保安官
酒場での騒動はたちまち広まった。
早撃ちの流れ者に羨望の眼差しを向ける移住者。
そして銃の腕前に萎縮する開拓民。
何より身なりや言葉遣い、若さといった点で一目置かれ始めていた。そんなウッズ本人は新しく出来た小屋に満足して野良仕事に明け暮れていた。
グレゴリーも最近は大人しい。
このまま移住者の数が増えていけば少数派は開拓民側になり、こちらの意見も通りやすくなる筈だ。
そんな時に遠い街から保安官が派遣された。
「保安官のケーリーだ。短い間だが宜しく頼む!」
街の広場の前で皆々に自己紹介と目的を話し始めた。
「私の派遣期間は一カ月程だ。街の治安•運営に問題が無いかの確認をする。ようはパトロールだ!」
移住者、開拓民含めて適当に聞いている。
「それから‥政府より新たな法律が定められた」
この発言で周りがザワザワし始めた。
「治安維持及び銃器取り扱いについての新項目だ」
一つ‥軍人•保安官•郵便局員を除く全ての国民は拳銃の所持•使用を禁ずる。
一つ‥銃器による私的な制裁•脅迫は禁固刑に処する。
一つ‥拳銃以外の威力過剰な銃器の取り扱いを禁ずる。
これはかなりの衝撃だ。
事実上、決闘や暗殺は不可能になった。
狩猟用のライフルや散弾銃は隠密性が低い上に用途が限られているのでそこは問題無いらしい。
「法律の執行は来年度からだ。それまではこうして保安官が定期的に来る手筈になっている。今のうちに銃を金に変えるのは自由だ。とにかく死人が出るのを防ぎたい」
解散後はかなりのざわつきだった。
移住者の多くは安堵していたが、開拓民は何やら良からぬ事を考えている。
「落ち着きなお前たち‥」
グレゴリーはヒソヒソ声で話し始めた。
「つまりは今年中はまだハジキが使える‥それに保安官はいつまでもいるわけじゃね〜‥分かるだろ?」
「何が言いたいんです、ボス?」
「オメェらの鬱憤を晴らしてやりて〜と考えていたとこだ‥」
「じぁあ‥アレも使うんで?」
「勿論だ‥苦労を知らねー移住者に思い知らせてやる!」
一方、ウォルターの店には使わない猟銃や拳銃を売りに来る者が数名来ていた。
「保安官も来てるし、来年まで僅かだ。心配するより酒が飲みてえな!」
「俺は女房が妊娠しているからな。ハジキなんかより貯金が大事だ」
グレゴリーの悪巧みを他所に平和ボケ真っしぐらだ。
無理もない。これまで虐めに耐えて来てからの新法制定だ。浮かれて先が見えていない。
「にしてもウッズさんはどうするのかね〜?」
「あー‥どうなるんだろ?」
ウォルターと客がぼんやり考える。




