気持ちの正体
逃げていた気持ちは、
局内の高い棚の上で、ふわりと止まりました。
白くて、やわらかくて、
でも、近づくと少しだけ痛い。
「……怖がってるぺん」
ようぺんが、小さな声で言いました。
「怒ってるとか、悲しいとかじゃない。
“どうしていいかわからない”気持ちぺん」
ときぺんは、時計を見つめながら首を振ります。
「時間が、決められないぺん。
今すぐ言いたいけど、
言ったら壊れそうで、
だから“そのうち”にもできない」
やくぺんは、箱をぎゅっと抱えました。
「役割も、決まらないぺん。
相手として話したいのか、
自分の気持ちとしてしまっておきたいのか……
どれでもない気がする」
こころんは、棚の下から見上げます。
「……ねえ」
そっと、気持ちに話しかけました。
「急がなくていいよ。
名前をつけなくてもいい」
すると、
気持ちが、ふわっと少し近づきました。
こころんは、ゆっくり続けます。
「ココポスにはね、
『送らない』って選択もあるんだよ」
従業ぺんたちが、はっとします。
「えっ」
「ぺん?」
「気持ちは、
必ず誰かに渡さなきゃいけないものじゃない」
こころんは、箱を指さしました。
「これは、
“今はしまっておきたい”って気持ち」
気持ちが、
ぽとり、と小さくなりました。
白かった色が、
少しだけ、やさしい薄桃色に変わります。
「……わかったぺん」
ようぺんがうなずきます。
「状態が落ち着いてきてる」
ときぺんも、時計を止めました。
「時間指定は……なしぺん。
保管便」
やくぺんは、箱のふたをそっと開きます。
「役割は、
“未来の自分”ぺん」
こころんが、ぺん形を押しました。
「ぺん」
箱は、
今度はちゃんと、収まりました。
棚の奥の、
静かな保管場所へ運ばれていきます。
「届かなくても、
ちゃんと守られる日もある」
こころんは、そう言って微笑みました。
業務は、また静かに動き出します。
さて――
次は、
いつか届けられる気持ちでしょうか。
それとも、
しまっておくだけの気持ちでしょうか。




