも私の答えは、[否定も肯定もしません。]としか言えませんよ」
「どうしてじゃ」
「はい。実は、前世があるという事は覚えています。
しかし、はっきりと前世の事は覚えていません。
自分の親がどんな人だったのか、自分がどの様な暮らしをしてきたのか何も覚えていません。
しかし、なんとなく前世があった事そして前世で覚えた知識の大半が残っています。
ですが、残っている知識はこの世界のことではありません」
「この世界ではない?」
「はい、ラキシス様から、私はシン様の魂を持つと言われましたが、シンとして死んだ後、異界で別の人生を歩んでいます。
私に残されている知識は、その途中の知識です。
ですので、シン様の記憶はありません。
異界で死んだ後、メリーナ様がこちらに転生させてくれたのです」
「それは、スザンヌも、マリアもか?」
「2人の事を私が伝えるのはおかしいので、それは答えかねます。
しかし、ラキシス様からは、運命の2人であると聞いています」
「そこも女神か」
「はい、この世界に生きる人々の為とラキシス様がおっしゃっておりました。
私が何をなすのかは知りませんが伝えられているのは、前世で途中で死んだから今度は天寿をまっとうするまで生き抜いて。
といわれているだけです」
「解った。女神が関わるのならば、これ以上詮索はやめよう」
「理解して頂き助かります」
どうでしょうか、あっさりと王様の作戦勝ちです。