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<1月書籍発売中!>純粋培養すぎる聖女の逆行~闇堕ちしかけたけど死んだ仲間に会えて幸せなので今度は尊い彼らを最善最優先で…って思ったのになんで追いかけてくるんですか?!~  作者: 天壱
第三章 聖女の知らない世界

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33.聖女にとっても大ごと。


「にっニーロがってどういうことですか?!剣闘士引退って……皇帝陛下にもこうしてご許可いただけたのに!!」

「どうにもなにも、お前のせいだろ」


私の?!とまた大きな声が出てしまう。どうしよう本当にわけがわからない!!

腕を組んで頭を傾けるアクセルに意味を尋ねても「あんだけ煽っておいて」と言われてもう頭がこんがらがる。とにかく詳しく説明してくださいと、皇帝陛下からの書状を服にしまったままアクセルの腕を引いて外に向かった。私が早足でもアクセルは長い足でスタスタと進んでくれる中、面倒そうにだけど説明してくれた。


教皇様に特別室を案内されたアクセルは、そのまま教皇様とお互いに質問をぶつけ合う形で暫く話していたらしい。そして教皇様が出て行ってすぐに私の部屋に向かおうとしてくれた。

すると、部屋の外も窓の向こうもニーロの噂で持ちきりの大騒ぎだった。アクセルも直接聞いたわけではなくて、あくまで人が話しているのを立ち聞きしただけだから、どれも真偽はわからない。ただ、その話をつなぎ合わせて一番多かったのは、ニーロが突然闘技場で引退宣言をしたということだった。

闘技場の関係各所もニーロからの申し出があったことだけは認めていて、ニーロは今も馴染みの酒場で堂々と噂について認めている。


「酒場で聞いたって噂じゃあ「少し公表が速まっただけ」って言ってるし、どう考えてもお前絡みだろ」

「旅の同行はちゃんと断ったじゃないですか!!」

ニーロがいる酒場はお気に入りの店のどれだろうと、記憶を巡らせながら大聖堂内を走り抜ける私はアクセルに声を上げる。もう何年も昔のことだしニーロのお気に入りの酒場って結構その時々で数や場所も変わっていることも多いからどれも確証が持てない。

確かにこの時にニーロが引退したのは旅の同行者になる為しか考えられない。

前回は、皇帝陛下の口から来たる脅威とその為の聖典の旅が公表されたと同時にニーロの引退も告げられた。つまり明日であって今日じゃない!!!でもそれしか理由もあり得ない。ニーロにとって今は大事な時期だし、皇帝陛下に任された使命以外で剣闘士を引退するわけがない。むしろニーロは本当に一番引退しちゃ損になる時期なのに!!!


「!アクセル!!あの、ニーロの居場所とかわかりませんか?」

「できるわけねぇだろ。なんでわかると思ったんだ」

「あっすみませんアクセル、旅で出会った時はいつでも私達の居場所わかってたのでつい……」

追跡魔法で、と。言葉をごにょごにょと続けながらも、確かに今のはアクセル頼り過ぎたと反省する。

旅の間いつの間にか現れては私の命を狙って様子を窺ってたり、逆に助けてくれたりしたアクセルだけど、単に魔法で見えにくいということだけにしてたよね。アクセルって自分の使える魔法のこととかあんまり明かしたがらないし、私も神聖魔法しかわからないからアクセルの魔法の全貌がわかったのは大分後だった。

私の言葉にアクセルは「ぁーーー……」と一音を溢したけれど、ニーロの追跡は難しい。追跡魔法使うにはアクセルの血の付着が条件だから。先ずはニーロがいそうな酒場を探さないとと、大聖堂の出口に辿り着いた時。


「ヴィー!!」


聞き覚えのある声と姿に、思わず目を見張る。まさかのニーロ本人が、大聖堂の正面入り口に立っているところだった。

修道女や兵士達が並んで立っているから、勝手に大聖堂に入らないように阻んでいるところだったのかもしれない。困った表情をしている修道女達も私に振り返っては驚いたように目を丸くする。「聖女様!」と声を上げては私とニーロ、そして……一緒にいるアクセルにも目を丸くして何度も見比べていた。アクセルの存在はもともと秘匿だったし、驚くのも無理もない。

でも、なんでニーロの立ち入りを止められているんだろう。この時間帯ならまだ礼拝堂に祈りに来る人達だって受け入れる時間帯の筈なのに。

修道女達が「いけません」「お部屋にお戻りください」「この方はエルフでしょうか!?」と口々に尋ねる中、私も私で「ニーロ!」」と呼びながら駆け寄れば、ニーロもおおきく私に手を振ってきた。「助かった!」と言うから、もしかして引退も嘘の情報とかで困っているのかなと少し希望を持つ。


「なんか聖女は面会謝絶だとか言われてよ!なあ!噂は聞いたか?!剣闘士引退!!これでもう文句はねぇな?!!」

「文句しかないよ?!!!!」

自身満々にニッカリ笑うニーロの笑顔は眩しいくらい大大大好きだけど、これには私も言い返してしまう。なんで!なんで引退しちゃうの!!!!そんな喜々として言えることじゃないよね?!!

しかも面会謝絶って何?!!私そんなこと言った覚えない!!

