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現代社会の魔法学。その2

 小さい時から計算が好きで算数は得意とまではいかなくても好きな教科である。

 答えが綺麗に出るしそれに難問は楽しい。

 何日も答えが出ない問題を考え抜いて出せた答えが正解した時の快感は病み付きになる。


 そんな私が簿記と出会うのはそう難しくなかった。


 病弱な母と幼い私の為に定時で帰宅出来る事務職に転属願を出してようやく受理されたからだ。


「お父さん宿題やってるの?」

「早く家に帰る代わりに宿題を出されたんだ」


 今まで営業一本で生きてきた父は簿記を取得していなかったから、帰宅後や休日は簿記と電卓の試験に時間を使っていた。


「これって算数の本?」

「これは簿記だよ」

「ぼき?」

「算数でお片付けするやつ……かな」


 大好きな算数ってだけで興味が出てきたて父の目を盗んでは簿記の本を読んでいった。

 父と簿記の勉強するのにはそう時間が掛からなかった。


「大阪商店の11月の締日は?」

「ニシムクサムライだから30日」

「正解だ!」


 簿記も楽しかったけど父と何かするのが楽しかったのかもしれない。

 簿記3級は父娘で合格した。

 翌年2級は私だけ受かってから、それ以来父は簿記の勉強を辞めてしまった。

 私は小学校卒業する時には1級合格して新聞の地方欄に載りチョッとしたものだった。


 能力の目覚は中学生の頃シャーペンの芯が終わらないって現象が最初だったと思う。

 シャーペンの芯ケースに1本有ればケースを振るだけで芯が増えるのだからね。

 学校の皆も手品くらいの感覚で喜んでたからね。


 高校に入ると多少大きな物も増やせるようになり、おやつのケーキを2つに出来た時は嬉しかった。


 でも、数秒ともたなかったけどね。

 だって味は甘いだけのとスポンジの食感するだけの2つに分かれたのだから。

 それからはオヤツには使わなかった……美味しくなかったからね。


 あと、お金も試したけど駄目。

 大きさも重さもバラバラな物しか出来なかったから。


 悪い事って出来ないようになってるんだね。


 そんな私でも入社出来てやっとこれからって時に……。


「「なんで二人になってるのよ」」

「双子とかじゃなくて?」

「ウチは淫乱じゃない」

「私だって鉄板女と一緒にしないでくれ」


 口論になる前に四は間に割って入った。


「二人に分かれるのは魔法なのか?」


 この質問は二人は首を横に振る。


「なら理由とか原因とか分からない?」

「「仕訳たから」」


 彼女達からの話では仕訳とは複式簿記で発生した取引を貸借たいしゃくを勘定科目に分類すこと何だとか。

 つまりは、


 借)土地 10.000 貸)現金 10.000


 と、同じことを彼女達は自分に行った事になる。

 どちらが貸方・借方なのかはこの際どうでもいい。

 現実に二人に分裂している……いや仕訳られていた。


「……つまり分裂して戻れないとか?」

「「戻れますよ」」


 高田 英子は、喩え仕訳して勘定科目が付いても高田 英子は高田 英子のままなのだと。

 貸借対照表に載せれば一つになるとのこと。


「「その貸借対照表を探して欲しいのです」」

「それって売店で売ってるのでは駄目なのか?」


 そんな素人の浅知恵なんかは既に試したとばかりに二人は頭を抱えたり、首を横に振って溜め息をついていた。


「せめて手掛かりは無いのか?」

「ウチが認めた物か人なら……」

「私が必要とする物か人ならね」

「探すのを手伝えばいいのか?」


 二人は首肯すると昼がまだだった事を思いだした。


「ウチがお昼用意するからアレに変な事をしないでね」

「し、しないよ!」

「紫朗くん女の子の部屋に来てその台詞はどうかと思うよ?」

「ウチは紫朗さんを信じてますよ」


 何とも奇妙なもので同じ顔をした二人と食事は不思議な感じがした。

 ただ性格が若干異なるから別人と考えられるのは良かった。


「処でさっき外で私服の小嶋にあったのだけど?」

「小嶋って警備の?」

「そうだよ」

「私、管理人室に行って話聞いてくる」


 女子寮の警備に男の小嶋が入る事はあり得ないそうだ。

 女子寮には日中は二人、夜間は四人体制で女性の警備員が配置についているとのこと。


