ふしぎな箱
その箱は、
朝の入荷台に、いつのまにか置かれていました。
「……あれ?」
こころんは、羽を止めました。
いつもなら、
箱はちゃんと受付台に並び、
受付係の従業ぺんが記録をつけます。
でもその箱には、
宛名も、時間指定も、印もない。
それなのに――
ちゃんと、心の気配だけはするのです。
「ぺん……?」
近づいた瞬間、
箱が、ぽん、と音を立てました。
次の瞬間。
「うわっ、でたぺん!!」
箱のふたが、ぱかっと開き、
ふわっとした何かが飛び出しました。
白くて、あたたかくて、
形が定まらないもの。
それは、
気持ちでした。
「止めてぺん!」
「逃げたぺん!」
局内に、ざわっと空気が走ります。
気持ちは、
床をすべるように動き、
棚の影に隠れ、
天井のほうへふわりと浮かびました。
「……落ち着いて」
こころんは、声を低くして言います。
「これは、壊れた箱じゃない。
気持ちが、あふれすぎただけ」
ときぺんが、時計を押さえながら叫びました。
「時間が定まってないぺん!
『今すぐ』と『まだ』が混ざってる!」
やくぺんは、逃げる気持ちを追いながら言います。
「役割もぐちゃぐちゃぺん!
言いたい気持ちと、言っちゃだめな気持ちが一緒ぺん!」
ようぺんは、そっと床に羽をつきました。
「状態が……高ぶりすぎてるぺん。
このままだと、どこにも届かない」
気持ちは、
きらきらしながら、局内をぐるぐる回っています。
従業ぺんたちは、
どうしていいかわからず立ち止まりました。
そのとき、こころんは気づきます。
「……箱の大きさ」
空っぽになった箱は、
さっきより、少し大きくなっていました。
「この気持ち、
大きくなりすぎて、箱に収まらなくなったんだ」
こころんは、深く息を吸います。
「ときぺん。時間を決めよう」
「やくぺん。受け取る“役割”を一つに」
「ようぺん。今の状態を落ち着かせて」
三匹は、うなずきました。
「トライアングルアタック、準備ぺん!」
こころんが、そっと呼びかけます。
「だいじょうぶ。
ちゃんと、届けてあげるから」
逃げていた気持ちが、
ふっと動きを止めました。
さて――
この箱は、
どこへ向かうのでしょうか。




