保留便
その箱は、
棚のいちばん奥に置かれていました。
「保留便」と書かれた印。
時間も、行き先も、まだ決まっていない箱です。
毎日、こころんは
業務の合間に、その箱をちらりと見ます。
触れない。
開けない。
ただ、そこにあることを確かめるだけ。
箱は、
少しずつ変わっていました。
角が丸くなり、
色がやわらいで、
重さも、ほんの少し軽くなっています。
ある日の午後。
おやつの時間が終わり、
局内が落ち着いたころでした。
「……今ぺん」
ようぺんが、ぽつりと言いました。
こころんは、すぐに気づきます。
「来た?」
ようぺんは、うなずきました。
「状態が、整ったぺん。
無理も、我慢も、入ってない」
ときぺんが、時計を確認します。
「時間、ちゃんとあるぺん。
“今日”でも“今すぐ”でもない。
でも、待たせすぎでもない」
やくぺんは、箱をそっと持ち上げました。
「役割が、一つに決まったぺん。
“相手に伝える人”として」
箱は、静かでした。
逃げない。
揺れない。
ただ、そこにあります。
「……動くね」
こころんは、そう言って、ぺん形を取りました。
押印の音が、
いつもより少し、深く響きます。
「ぺん」
箱は、
保管棚から降ろされ、
発送レーンへ置かれました。
従業ぺんたちは、
声を出さずに見守ります。
箱が、ゆっくり進み、
角を曲がり、
見えなくなりました。
しばらくして。
「行ったぺんね」
「ぺん」
ようぺんが、ほっと息をつきます。
ときぺんは、時計を戻しました。
やくぺんは、空になった棚を見て、
小さくうなずきます。
こころんは思いました。
気持ちは、
無理に動かさなくていい。
でも、
ちゃんと“動ける日”は来る。
それを信じて、
待つ場所があること。
それが、
ココポスの役目なのだと。
さて――
次に動き出すのは、
どんな箱でしょうか。




