送られそうになった箱
その箱は、
ごく普通に見えました。
大きさも、色も、重さも、
どこにでもある「ありがとう」の箱。
だからこそ、
誰も疑いませんでした。
「次、発送ぺん!」
従業ぺんが、
いつものように箱をレーンに乗せます。
そのとき――
「……待つぺん」
やくぺんが、羽を伸ばしました。
「この箱、
役割が二重になってるぺん」
「え?」
箱を受け取った瞬間、
やくぺんの背すじが、すっと固まります。
「“相手として”のありがとうと、
“自分を納得させるため”のありがとうが、
同時に入ってる」
ときぺんが、慌てて時計をのぞきます。
「時間も変ぺん!
“もう終わった”って書いてあるのに、
“今も続いてる”音がする!」
ようぺんは、箱に触れて、顔を曇らせました。
「状態が……
笑顔のふりぺん」
局内の空気が、すっと冷えます。
その箱は、
きれいに包まれていました。
だからこそ、
気づかれにくかったのです。
「このまま送ったら……」
こころんが言葉を継ぎます。
「受け取った人も、
送った人も、
ちょっとだけ苦しくなる」
箱は、
すでにレーンの端まで来ていました。
「止めてぺん!」
ときぺんが叫び、
レーンがぎぎっと止まります。
箱が、
小さく揺れました。
「……行きたい」
かすかな声が、聞こえます。
こころんは、そっと近づきました。
「ほんとうに?」
箱は、しばらく黙ってから、
小さく答えます。
「行かなきゃ、
終われない気がする」
こころんは、うなずきました。
「じゃあ、
今じゃない」
三匹が顔を合わせます。
「トライアングルアタック、ぺん」
時間は――
“少し先”。
役割は――
“自分自身”。
状態は――
“まだ途中”。
こころんが、
新しい印を押しました。
「保留便」
箱は、
発送レーンから外され、
静かな場所へ移されます。
箱の角が、
少しだけ、やわらぎました。
「……助かった」
そう言っているようでした。
業務が再開され、
局内に、また「ぺんぺん」の音が戻ります。
ミスは、起きる。
でも、
立ち止まることも、
ココポスの大切な仕事。
こころんは、箱を見送りながら思いました。
送らない勇気も、
立派な配達なのだ。




