2.朝
「ふぁあ~おはよ~守」
眠いのか目をこすりながら姉がリビングへとやってくる。
大体朝はこうだ、夜遅くまでネトゲをしているから仕方がないとは思う。
「おはよう」
「シャワー浴びてくるね」
朝と夜で2度もお湯を使われると家計に響くのだが、顔を洗う程度では目が覚めないらしいのと昔からの習慣なのでもうなれている。女性は身なりに気を使うものだというのが母の持論であり、姉もそれに倣っているのだろう。
朝ごはんの準備は僕の役割だ。今朝はクロワッサンとサラダ、スクランブルエッグにウインナー、スープは野菜たっぷりのコンソメで、デザートとしてヨーグルト、飲み物は眠気覚ましのコーヒーだ。
朝ごはんはパンの事が多い、コーヒーに合わせてるんだけどね。
ちょっと量が多い?うちでは朝ごはんはしっかりと取るのが普通。一日の始まりをしっかりと食べることでその日のエネルギーをチャージするんです。
《今日はブルーベリーをベースにして!だそうです》
トトが姉からのメッセージを読み上げる。
僕は冷凍庫からブルーベリーをメインにいくつかの果物を取りだし豆乳と共にミキサーに入れる。甘い方が姉が好むのでハチミツをチョット入れてあげる。ミキサーにかけて2人分のブルーベリーベースのスムージーの出来上がり!
姉は最近スムージーを気に入っている、その前はジュースだったし、豆乳だったこともあった。美容と健康に気を使っているらしいけどそれなら夜更かしをしなければいいと思うのは僕だけだろうか?
姉が風呂場から戻ってくる。頭にタオルを巻いているのはドライヤーで乾かすと髪が傷むからだそうです。
「いっただきまーす!」
姉が元気よくスムージーを口にする。2杯分作ったので僕も一緒に飲む。ブルーベリーは目にいいアントシアニンがいっぱいだから本を読んで疲れた目にちょうどいい。
その間トトと姉の横にいる羽の生えたキャラのフィアが喋っているというか情報交換機能によって情報を交換している。
デバイス管理キャラはデバイスを使用する個人の嗜好や生活パターンに合わせて変化していく。そのため知り合いや友人のキャラと情報交換する機能が搭載されている。これらの機能は人工知能つまりAIによって制御されており、そのAIを開発したのがBrain Creator社である。そんな【BC】が作るゲームのAIとなれば【VWO】もすごい物になるのだろう。
「うん、今日も美味しかった!」
「それはよかった」
「じゃあご飯にしようか」
スムージーを飲み終えると僕たちは朝ごはんを食べ始める。
うん?兄と両親はどうしたのかって?兄は大学近くで1人暮らし、両親は海外に行っていることが多い。そのため僕たちは姉弟でこの広い家にいることが多い。生活費の管理や家事をしているのは僕。理由はお金を姉に渡すとゲームに使ってしまうというのと、家事を忘れてゲームをしている可能性があるためだ。
《白井 雪さまよりメールです》
朝食を食べ、片づけをしていると友人の雪ちゃんからのメールの着信をトトが知らせてくる。
「ごめん、手が離せないから読んでくれる?」
トトにお願いする。
────────────────────────
【VWO】楽しみです。
乱麻君から聞いたんだけど守君も【VWO】やるんだね
一緒にゲームをするのなんて何年ぶりかな?すごく楽しみです!
私はいつも通り魔法使いをやろうと思っています!守君はどんなキャラにするのかな?
じゃあまた学校でね!
────────────────────────
「うーん、雪ちゃんは相変わらずだなあ」
雪ちゃんは僕に好意を持っている節がある。おそらくだけど勘違いではない。
子供の頃からの付き合いだからなんとなくわかるけど同じ幼馴染でも僕と乱麻に対する対応では差がある。というか、バレンタインのチョコレートの違いとかあからさまな所もあるくらいだ。まあバレンタインの件については光ちゃんに気を使っている可能性もあるんだけど。
雪ちゃんは結構カワイイから好意を持っている男子も多い。だから僕のような本にとらわれた生活をする運命にある人間よりももっといい人を好きになってほしいんだけどなあ。まあ当分はこのままの関係でいいとも思う。下手に関係に変化があって乱麻と光ちゃんの関係にまで影響を出すのも悪いしね。でも、いつかは真剣に向き合わなきゃいけないことなんだよね。
「じゃあトトこうやって送っておいて」
────────────────────────
Re【VWO】楽しみです。
僕はサポート主体のキャラにするかな?あんまり戦闘とか好きじゃないし、料理とかそういう要素もあるんだよね?そういうのでお金を稼いで静かな所で本を読みたいなあ
残念だけどみんなとパーティーを組んで一緒にプレイする時間は確保できないかなあ
じゃあ学校で
────────────────────────
さて、片づけ終わった。学校に向かうか。
「行ってきます」
僕よりも少し家を出るのが遅い姉にそういって僕は学校へと向かう。