「よく僕は通れたね」

「紫朗さんについては話を通しておきましたから」

「つまり僕がここに来るのは」

「確定事項ですっていいますか……加島姉様に頼まれましたから」


 四は得体のしれない寒気をおぼえた。


「紫朗さんどうかしました?」

「いや、高田さんと加島先輩ってどういう関係なの?」

「加島姉様は幼馴染みのお姉さんです」

「家が近所とかなのか」


 そんな話をしていたらもう一人の高田 英子が帰ってきた。


「管理人さんが小嶋が来る用事は無いって言ってた」

「なら女子寮で最近変な事なかった?」


 まあ怪しい人間を見たら先ずはこれを聞く定番中の定番。


「うん……下着を取られたって言ってた人がいるって話?」

「それならウチも取られたよ」

「それ私聞いてない」

「だってさっきウチが分かったんだもん」


 そうなると小嶋が怪しくなるけど……女性警備員二人は何をしてたんだろうか?


「ねえ下着ドロが出てるなら警備員は何をしてるのかな?」

「「警備室に行けば分かるよ」」


 女子寮裏手に警備員の詰所があった。

 室内はカーテンで見えないため入口チャイムを鳴らす。


「出ないね」

「出ませんね」


 少し待ったが反応が無い。

 ドアノブを回すと簡単にドアが開いた。


「おじゃ……モゴゥ」


 高田の口を四は押さえると回りの音を聴いた。

 奥の部屋から微かに音が漏れていた。


『……あっ………だめよ』

『これで……フィニッシュよ』

『もう……もう……だめぇ~』


 ドアを開けると同時に高田の一人は四の両目を手で隠した。


「貴女達何をやってるんですか?」

「うひぃ」

「うひゃあ」


 状況が分かったのか四の目隠しは外された。

 彼女達は将棋を指していただけだった。

 紛らわしい声をあげるから四の目の回りは赤く痕が残っていた。


 多少期待した分、四は下着ドロの話と私服の小嶋の話を聞いてみた。


「確かに下着ドロは寮生さんから聞いています」

「小嶋ってあの気持ち悪い小嶋ですよね……来る用事なんか無いですよ」

「下着ドロが出始めたのって何時からです?」


 下着ドロが出たと寮生から聞いたのは一ヶ月くらい前から風呂上がりには無かったとか干しておいたのが無くなっているとか……エトセトラ。

 結果四ヶ所の定点カメラを接地して24時間毎の記録を残して監視を強めろと指示があったが慣れで警備事態おざなりに成っていった。


「記録データモニターに出せますか?」

「どれが見たいやつ」

「高田さん何番のカメラが部屋から近いやつですか」


 高田は三番のカメラの映像を指すとお昼ごろを再生してもらう事にした。

 見はじめて三十分して初めて足らしいのが映像に流れた。


「あれ……画面右上に足らしいのが……」


 足らしいのを拡大したが対象が小さすぎた為画像は補正しても粗くてハッキリしないけどプリントアウトした。

 ただ白地に赤のラインが入った靴だと分かった。

 この靴と小嶋の靴が同一である事を祈るばかりだ。


「処で紫朗くん貸借対照表捜しもやってくれるんだよね?」


 下着ドロ騒ぎですっかり忘れていた。


「今日は外に下着を干して定点カメラに犯人を納めよう」

「ウチは恥ずかしいからイヤ!」

「紫朗くんの下着を貸してくれるなら私はいいよ」

「僕の下着なんかどうするんですか?」

「私が着用してから干す!題して『私のじゃないから大丈夫作戦』」

「それならウチも貸して欲しいな」


 それから暫く二人の高田は、どちらが紫朗の脱ぎたてを貰うかで争うのだが紫朗がその間に女性用下着を用意した為両者にダメージが入った。


「では明日来ますね」

「「えっ!今夜泊じゃないんですか?」」






補足。


貸し借りの項目の高田 英子を分離した勘定科目。


『例』

借) エロチック 高田 英子 貸)方言 高田 英子


などに仕訳されてると考えて下さい。


ニシムクサムライについては、分かってる方には釈迦に説法ですがね。


2月4月6月9月11月は最終日が31日で無いから覚え方としてニシムクサムライなんですよ。

ちなみに、サムライは侍では無くて士です。

文字の作りが十と一で出来てますからね!だから11なんです。


ではまた次回。



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