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営業畑の魔法講義。

 グランドでは自主トレをやるものやノンビリ読書してるのもいる。

 あちこちから朝の挨拶を交わす声がする。


「おはようございます。」

「おはようございます。」


 よく見ると普通に挨拶しているだけではなく、足を木に固定して逆さまになって腹筋をしながら挨拶する者。

 懐から名刺を取り出し挨拶をして仕舞うを一連の動作を行う者。

 名刺交換くみてを行う者等々。


「……あれは何をやってるんだ?」

「朝礼前の自主トレは何処の企業でもやってることだろ?」


 何をおかしな事を言ってるんだみたいに、豊橋から言われると気分が悪い。


「ここでの生活は会社の寮と同等だから3食と寝床はあるし、訓練に必要な物は経費で落ちるから領収書は貰っとけよ」

「前に戦闘職で入った時より待遇が良いな」





 研修は配属後に各部署が必要スキルを習得するために行うのが普通なのだ。

 本来、入社試験が受かった後の新人研修で人事が個人能力を測り専務が判を押して振り分けされて技能研修をおこなうのである。


 ただ


 ただ稀に、オーバースペックな新人もいる。


 それは入社式では毎年噂されるほどの内容だった。


 しかし、現役サラリーマンが部署替えを出世又は降格無しでする事は無いし、新人研修を終えて直ぐの奴しか研修は出来ない決まりがある。


 だから、営業に属して入社3年目の四が魔法を覚える事は本来ありえ無い。





「四は営業だったんだよな なんで魔法を?」

「判らんが案内書を手渡された」


 豊橋は意外なとでも言いたげに眼を丸くして驚いていた。


「手渡しって、そんな話聞いたことないぞ?」

「なら、普通はどうなんだよ」


 確か庶務課(略)でも驚いてはいたな。


「手渡しって変かな そんな状況もあるんじゃ無いかな」


 豊橋はユックリ首を左右に振る。


「……ないな 封書は必ず枕元に置かれてるからな」

「いや そっちのが恐いよ」

「手渡しって事は配達人の顔みたんだよな?」


 豊橋……目が血走ってて恐いよ。


「ただの郵便局員だったぞ」

「そっか初の正体発覚だったのに残念だな」

「あぁ 魔法職では手紙配達の仕組みの謎解きが夢って奴多いぞ」


 グランドの中心地に一際高い台がありそこに人々が集まって来る。


「どうやらそろそろだな」

「何が始まるんだ?」

「朝礼だよ」



 サラリーマンは、朝どんなにだらけていても朝礼が始まると起立したまま話を聞く習性がある。

 その話を聞かないと一日が始まらない、そんな風に考えてるのが多いからだろう。


 四も朝礼後のミーティングをやったのち、営業に出ないと落ち着かないし必要な情報が得られないから仕事が上手くいかないのだ。


 ここで気を付けるべきは、朝礼のやり方は部署によって違うので新しい場所では周囲に合わせなければ失態となり営業成績に響くほどの命取りになるのである。


 ただ安心したのは、ここでの朝礼もホワイトカラーならではの当番制の朝礼だった。


 朝礼当番は『挨拶五ヶ条』つまり挨拶を五種類を言っていくのだ。


 挨拶五ヶ条


『おはようございます。』

『宜しくお願いします。』

『少々お待ちください。』

『申し訳御座いません。』

『ありがとうございます。』


 以上。


 これを、交互に大声て言っていくのだ。


 これと、サラリーマン体操は欠かせない。


 これだけで晴れやかな気持ちで仕事に望めるから不思議だ。


 ☆★☆★★☆★☆★☆★☆★


 朝礼後は仕事と流れるのが定石なのだが、研修生は慣れた感じで講堂に移動して行く。


 講堂に入るとまず目に入るのは階段状になった座席に黒板の換わりに巨大なスクリーンが設置してあった。


 ただ前の方で人だかりが出来ていた。


「やれ!やっちまえ!」って等の少々煽るよう物騒な声が聞こえた。


「なんだなんだ」


 四は揉め事は好きではないが知らぬ存ぜぬのスタンスは大嫌いだった。

 人を避けて中に入るとレスラーかと思うほどの巨漢を奮わせた警備員らしき男と、指定ジャージを着用した男がいつ手を出してもおかしくない状態まで近付いて口論していた。


「あの警備員は何なんだ?」


 四は隣の女子に質問してみると、警備員の名は小嶋と言うらしい。

 小嶋はホワイトカラーに何かと言いがかりを付けていて研修生からは不満の声が上がっているって話だった。


 女子と話をしていたら四の前にいた野次馬の研修生はいなくなっていた。

 理由は簡単、警備員小嶋は柔道でもやるように口論相手をつかんで投げようとしていた。

 よく見たら投げるふりをしながら、わざと技を解いて逃げる相手を素早く掴む動作を繰り返していた。

 まるで、ネズミをいたぶる猫のようだった。


 小嶋はその動作を何セットか実行して相手がフラフラに疲れたのを確認して二本背負いで投げる途中で手を離したから本来真下に叩き突けるはずの身体は、真横に投げ出された。


 四はクッションかわりに飛んできた男を受け止めた。


「警備員……ちょっとやり過ぎじゃないか?」


 警備員と、相対するように声をかけた。


「見掛けない顔だが次はお前が相手するのか?」


 突然女子の悲鳴を聞いた教官が講堂に入室してきた。

 教官は警備員を見て声をかけた。


「君は何をしてるのかな、小嶋くんは?」

「……いやその」


 どうやら小嶋は権力には弱いらしく借りてきた猫の様に大人しくなり部屋から出ていった。


「大丈夫? 怪我は無い?」

「大丈夫ありがとう」

「君は結構鍛えてるみたいだから迷惑だったかな」

「名刺を装填そうてんし忘れたから助かったよ」


 彼女の機転で無駄に争わずに済んだ。

 改めて頭を下げた。


「別にお礼はいいよ」

「僕は四 紫朗よろしく」

「ボクは高田 英子ヨロシクね」


 魔法講義の開始のベルが鳴った。


会社の設定捕捉。


会社で働くサラリーマンは前に話した通り二種類に分かれる。


戦闘職と魔法職である。


スーツを着て名刺を多く使う部署が戦闘職になる。

逆にスーツを着ないで名刺も使わない部署は魔法職となる。

※物流業で会社の外に出る輸送等はどちらにも属さない。


ブルーカラーは現場などで特に青系の作業着を着る専門集団。

ホワイトカラーを軽視する傾向がある。


ホワイトカラー捕捉。

教師や学者や医者や看護師などは白色を着用するがホワイトカラーには属さない専門職である。


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