掟破り
「それじゃあ出発しようか?」
「えぇあなた‥エリーは落ちないようにね」
「おじちゃんの膝の上が良い〜!」
「すまんなウッズ。娘を頼むよ」
いつもの馬ではなく買い出し用の馬車だ。
移動するのに馬は必需品だ。値段も銃や工芸品より高いがレンタルも可能だ。
移住者でありながら所持しているのは、ジョンが汗水垂らしたお陰に違いない。
「おはようフォードさん方。ワシらも街へ行くよ!」
家族総出での馬車の数が増えていく。
いつのまにかパレードの行進のようになっていく。
グレゴリー一味も簡単には手が出せない筈だ。
「どうどう‥着いたぞ〜」
皆々が馬車の紐を停留所に引っ掛けて下馬する。
酒場の手下共は驚きと苛立ちを隠せない。
「なんだアイツら?調子こきやがって!」
「女を連れてやがる‥ケッ!クソが!」
「暫く様子見だな‥」
いつもより酒を強く煽っている。
「いつもは広く感じるウォルターの店も狭いな」
「あぁ‥だが安心して買えるな!」
「間違いない!」
移住者組の目的はほぼ被っているので必然的に同じエリアに集まっている。一部は床屋や食堂でリラックスしているがいずれ合流する流れだ。
「ねぇおじちゃん!ジュース欲しい!」
「こらエリー‥ワガママ言わないの!」
「だって〜!」
「構わないよ。おじさんが取って来よう」
ここで一つ問題がある。
在庫管理の問題で飲料は酒場に一纏めにされている事だ。茶葉や缶詰などは日用品コーナーにあるのだが、瓶に入っている物は違う。
「ウッズさん‥気をつけてください‥」
「心配要らんよ‥」
どうも美人のマリーに見つめられると調子が狂う。
だが手を出す訳にはいかない。
にやけ面をジョンに見られてなくて良かった。
いざ酒場へ‥
「おやおや?‥誰かと思えば豚野郎じゃないか?」
「ギヘヘヘ!“盾”がなけりゃ何も出来ないねぇ〜」
「‥」
無視してマスターに注文をする。
「レモンジュースをくれ‥」
その瞬間、下卑た笑いがこだました。
「ブハハ!!聞いたか今の!!」
「傑作だ!!お前センスあるなぁ!!」
「ほらほら〜ジュースでちゅよ〜!!」
手下共が嘲笑うが我慢だ。
コインをカウンターに乱雑に投げて後にしようとした時だった‥
「ガキも女もいね〜からなぁ〜!やっちまうか?」
「そいつは良い!」
酒臭い悪党どもがウッズに向けて銃を抜いた。
動きがかなりモッサリしている。
照準がウッズの胴体を捉えた瞬間!
ズバーン!!
銃声が響いた‥
「痛っ〜〜!!クソが〜〜!!」
ハンドエジェクターを床にゴトリを落とした一味。
目の前には腰溜めでブラックホークを構えるウッズの姿があった。
「なっ!!テメェ!掟を破ったな!?」
「お互い様だろう‥先に貴様らが抜いた‥マスターも目の前で見ていただろう?」
「ひっ‥ヒェッ!‥私は知らん!!」
「そうかい‥ジュースは貰っていく」
瓶を握って立ち去ろうとした時、髭面のジジイがやって来た。
「待ちな若いの。ワシと取引しないか?」
大悪党のお出ましだ。
「今更なんだ?」
「簡単な事だ。ジョンの所で世話になってるんだろう?‥ワシなら倍の値段で雇うんだがな。どうだ?」
「今のところ満足している」
グレゴリーは一瞬考えた表情をしてからニタニタ笑い出した。
「お前さんも隅に置けないな〜‥狙いは美人の女房だろ?」
周りの手下も笑っている。
そのセリフに酷く怒りを覚えた。
「薄汚いジジイめ!はやく冥土に行きやがれ!!」
普段使わない悪口をぶつけた。
「テメェただじゃ済まねーぞ!お前たち!!やれ!!」
ガンベルトの革が擦れる音を感じ取った。
こちらも再び抜くつもりだ。
「おい!!やめろ!死人が出るぞ!!」
「ウッズ!手を引いてくれ!!」
騒ぎを聞きつけた店主のウォルターとジョンが酒場にやって来た。雑貨コーナーから様子を見ていたらしい。
「命拾いしたな!若いの‥」
「お前もな‥」
各々がガンベルトの激鉄に留め具をはめる。
それから解散となった。
「おじちゃん強いんだね〜!!」
「君は真似しちゃ駄目だよ‥はい、ジュース‥」
「ウッズさん‥あまり無理しないで下さい。お願いします‥」
「マリーと同じだ。アンタには命を大事にしてもらいたいな!」
「分かった。善処する」
こうして騒ぎは治った。




