金眼の子
生まれた子は金眼だった。それも両目。
私と母レイルーラは狂喜した。しかし、喜ばしい反面、とても危険な状況であるといわざるを得ない。
王宮で働いていた時に見た資料で、過去生まれた両目が金眼の子は幼少期にことごとく殺されている。そして記録上は、この300年で7歳まで育った両目が金眼の子はいない。そしてこの100年は、生まれてすらいない。
この子の目が金眼であることは伝えなければならないが、両目が金眼は伝えるべきではない。
そこで、おじい様の実家には右目が金眼と。おばあさまの実家には、左目が金眼であった事を伝える手紙を書いた。反対の目も金と書く必要は無いのだ。
手紙が届いた後で、両侯爵家の派閥元になる公爵家から膨大なお祝い品が届いた。この近隣の領地の代表管理の侯爵家、おばあさまの実家である侯爵家を飛ばし、その上の公爵家から祝いが届いた。さすが金眼。雲の上の存在だった公爵家にまで届くとは。
金眼を祝し、暫く必要になるであろう子育てグッズがすべて揃った。それも一級品ばかりだ。とても伯爵家が使う物では無い。
両金眼のジルベール出生届けと同時に、アメリも自分の子どもとして養子に入れた。
頑張ってくれたアメリに報いるためだ。子どもを生んだときもそうであったが、アメリはこれで戸籍上も家族になれたことをとても喜んでいた。
家族になった事をつげると、おかあさまと呼んで良いのか、小さな声で尋ねてきたので、そうよ、呼んで頂戴と告げると、喜んで「おかあさまと」と呼んで抱きついてきた。
しかし、わが子を見つめ、母ではなくこの子の姉になることは、複雑な思いであったようだ。
1ヶ月ほどたった頃、金眼の確認におじい様の系統であるハイルデン公爵本人と部下がやってきた。近くの教会に設置せれている古の転移門を使い、そこから急ぎ馬車でやってきたのだ。
ハイルデン公爵がやってきた時、ちょうどジルベールが寝ていた。
それでも、お構いなしに「では赤子を見せてくれ」とずけずけと家に入り込み、寝ているジルベールの右目を強制的に開いて目を確認し、にっこりと微笑み。
「あなたは、確か元文官でメルミーナ公爵の系統だったかな?」
「はい」と返事をすると。
「そうか、普通は領主が亡くなり、その後継となる子が成人していない場合、生存側の系統で後見になるのが習わしだが、この子は右目が金眼。我が一族の系統になる。そしてこの領地も私の管理領域だ。後継には私が立つと申請しよう。なに、心配することはない、悪いようにはしない。成人するまでもこの領地が取り上げられることがないように手配しよう。
ジルベールが成人後も、伯爵ではなく、侯爵の身分をあたえらるように準備もするから、安心して任せてくれたまえ。では丈夫に育ててくれ」
と一方的に告げ、あっというまに去っていった。リリアーナは領地のこともあり、ハイルデン公爵家に後見人を頼むつもりだったので予定通りにことが進み安心した。