登場人物紹介 日本人
東宏(あずまひろし)
恐らく本作の主人公。ダサい、ヘタレなど主人公らしくない評価を割とコンプリート気味な高校三年生(注:本編開始時)。極度の女性恐怖症だが、本人と周囲の懸命な治療により、日常生活はどうにか送れるようになっている。物語が進むにつれ、徐々に女性恐怖症が改善していく。家族構成は両親と姉が一人。実家は家族経営の零細鉄工所。諸般の事情で、関西から工場ごと引っ越してきている。
容姿自体は好き好きと言ったところで、表情や雰囲気、服装、シチュエーションなどで多少イケメンに見えもすれば彼氏にするにはあり得ない顔に見えもする感じ。プロのカメラマンとスタイリストなら、メイクなどに頼らなくてもある程度フォロー可能な範囲。
小学校時代に体力のなさと慢性鼻炎が原因でいじめの対象となっており、その延長線上で中学に入った時にかなり深刻ないじめにあう。無論、それ以外にも原因はあったが、ほとんどはいじめという環境で悪化した要素で、本質的にそこまでいじめられなければいけないような性格要素は持ち合わせていない。
不運にも社会の風潮が「いじめの原因は全ていじめられる側にある」となっていたころで、しかも当時の中高生女子の間では「ダサい男に存在価値は無い」という意識が一般的だった時期だったため、まったく歯止めなくエスカレートすることになる。その結果起こった事件に関しては、本編を参照の事。
特技として、時間はかかるが汎用の平面フライス盤での六面体加工で直角度・平行度をプラスマイナス0.02ミリ程度で出す事ができる。これは、高校進学後、平日の放課後および長期休暇は基本的にずっと家業を手伝っていたためで、汎用フライスの腕は一般的な職人程度の技量をもつ。また、平面マシニングセンターのプログラムを手計算で組む能力もある。ただし、少々複雑な形状になると、段取りに若干問題を抱える。
成績は全国レベルで見ればそこそこ上の方。地方の国立大なら、現役合格を狙える範囲。ただし女性恐怖症その他の問題で寮や下宿での生活に不安を抱えるため、行くなら実家から通える大学という事で合意している。両親や姉は大学に行って欲しいが、本人は高校卒業後すぐに親の後を継ぐために修行を開始、一生独身で女っ気のない生活に入るのが理想。
ネットゲーム「フェアリーテイル・クロニクル」で数少ない、最上位クラスの生産スキルを持つ職人プレイヤーで、もはや人間の領域をはるかに超えた生存能力を持つ。作中での役割は基本的に壁役兼博士役。余計な事をしてトラブルを起こすのも大体こいつ。現地の料理を率先して魔改造し、快適な暮らしのためには手間暇努力を惜しまない、素材と聞くと目の色を変える生産ジャンキーでもある。
戦闘面では総合的にはいいところ上の下。極端な防御力とは裏腹に、とにかく攻撃面に問題が多く、相手の回復能力が高いと永久に勝負がつかなくなる可能性がある。通常攻撃の威力は日本人チームで最強なのだが、それをかさ上げするような攻撃手段をほとんど持ち合わせていないのが致命的で、使う武器が大振りになりやすいポールアックスやヘビーモールであることも手伝い、単位時間当たりの攻撃力はフェアクロ世界の一般的な冒険者といい勝負だったりする。
名前のコンセプトは漢字二文字でひらがな六文字になること。最初東と乾で迷ったが、高確率で出席番号が一番になる事と、アミバのトップを防げる主人公という呼び名の魅力に負けてこの名前に。
主人公らしいかどうかはともかく、良くも悪くも物語を動かす人物。
藤堂春菜(とうどうはるな)
間違いなく本作のメインヒロインであるムッツリスケベ。物語開始時点で宏のクラスメイトである高校三年生。イギリス人の血が八分の三混ざっており、母方の祖父譲りの濃い金髪と青い瞳を持つ、若干掘りが浅めで童顔である事以外、容姿に日本人らしいところは皆無な女性。
両親が芸能人、それもいい加減大物に分類される程度の芸歴を持つほか、父方の曽祖父が京都の一流料亭のオーナー兼元板長、母方の曽祖父が戦前のイギリス駐在大使、母方の祖父母はヨーロッパオペラ界の重鎮という、普通にエリート扱いされてしかるべき家系に生まれている。他にも母のいとこに財閥系商社の社長とVRシステムを開発した天才科学者がいたりと、とにかく恐ろしい肩書の身内が沢山おり、特に大げさな肩書を持たないのは父方の祖母だけという、家庭環境と容姿だけを見れば間違いなく勝ち組といえるだろう立場にいる。なお、同居の家族は両親と中学二年の妹だけ。妹は髪の色が母親と同じ銀髪であることと年齢差による体格・体型の差以外は春菜とほぼ同じ容姿をしている。
