届いたその先で
箱がココポスを出ていった日の朝、
局内はいつもより少し静かだった。
「ぺん……」
従業ぺんたちの声も、どこか控えめだ。
こころんは、発送済みの棚を見つめながら、
まだ胸の奥に残る重さを感じていた。
(ちゃんと、届いたかな)
局長としては考えなくていいはずのことを、
今日はどうしても考えてしまう。
午後になって、一通の小さな封筒が届いた。
箱ではない。
薄くて、軽い。
宛名は――ココポス 局長 こころん様。
「……?」
こころんは、そっと開けた。
中には、短いことばだけが入っていた。
届きました。
怖かったけれど、
ちゃんと、伝えられました。
それだけ。
けれど、その紙からは、
箱よりもずっとはっきりとした温度が伝わってきた。
その瞬間、こころんの胸が、すうっと軽くなる。
「……よかった」
声に出すと、ようやく実感が追いついた。
やくぺんが後ろから言う。
「箱は、ちゃんと役目を果たしたってことだぺん」
ときぺんは時計を見ながら、静かに付け足す。
「少し遅れたけど……“間に合った”時間だぺん」
ようぺんは、にこっと笑った。
「勇気は、消えなかったぺん」
でも、こころんは首を横に振る。
「……それでも、私は間違えた」
三匹は黙って聞いている。
「守ろうとして、
勝手に止めて、
自分の気持ちを混ぜてしまった」
こころんは、机の上のペン形スタンプを見つめた。
「心を運ぶって、
“きれいにする”ことじゃないんだね」
「そのまま、届けることなんだ」
その日の終業前。
こころんは、局内に小さな札を増やした。
《保留便:気持ちの持ち主の“今”を最優先》
派手なルールじゃない。
でも、忘れないための言葉だった。
従業ぺんたちは、何も言わずに
「ぺん」とうなずいた。
夜。
シャッターを下ろしながら、こころんは空を見上げる。
今日も、たくさんの心が行き交った。
うまく届いたもの。
少し遅れたもの。
それでも、進み出したもの。
(次は……)
こころんは、胸に手を当てる。
(ちゃんと“その人の気持ち”として、判断しよう)
さて。
ココポスには、
今日もまた、新しい箱が届く。
今度は、
どんな大きさで、
どんな震えを持っているのだろう。
こころんは、扉の前で小さく笑った。
「……よし。ぺんぺん」




