ドラゴンベロ使いフミゑ~華麗なる復讐劇~
「オニイサン三万円でどう」
「あぁすみませんペットの富沢がのどにマラを詰まらせてしまったんです。」
「オニイサンドラゴンのフェラチオを知っているか」
雑踏の中で背筋が凍る。言葉にするということがどれだけ難しいか、そしてそれに伴う責任でどれほど苦しんできたか、僅か数秒の逡巡。少しして自分が最初の質問に正しく答えられていないことに気づいた。
「あぁすみません。71分コースは有りますか?素数でしか気持ちよくなりたくなくて」
「60分を超えるとフリータイムが安いですね」
「数字が指定されていないと気持ちよくないんです。」
「ドラゴンのフェラチオを知っているか。」
ドラゴンのフェラチオ。喉奥から火を出す関係上、おそらく先端から燃えるような痛みと共に尿道へ火炎が迸り数秒後には一つ200円のカップ麺をすする生活を背景に炭化するだろう。ここで重要なのはドラゴンのフェラチオを経験しているという質問がそもそも破綻していることだ。経験が死を意味する以上、ここでの質問の答えは決まっている。つまり何か別の意味がある。
「お姉さんおかしいなぁ。経験したらで死ぬワザをくらってまともに生活できる人間はいねぇ。つまりこの質問はNOに決まってんじゃねぇか。」
「そのドラゴンが氷属性を司っていたとしたら?」
思考の外。自分の中にあった隙。気づいてしまった、自分の中に残っていたプライドの残滓。置いてきたはずの富沢が脳裏にフラッシュバックする。
「内股ザウルスさん。俺が死んだときに悲しんでくれますか?」
「富沢、そーいうセリフは言うもんじゃない。言霊って知ってるか?」
「知ってたとてでしょう。俺の元カレが電車になってからもう毛沢東。藁生えてきますよ」
「ポッポー」
汽笛が思考を引き戻す。そうだ俺はこの試練を乗り越えなくてはいけない。
「いいだろう。受けて立とう。」
「オニイサンに敬意を。来なさい」
彼女が手を十字に切ったとたん、空気が軋む音がした。
「おいおいマジか...」
「オニイサンに一つ助言を。瞬きの後に月を見てください。」
「っく!こいつ...火属性!」
その刹那、体は制御を失った。視界は彼女を視点として回転、オーディエンスが星空と入れ替わった。ドラゴンは生物的矜持からか、こちらと目を合わせたまま。これは勝負ではないと悟った。ドラゴンが喉を鳴らす。口の横から煙が漏れた。その大きな口が開き「狩り」が始まる。目を閉じる。彼女の助言を思い出す。
「月!つきぃ!」
必死に月を探す。そこで思い出した。
「ここはッ!耳鼻科!!」
室内という前提を脳から失っていた。最初の質問からすでに勝負がついていた。後悔。次の瞬間尿道へ灼熱が注ぎ込まれた。
「ああ意外と」
奇しくも時計は11時11分を指していた。