実のところ、母親に対してはある種のコンプレックスを持つ。幼いころからそれなりの頻度で両親の仕事場に出入りしているため、才能では母に絶対かなわない事を自覚しているのがその原因。一度でも聞いた事のある歌は完璧以上の出来栄えで歌う事ができる春菜だが、流石に母親のように聞いた事のない曲まで完璧以上に歌い上げる真似はできず、それがコンプレックスとなっている。妹はそのあたりは完全に割り切っており、時折芸能界で小遣い稼ぎをする程度の図太さはあるのだが、春菜にはそのあたりの割り切りはない。
こんな家庭環境に育っている割に、人肉及び食ったら死ぬか病気になると分かっているもの以外基本的に何でも食うという某四千年の歴史を誇る国の人たちもかくやな悪食を見せるが、これは別に春菜だけでは無く、母親や妹も同じだったりする。身内にそういう教育をする人がいて、母の代からその影響を色濃く受けているのが原因。
とっかかりさえあれば一瞬しか見ていないようなものでも思い出せる記憶力と相まって、成績は全国三桁以内とかなり上の方。本気を出して勉強すれば最高学府も狙えるが、あまり興味は無いらしい。
ファーレーンでの食生活では当初その悪食が鳴りをひそめていたが、それは宏と同居しているという理由に加え、食っても死なないと確信が持てない食材が多かったからである。決して、見た目だけで食わず嫌いをしていた訳ではない。
ゲームでは回復よりの万能選手。いわゆる勇者もしくは賢者ポジ。器用貧乏一歩手前だが、エレメンタルダンスなどの切り札となる技も持っているため、この手の万能型にありがちな決め手に欠けるという弱点はある程度克服している。ただし、日本人チームでは二番目に防御面が脆いという欠点もちゃんと持ち合わせている。もっとも、脆いと言っても普通なら十分すぎるほどの防御力はあるので、むしろ達也以外の三人がやたら硬いだけではあるが。
なお、ゲーム時代は宏とは一切接点なし。あくまで学校でクラスメイトだっただけの赤の他人。宏の事は顔と名前と女性が苦手らしいという事以外、何一つ知らなかった。
名前に関しては、両親の設定が先にあったためにそこから自動的に決定。父親が藤堂なので名字が藤堂に、四月一日の春生まれで母親が雪菜なので母親から一字取って春菜、という実に普通の決め方で決まっている。
誕生日の四月一日について補足しておくと、日本の民法及び学校法では、四月二日から翌年の四月一日までに生まれた人間が一つの学年として扱われる。理由は二月二十九日生まれの人が毎年ちゃんと年を取れるよう、満年齢は誕生日の一日前に一歳増えるという規定にある。この規定により、四月一日生れの人は満年齢では三月生まれと同じ扱いになるため、その学年で一番年下になるのは四月一日生れの子供、という事になる。
なので、先の解説は、正確には三月三十一日時点で満年齢が同じ子供が一つの学年になる、という表現になるのだが、民法と学校法はこのあたりの記載を非常に回りくどく記してあるため、知らない人は混乱しがちである。とりあえず、本編で春菜が言った「一日後ろにずれていたら宏の後輩になっていた」という台詞は正しいので注意されたし。
水橋澪(みずはしみお)
本編の恐らくサブヒロイン。微妙に恋に恋している感じが否めない中学生。物語開始時点では十二歳。春菜とは対照的に、日本人形を思わせる美少女ではあるが、本編開始時点では難病に加え事故による半身不随の影響もあって病的に痩せており、発育も悪く少々痛々しい外見をしている。
家族は両親のみ、現在親戚の中では最年少。家庭環境は極めて一般的なそれで、従兄の達也がエリート街道驀進中である以外は特に特筆する人物はいない。家もそこそこ裕福ではあるが、春菜の実家ほど極端な金持ちではない。
小学校に上がる頃に複数の臓器の機能が低下する原因不明の難病にかかり、一年の半分は病院で過ごす体に。小学校三年生の時に通院途中にトラックから落ちた荷物が直撃、跡が残るような怪我はしなかったものの当りどころが悪く頸椎を損傷し、寝たきりとなる。
その経歴から交友関係は狭く、現在同年代の友人は皆無。学校の宿題と本とゲームとアニメが友達という生活を長く続けている。オタクの道には達也とは別の従兄が引きずり込み、一般向けより接続時間上限が緩い医療機関用のVRシステムの恩恵も受けてどんどんディープな世界に踏み込みつづけている。事故のせいで肉体的には改善の可能性が低いこともあり、両親は最低限の勉強をしていれば細かい事は言わなくなっている。十八歳未満御断りのゲームに関しては、大半が年齢確認認証の甘いダウンロードサイトから購入、パッケージ版しかないソフトは従兄名義で購入し、その従兄に持ち込んでもらうというやり方で入手している。
