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現代社会の魔法学。

 二つの世界で、人は意識せずに過ごしている。

 日常を暮らす世界とそれ以外である。


 日常のみで特化したのが専業主婦などの非戦闘若しくは反戦闘を志望する集団だが時々問題を起こす。


 それ以外の世界に身を置き帰る場所を失った家事手伝いや自宅警備員などは概ね単独行動を基本とする。

 彼らは擬態や妖術を扱い謎の言葉で仲間とコミュニケーションを取るという報告例がある。


 そして、二つの世界を移動するのは労働者階級と呼ばれ縦に皇族、特権階級、労働者と分割されている。

 最下層の労働者には大雑把に三つの勢力が幅を利かせている。

 サラリーマンやOLを母体としたホワイトカラー。

 工場や工事現場や警備員等のブルーカラー。

 主に派遣やアルバイト・パートからなる傭兵コマンドーである。


 ただ注意しなければならないのは良くできた科学技術は魔法と代わり映えしないということ。

 そして誰もが、魔法を使う素養はあるが使用出来るとは限らないのである。


「――であるから、ここに集まったのは意味がある事と誇りに思い……」


 正直眠かった。

 さんのあとは何度かアクビをして眠気ざましの虚しい努力をしたが温かな陽射しが目蓋を下げるのに拍車をかけていた。

 座席数は定員より多かったので空席が目立ち席順も決まってないから四は適当に座るが隣に誰か座ったか気にも止めていなかった。


「……てい」


 脇を突っつかれて椅子から崩れ落ちそうになり四は要らぬ注目を浴びてしまった。


「何のつもりだ」

「紫朗くん声大きいよ しーっ」


 髪の毛をポニーにした猫の様な女がいた。

 女としては大柄だから差し詰……。


「……山猫だな」

「なんだか失礼な事言われた気がするけど いい女から声を掛けたんだからお茶ぐらいバチ当たらないわよ」


 自分からいい女と言う奴と足首が細い女には気を付けろ。

 これは、四が先輩から聞いた話だ。


「質問に答えたらお茶くらい奢ってやるよ」

「何かしら? 少しエッチなのでも構わないわよ」


 女はりぼんを外すとポニーテールを崩した。

 机に肘をついて本格的に四の顔を見詰めることにした。


「……なあ」

「なーに?」

「……」

「……」

「おまえ足首が細いか?」


 女は肘を滑らして盛大に転けそうになるのを我慢したが代わりに噎せていた。


「大丈夫か?」

「貴方、誰にでもソレ聞いてるの?」

「自分でいい女って言う足首が細い奴は気を付けろって先輩が言ってたからね」

「なにソレ呆れた……足首の後は締まりも調べる気なの?」


 女はフフフと笑うと四の袖を掴んだ。


「今日会ったばかりの男の息子に挨拶する女じゃ無いよな」

「どうでしょう? 確めてみるのかな……今? それとも今夜かしら?」

「美人局なら他でやってくれ」


 女は自分の身体を密着させて豊な胸の谷間に四の腕を挟み込んでいた。


「美人局でも売女でも婬売でもないわよ悪いけど」

「なら目的はなんだ?」

「……助けて欲しいの」



 助けを求められても今は講義中だ。

 講師から注意を受けても仕方無い場面。



「四。入校早々軟派に成功したみたいだけど黒板の問題を答えてくれないか? 爆死する前にたのむよ」


 講義室は笑い声が漏れた。



 問題。

 おはようは何の略か?


「サラリーマンなら挨拶は大切だろ?略と略された経緯を答えてもらうかね。軟派男。」


 講師の呆れ顔を見て渋々立ち上がる四。


「おはようは、お早くお出掛けになりご機嫌麗しいご様子で誠に喜ばしく存じますだ。」

「略された経緯は?」

「明治37年に国定教科書が省略化したからと言われているからです」


 講師は悔しそうに正解と伝えた。


「やるじゃん!」

「サラリーマンなら誰でも知ってる事だ」

「でも私は自慢していいと思うよ」


 少しくすぐったい感じを避けるように話誤魔化す。


「さっきの話」

「私の足首が細いかって話?」

「おまえなぁっ」

「私にはちゃんと名前はある紫朗くんだってあるでしょ」


 どこかで会ったのだろうか?


「思い出すのと身体で覚えるのどちらがいい?」

「思い出すも何もここで会った女子は高田さんくらいだよ」

「半分正解だから許してあげる」


 高田は唇に当てていた指をそのまま四の唇に当ててからペロリと舐めた。


「ごちそうさま」

「……それより助けを求めてたんじゃないのか?」

「朝礼から講義までに高田さんと仲良くなるなんて爆死したらどうだ四?」


 豊橋は二人の会話に割って入ってくる……高田に興味あるのはバレバレの行動。


「高田さん四より俺とお昼にしようぜ」


 高田は四の腕を掴むとそのまま離席する。


「紫朗くんお昼行こっか」

「豊橋はどうする?」

「別にいいんじゃないかな」




 その頃豊橋。


「だから一緒に食事を……って高田さーん」



 豊橋を置いてきて正解か失敗かを考える暇もなく高田に腕を引っ張られたまま外に出た四。

 中途で入校したってだけでも目立つのに、この高田の長身で山猫を思わせる色香は周りを惹き付けるに充分だった。

 要するに四は目立っていた。


「高田何処まで行くんだ?」

「寮」

「昼飯くらいの金はあるからさ」

「さっきの相談やっぱり今でも良いよね」


 そう言われては四に断るだけの理由はない。

 食事をしながら話すのは理に叶ってるし面倒な話なら余計に二人だけのほうが良かったのかもと、四は自分を納得させる。

 女子寮は四の居る寮の近くにあるが造りは新しかった。


「これが男女格差なのか」

「紫朗くん早く愛の巣にいこう」

「何か言ったか?」

「……行くよ」


 突然不機嫌になった高田の後を慌ててついて行こうとする。


「おい!女子寮は男子禁制だぞ!」


 引き留めたのは小嶋だった。


「えっと小嶋さんでしたっけ」

「そうだが質問はこっちがしている」

「その前に私服で女子寮で何をしてるのか教えてくれませんか?」


 小嶋は警備服を着ること無くかなりラフな服装だった。


「……み、見回りだからな」

「不審者でも?」

「……そ、そうだ今回だけは見逃してやるから感謝するんだな」


 そう言い残して小嶋は振り向くこと無く去っていった。

 去っていったのを見届けるかのように女子寮から悲鳴が聞こえた。


「高田さん何処ですか?」


 一階はロビーになっていて玄関側に管理人室があり壁に幾つかの名札が掛かっている。

 今はお昼だからか名札は赤字で書かれた札が殆どだけど黒字で高田の名札があるから在室は黒字だと考えるのが妥当なんだろう。

 安全上の為か名札の近くに部屋の号数は無く彼女が在室してることしか分からなかった。


「四さんこちらです」

「高田さんどうしたんですか?」


 高田さんの後を追いかけて二階の部屋に入る。

 そこには人が倒れていた。


「……四さんウチを助けて欲しいの」

「高田さんそれより人が倒れてる」


 慌てる四を高田は制した。

 それでもと四は駆け寄ると意識を確かめようと横向きになった顔を隠すように覆った髪の毛を退かした。


「安心して……倒れてるのはウチだから」

「え?」


 倒れてる女子も高田さんで目の前に居るのも高田さんだった。










今回は解説無しです。


一応講義で世界の仕組みは説明してますからね。


魔術と妖術は違う物と考えていいです。


その辺はまた今度。


では次回まで。

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