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はやすぎる箱

その箱は、朝いちばんに届いた。


まだ局内がひんやりしていて、

ぺんぺん体操の途中だったころだ。


「局長!」

「速達です!」


従業ぺんが抱えていた箱には、

赤い帯と、くっきりした印。



〈即日・至急〉



——速達だ。



「ずいぶん急いでるね」


こころんが箱に手を添えた瞬間、

箱が、ぶるっと震えた。


……軽い。

いや、軽すぎる。


「……あれ?」


通常、速達の箱は重い。

気持ちがはっきりしていて、

“今すぐ伝えたい”強さがあるからだ。


でもこの箱は、

急いでいるわりに、中身が定まっていない。


「時間課に回しますか?」

「うん、まずはそこだね」


時間課の窓口では、

三つ子のひとり、ときぺんが待っていた。


「ぺんぺん。速達だね」

「うん。でも、ちょっと変なの」


箱を受け取った瞬間、

ときぺんの目が細くなる。


「……これ、“今”じゃない」


「え?」


箱が、

ときぺんの手の中で

びよん、と一瞬だけ膨らんだ。


そして、すぐにしぼむ。


「急ぎすぎてる」

「気持ちが、追いついてない」


こころんは、箱を見つめた。



赤い帯。

強い指定。

でも中にあるのは——


迷いの途中の心。


「でも、速達だよ?」

「今すぐって、書いてある」


従業ぺんの声は、少し不安そうだ。


こころんも、迷った。


速達は、原則最優先。

時間指定の箱は、止めてはいけない。


——でも。


箱が、また震えた。


今度は、

ぎゅっと縮こまるように。


「……保留にします」


その言葉に、局内がざわっとする。


「局長?」

「速達ですよ?」


こころんは、深呼吸をして言った。


「これは、

 “今すぐ届けたい気持ち”じゃなくて

 “今すぐ楽になりたい気持ち”だと思う」


時間課の棚に、

赤帯のまま、保留印が押される。


ときぺんが、静かにうなずいた。


「ぺん。

 時間が追いつくまで、待とう」



その日の午後。


箱は、少しずつ重くなっていた。


赤い帯はそのままだけど、

中の気持ちは、

ちゃんと形を作りはじめている。


こころんは、箱にそっと声をかけた。


「急がなくていい。

 届くべき“今”は、ちゃんと来るよ」


箱は、震えなかった。


速達でも、

すぐ送らないほうがいい心がある。


ココポスは、

“早さ”よりも

“ちゃんと届くこと”を大事にする。


さて——

この箱は、いつ発送されるのだろう?


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