対人関係は極めて未熟な上、小学校三年の頃からディープな世界に足を突っ込んでいるため、いろんな意味で手遅れな所まで突入している。元の世界に戻った時に何らかの奇跡で身体が健康体になったとしたら、将来が色々心配な娘さんである。
ゲームではちんちくりんな自身の身体と運動能力の低さに対するコンプレックスから、マッシブな大男のアバターを使っている。外見とは裏腹に盗賊系スキルと生産系スキルに特化し、弓による精密射撃とスピード主体のテクニカルな戦い方をメインにしていた外見詐欺キャラ。ただし、実はスピードはレイピア主体で多彩な技能を持つ春菜に一歩譲る。
宏と知り合ったきっかけは達也の紹介。採取をはじめとしたいろんなアドバイスを受けた事でなつき、そのまま今に至る。
女物の下着や生理用品など、女性恐怖症的な意味で宏では手を出せないジャンルのものを作ってくれる、チームの縁の下の力持ちである。
名前の由来は特になし。なんとなく水関係で統一した。
香月達也(かづきたつや)
本編のレギュラーおよび準レギュラーでは数少ない男性で、更に希少価値の高い突っ込み役。女房命のイケメン。とある一流メーカーの営業職をしている。本編開始時点で二十六歳。澪の従兄。
本人に自覚は無いが、産まれてからずっとエリート街道を驀進してきたハイスペック男。ただし、育ってきた環境は特筆すべき要素は無し。家族構成は両親に弟と妹が一人ずつ、それから詩織という嫁。ただし、実家から既に独立していることもあり、家族構成で話題になるのは嫁の事ばかり。恐らく今後も、両親や兄弟についての話題は出ないだろう。
文武両道だが文の方に力点を置いていたため、運動周りは全体で見ればそれほど目立つ活躍はしていない。周囲にイケメンだからみたいな理由でやらされていたテニスで、高校二年の時に一度だけ運に恵まれて全国大会まで勝ち残った事はあったが、そこで反発する気も起こらないほどぼろぼろに負けているので、スポーツにはそれほど思い入れは無い。むしろ、大した実力でもないのに騒がれるのが面倒なので、それをきっかけに趣味の範囲にとどめるように。余りのぼろ負けぶりから当時を知っている人たちも、テニスに本腰入れて頑張れとはだれも言わない。
逆に文の方は春菜のように全国模試で順位三桁とまではいかないが、一流大学に簡単に合格できる程度には優れており、また試験秀才では無いことを証明するように時折鋭い分析能力を見せる。その分析能力で配属以来ずっと成績トップを維持し、大きな取引もいくつも成立させた若手のホープ。地味に秋の人事異動で昇進が内定している。そこそこの地位にいる自身の父親にはまだまだ勝てる要素が無いが、ボーナスや特別給も含めた稼ぎは澪の父親に迫る。
嫁の詩織は、エリートの達也とバランスを取るためか、それほど才気走った人物ではない。どちらかという心身ともにとフワフワしたタイプで、春菜ほどではないが大きめの胸に栄養を全部持っていかれていると周囲に言われるような人物。達也と並んで見劣りしないような凄い美人ではあるが、ぱっと見た印象は陽だまりで寝ている猫、という感じの女性。ただし、見るべきところは見ているし頭が悪い訳でもなく、少々の悪口は笑って流すタフさも持ち合わせた、ある意味でこれ以上ないぐらい達也にふさわしい嫁。達也の外見や能力をどうでもいいと言ってのける珍しい女性でもある。
ゲームのフェアクロには夫婦そろって老人キャラで参加しており、しかも性別を入れ替えるというマニアックな遊び方をしている。これは、嫁の詩織が老騎士にあこがれており、それならばと達也の方があわせたのが真相。なんとなく老婆のロールプレイが気に入ったため、そのまま進めている。
チームでの立ち位置は魔法使い。それもオキサイドサークルというマイナーな魔法をメインで使う、少々変わった魔法使いをやっている。実際には他にもいろいろ身につけているのだが、残念ながらフィールド主体のこのチームでは、オキサイドサークルの圧倒的な利便性のおかげでほぼ出番がない。ゲーム時代でも、素材がたくさん取れるからという理由でオキサイドサークルの使用率が高く、一般的な魔法使い系プレイヤーと比較すると他の魔法の熟練度が低め。ただし、一般スキルで最強の単体攻撃魔法、聖天八極砲はちゃんと熟練度を上げきっているため、火力で劣る訳ではない。攻撃以外では防御魔法を良く使うが、実はちゃんと回復系や障害系の魔法も使える。
