1.はじまり
《広告メールが届きました》
本と盾を持ったキャラが僕にメールの受信を報告してくる。
珍しいな学生向けの教材の広告だろうか?
「トト読んでみて」
トトとはこのデバイス管理キャラの名前で古代エジプトのトート神に由来する。
《『本好きのあなた』へBrain Creator社より家庭用VR機およびVRMMORPG【Virtual World Online】のお知らせ》
「ストップ!やっぱり自分で読むよ」
本好きのあなたへというお知らせならばしっかりと確認したい。
僕はデバイスを操作し画面を見る。
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『本好きのあなた』へBrain Creator社より家庭用VR機およびVRMMORPG【Virtual World Online】のお知らせ
佐藤 守さま
本が好きだけど現実では高価すぎてなかなか集められない、そんなお悩みをお持ちではありませんか?当社開発のVR技術を用いて見て、触って、読めるそんな仮想の本を試してみませんか?
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なお、本を読むためにはこちらのソフトが必要です。
【Virtual World Online】
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《佐藤 勝さまよりメールです》
《安藤 乱麻さまよりメールです》
【BC】ことBrain Creatorからのメールを読み終えるとトトが新たなメールの受信を教えてくれる。兄と友人だ。まあ両方とも同じ内容だろうな。
そして、部屋のドアがノックされる。
「守~、【VWO】やるからVRギア買って!」
姉の佐藤 真奈が僕にお金を要求してくる。これは両親を説得しないと駄目だろうな。
「ちょっと待っててお姉ちゃん確認するよ」
僕は両親にメールを送る
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『VRギア』とゲームを購入したいです。
お父さん、お母さんお疲れ様。
ちょっと高い買い物をしたいので相談のメールです。
『VRギア』って言う【BC】が開発した新しいデバイスで仮想現実を味わえる機器らしいです。
詳細はこのページを見てね。
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これを僕とお姉ちゃんそれとたぶんお兄ちゃんも買いたいです。
それとこの機器を使ったゲームで【Virtual World Online】というのも3つ購入したいです。
何でもAIが作った文章を仮想の本にして読めるみたいなのでどんな感触か体験してみたいのでお願いします。
それじゃあ返事待ってます。
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両親へとメールを送るとすぐに返事があった
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Re:『VRギア』とゲームを購入したいです。
守へ
買っていいよ。お姉ちゃんとお兄ちゃんの分もね
せっかくだから『VRギア』は父さんと母さんも買います。仮想空間で離れた人とも触れ会えるみたいだから便利そう。家族で会いましょう。
仮想の本の感触についてもその時教えてね。
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「いいってさ」
「やった~!」
許可が出たので早速予約サイトへ行き予約をする。
というかその時にはすでに予約状況が『在庫残りわずか』になっていた。
間に合ってよかった。
ちなみに触れていなかった兄と乱麻からのメールはどちらも
『【VWO】を買います』と『【VWO】やろうぜ』というタイトルの予想通りのメールでした。
なのでそれぞれに簡単な返事『許可出ました』と『予約したよ』のメールを送った。
さて、ゲームをするのは何時ぶりだろうか?前にやったのは乱麻に誘われてやったゲームが最後だっけ?
ネットゲームにはマナーやルールが暗黙の了解として存在する。それを知らないで勝手なことをすると周りから地雷という要注意人物と認識されるらしい。とまあ周りから聞いた情報をもとにそれを調べることにする。
【VWO】と検索するとwikiが出てきた。発売日までには少し時間もあるしここで簡単に下調べをするとしよう。というか、まだ予約の段階なのにまとめサイトがあるんだと思っているとどうやら今βテストが行われているらしい。こちらは新作ゲームのテスターとして抽選で選ばれた人がやっているらしく。まさかVRだとはと言う驚きの感想が載っている。
ちなみにこのゲームと言うかVR機も含めてお値段が6桁になる。家計を預かる身としてはちょっと大きい出費だなあ、まあ毎月こういうときのために貯めていた貯金を切り崩せば大丈夫だからいいんだけどね。