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第149話「準備」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ


2030年7月〜8月。


 モスクワ。


 鬼頭班の暗号チャンネルに、3日後、返信が届いた。


「接触を希望する。場所はフィンランド。中立的な仲介者を通じて」


 橘はその一文を読んで、しばらく考えた。


「片桐、動いてください」


「フィンランド経由で」


「そうです。くれぐれも日本政府の関与を表に出さないように」


「了解しました」




 愛知県。JDETA中部拠点。


 MAGIのSSBN追跡が続いていた。


「所在不明のSSBN2隻——依然として特定できていません」とナカムラが報告した。「北極海の氷下に潜伏している可能性があります」


「引き続き追跡を。ただし良い報告もあります。ロシア北洋艦隊の3隻は現在、ムルマンスク沖の監視範囲内にいます。第二案の対象として特定済みです」


「わかりました。引き続き監視を」




 台湾海峡。


 中国の「東海2030」演習開始から3日。MAGI-3がアラートを出した。


演習配置と実戦配置の差異を検出

・上陸用舟艇の配置が演習範囲外に逸脱

・補給艦の積載量が演習想定の3.2倍

・指揮系統が演習指揮と別系統で動作中


判定:実戦準備の可能性 71%



 橘はそのアラートを読んで、片桐に電話した。


「オーストラリアの件を急いでください」


 キャンベラ。オーストラリア首相府。


 片桐慎治が首相と向き合った。


「単刀直入に申し上げます。台湾有事が現実のものとなった場合、現在舞鶴で建造中の貴国向け空母を、JDETA契約書に基づき一時徴発する可能性があります」


「後日の補てんは」


「同等品での補てんを確約します。また、FEPAへの参加枠をオーストラリアに提供することも検討しています」


「いつ頃になりますか」


「早ければ4ヶ月以内です」


「48時間以内に回答します」




 東京。内閣官房。


 橘が次々と指示を出した。


 城島を呼んだ。


「三つお願いがあります。一つ目、防衛省にF-2ドライバーのT-5FC転換訓練を加速するよう依頼してください」


「T-5FCの機体が——」


「それが二つ目です。弥富に75機の緊急生産を依頼します。納期は2ヶ月後。三つ目、09式の生産ラインは一時停止を許可します。リソースを30式の早期増産に回してください」


「了解しました」


 城島が立ち上がった。


「もう一つ」と橘は続けた。「長崎ドックで建造中の自衛隊向けあまつくに型6隻——残り3ヶ月で就役させてください」


「通常は8ヶ月かかるところを——」


「緊急です。JMUに最大限のリソースを投入するよう依頼してください」


「……了解しました」


 橘は次に牧野を呼んだ。


「JFEのジブチスマートドックに、あまつくに型4隻の建造を依頼してください。納期は5ヶ月で」


「ジブチのドックで?」


「ジブチに2ドックあります。アンコーナまでの回航時間も短い。急いでください」


「わかりました。JALの件はいかがしますか」


「一緒にお願いします。A350-1000、残り10機を全て」




 東京。JAL本社。


 牧野からの電話を受けた役員が絶句した。


「強制買い取りとは穏やかではありませんが……対価は」


「An-255Bムリーヤを1機、JALに移譲します」


 長い沈黙があった。


「……An-255Bを、1機?」


「はい」


「あれは世界に1機しかないのでは……」


「そうです。A350-1000の10機分を超える価値があります。JALの貨物部門にとって悪い話ではないはずです」


 また長い沈黙があった。


「……承知しました。検討ではなく、受諾します」


 電話が切れた。


 牧野は苦笑した。世界に1機の超大型輸送機をA350-1000の10機と交換する——FEPAがいかに急いでいるかを示す取引だった。




 ジブチ。


 E-350Bの生産ラインが3交代制に移行した。製造スピードが1.8倍になった。


 JFEスマートドックでは、あまつくに型の起工が始まった。タランが資材を運び込み、タチコマが溶接を担当した。


「5ヶ月で4隻は相当きつい」とJFEの現場監督が言った。


「24時間動かせばできます」とタランが答えた。


 

 地中海。イスラエル沖。


 第三海上管制大隊——はやぶさ改50隻——が移動を開始した。


 目的地は馬毛島だった。同日、自衛隊の補給艦2隻がインド洋に向けて出港した。


 入れ替わるようにオデーサに展開していた、第二艦隊のはやぶさ改50隻が新たに展開した。


 オデーサ沖には第一艦隊のはやぶさ改50隻が残った。




 東京。日立本社。


「次世代MAGI用の150ラック……1年以内の納品……」と担当役員が読んだ。


「工期は通常18ヶ月ですが」


「1年でお願いします。JDETAが支援します」


「……全力でやります」




 東京。内閣官房。


 橘は全ての指示を出し終えた。


 10001号が珈琲を置いた。


「やることはやりました」と橘は言った。


「間に合いますか」と10001号が聞いた。


「5ヶ月あります。ぎりぎりです」


 窓の外の永田町は、真夏の陽光に照らされていた。





【国際情勢スレ】


1 名無しさん

中国の台湾周辺演習、規模が大きすぎないか


2 名無しさん


>>1

補給艦の荷物が演習にしては多すぎるって話が出てる


3 名無しさん

FEPAの第三海上管制大隊がイスラエル沖から移動したらしい

なんで?


4 名無しさん


>>3

知らない方がいいやつだと思う


5 名無しさん

JALがAn-255Bを手に入れたって本当か

世界に1機しかないやつじゃん


6 名無しさん


>>5

A350-1000を10機渡して交換したらしい

どう考えてもJAL側が得すぎる取引


7 名無しさん


>>6

相手が急いでたってことだろ

何のためにA350を集めてるんだ


8 名無しさん

ジブチのドックであまつくに型を建造してるって情報が


9 名無しさん

誰かが何か大きなことをやってるのは分かる

でも何をやってるのかは見えない

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