宏との接点は、フェアクロの正式サービス開始直後の頃にあったちょっとした公式イベント。プレイヤー同士での横のつながりを強化する目的のイベントで、ランダムで組まされたパーティメンバーの一人が宏だった。その後女性恐怖症が発症してからも老婆である事と中身が男であったことから、それまでと変わらぬ付き合いができた。というより、女性アバターでまったく関係が変わらなかった数少ない人物。なお当然のことながら、宏は詩織ともフレンド登録している。こちらに飛ばされるまでは老婆の中身がここまで若いイケメンで老騎士の中身が女性と知らなかった、というあたり、夫婦そろってどれだけ高度なロールプレイをしていたかがうかがえる。
名前の由来は特になし。達也という名前だけが決まっており、苗字はなんとなく響きで。
溝口真琴(みぞぐちまこと)
達也と並んで、貴重な突っ込み役の二十三歳引きこもり腐女子(物語開始時点)。物語開始時点の澪にすら負けるほどの洗濯板。オタクとしての濃さもなかなかのもの。容姿面では洗濯板である事以外、これと言って特筆すべき要素は無い。ころころ変わる表情が愛嬌があって魅力的だが、容姿設定ができるTRPGだと普通に設定される範囲。
家庭環境は特に特筆すべき要素は無し。家族構成は両親と結婚して独立した兄が一人。ただし、家庭環境が話題になる事が少ない上、兄弟について話を聞かれる事が無いため本編で話題に出る事は無い。恐らく今後も、真琴の兄については本編で話題に上がる事は無いだろう。
高校時代に友人に腐の道に引きずり込まれた以外、大学進学まで特筆すべき経歴は無い。せいぜい、高校二年の冬コミで角サークルになった程度。引きこもりになったのは大学三年の頃。腐女子特有の病気で彼氏とその友人の絡みを描いてしまい、それを彼氏に発見された揚句に最悪の外道扱いされて大学に行きづらくなり、そのまま中退して引きこもってしまう。
実はこの彼氏、何度か真琴と肉体関係を持った事で満足し、合法的に別れる手段を模索していたという外道である。腐女子であることを伝手で知った時に、それを利用する事を考えたという筋金入り。真琴をその手段で振って大学から追い出した後、同情されるべき立場である事を利用して何人かと肉体関係を持ち、それを似たような手段で振って次々に女を毒牙にかける悪党であった。ただし、そんな事を平気でする性根が海千山千の人事担当者に見抜かれぬはずもなく、現在見事に就職浪人中である。また、そういう人物である事は、真琴から話を聞いた達也にも見抜かれている。
引きこもり中に過去との決別のため、すっぱり資金を食いつぶすつもりで始めた株式取引でひと山当て、就職しなくても食っていけるだけの資産を持っている。自分で稼いだその金に甘えてだらだら引きこもりをしていたが、フェアクロ世界に飛ばされて否が応でも社会と関わらざるを得ない状況に追い込まれた事で一念発起、脱引きこもりに成功する。
大学時代の経験から直接の知り合いはできるだけ掛け算しないように心掛けていたものの、そうそう完治しない腐女子という病気はなかなか手ごわく、何度か無意識に宏と達也を掛け算してはこっそり自己嫌悪に陥った経験がある。ただし、掛け算された宏と達也は、腐女子なんてそんなもんだと割と鷹揚に構えており、本人達にそれを強要しなければ実害は無いからと掛け算されること自体は特に気にしていない。
エルフの森編でのフェアリー達の勧誘、実は最初のイラスト以外はまったく関係ない第三者のもので、揉めていたフェアリーの責任者二人の直接的な絡みは一切描いていない。その程度の仁義は守っているのだが、最初に責任者二人がそういう目で見られるようなイラストを描いている時点で仁義もくそもあったものではないだろう。
チームでの立ち位置は物理アタッカー兼サブ壁。ただし、メイン壁の宏の性能が高すぎて、壁役としての出番はほぼない。無属性物理での火力は突出しているのだが、属性攻撃のバリエーションが少ないのが弱点。また、チームで一人だけ、一切生産スキルを伸ばしていない。ただし、採取と伐採は、初期の頃にスキルだけは習得している。
日本人チームで唯一、ゲームでもリアルでも宏と接点がない人物で、辛うじて一度、臨時パーティで達也のキャラと一緒に狩りをした事がある以外、他の四人とは一切接点がない。一度だけなのでまともに覚えていない上、真琴も達也もゲームとは性別も外見も違うため、お互いに組んで狩りをした事がある事にまったく気が付いていない。
名前の由来は某格闘ゲームの虎バズーカな兄貴から。作中でも子供のころにネタにされたという描写あり。