修道女達が「教皇様のご指示ですから」と言いながら私を押してきたけれど、アクセルが腕で修道女達も傍にいた兵士も押し除けて助けてくれた。やっぱりこういう時力の強いアクセルは羨ましいくらい格好良い!でも今はニーロだ。

私の叫びに「なんでだよ!」と文句いっぱいに目をつり上げてきたから、私もぐっと首をニーロに伸ばして前のめる。


「剣闘士をがんばってきたのに辞めたら勿体ないって話をしたばかりなのに!!辞めちゃったらこの先どうするの?!」

「だからお前について行くって何度言わせんだよ!辞めたんだからもう後には引けねぇ!!俺はもう付いて行くってとっくに決めてんだよ!!」

だから!!なんで決めちゃうの!!引き返せるのに辞めちゃ駄目でしょ?!!!!!

あれだけ言ったのに!!全然伝わっていなかった!ニーロは昔から真面目で決めたら一直線のところはあったけどこれは絶対おかしい!!ニーロは剣闘士の人生にすっごい悔いあったじゃん!!!せっかく辞めないで良いよって状況になったのになんで辞めちゃうの!しかも逆行前より一日辞めるの早い!!

もう!もう!!と言いたいことがいっぱいあるけど言えないことも多いから、顔だけに熱が回る。絶対鏡を見たら真っ赤だ。ニーロが「なんでそんなに怒るんだよ?!」って言うけどむしろ当たり前だよ!!引退しちゃったら、後から撤回しても新選手としてせっかくのニーロの無敗記録もそこで切れちゃうのに!!


本当にどうすれば良いかわからなくなって泣きたくなる。

せっかく皇帝陛下の書状があるのに、これを見せたらニーロが旅に付いてこないで良いと喜ばせるどころか、絶望させてしまうかもしれない。だってニーロがここまでして付いてきてくれるって言ったのに、私が断ったら本当にニーロどうするの?!皇子に戻るつもりはないって言ってたし、剣闘士をもう一回最初から?!

あんなに何年もかけてがんばったのに、私のせいで結局無敗記録が途絶えてしまった。

考えれば考えるほど、とうとう目が潤んできた。「泣くなよ?!!」ってニーロの慌てる声が聞こえる中、下唇を噛みながら鼻を啜る。ニーロを今度こそ剣闘士として自由に過ごせるようにしたかったのに、…………どうしてこんなに上手くいかないんだろう。

アクセルも、ラウナも、全部。


修道女の短い悲鳴が聞こえて、同時にニーロの顔が目の前に来た。無理矢理修道女から押し入ってきたんだとわかっても、それに何か言葉も今は浮かばない。

衛兵も、ニーロの実力を知ってるからなのか取り押さえに来ない。「なんで泣くんだよ!?そんなに嫌か?!」って言われても、どう私が言ってももうニーロの大事な剣闘士の記録は切れちゃったんだと思うと、何を言っても無駄なんだと罪悪感が沸いて胸が苦しい。


「っ……ニ゛ーロの゛、不敗記録っが……」

「良いだろそんなもん!!どうせ今日を引退試合にするつもりだったんだから!!今日出なくても連続不敗の記録保持者が俺なのは変わらねぇし!!」

ああぁ……ニーロは優しいなぁ。

ぐすぐすと泣きながら、ニーロの優しさが身に染みて余計にこみ上げた。旅に出るまでニーロはこんな風に優しかったんだと思い出して、……優しいニーロにそんな余裕もなくなるくらい追い詰めて苛つかせて見切りを付けられたのが自分だと思い出してまた嫌になる。

だから、だからこそ今度は、ニーロにあんな苦労もかけないで剣闘士として楽しく過ごしてほしかったのに。可能ならニーロと友達でいられるままお別れできたら一番だった。それなのに、ニーロの剣闘士としての輝かしい記録が。

逆行する前は、ニーロには使命の同行という名目があったけれど、このまま私が置いていったら本当にニーロはただ無意味に剣闘士の記録を途絶えさせて、また始めから何年もかけて記録を始めないといけない。…………どうにかできないかな。

闘技場に掛け合ってお願いしたら、引退そのものをなかったことにしてくれないかな。お金をたくさん払えばできるって聞いたことはあるけど、私はそんなにお金は持っていない。ニーロはお金があるし、今からでも説得して一緒に引退取り下げしてもらうようにお願いに行くとか

「そんなのよりマリウスの奴ともう一試合ぐらいしたかったとは思うけどただ試合だけなら別に闘技場じゃなくてもできるしよ!!お前が気にするのはそっちじゃなくてだな……?!」


…………マリウス?


ニーロの出した名前に、ふと記憶が引っかかる。

マリウスって、誰だっけ。なんか知っているような、…………けど、聖典を持ちかえった後にも会った憶えがない。ニーロの友達には大体挨拶に行った筈だし、マリウスって名前には憶えがある筈なのに思い出せない。

ニーロが色々続けて言ってくれるのを耳に通るけれど、頭に通らなくなる。それよりもマリウスって名前が引っかかる。なんでだろう、ニーロ達さえ無事なら良い筈なのに、忘れちゃいけないような。

ニーロが戦うのを楽しみにしていた人ならきっとニーロにとって大事な相手だから、ちゃんと思い出さなきゃいけない。でもニーロの引退試合、私は旅の準備で忙しくて見に行けなかったし……。



『マリウスは俺と同じ剣闘士だ。引退試合の決勝で──』



ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ?!?!!

パチリッとニーロの顔を思い出す。今目の前にいるニーロじゃなくて回帰する前の!!

悔しそうに顔を歪めたニーロの顔と同時に、当時のことが鮮明に頭に蘇る。

瞼がなくなったと、自分でもわかるぐらい大きく見開いて息を飲む。「どうした?」「おい」とニーロやアクセルそれに修道女や兵士達からも呼びかけられるけど、呼吸も仕方もわからないくらい暫くは何もできなく身を強ばらせ続けた。うわっうわあああどうしよう!!ニーロ!!引退しちゃったのに!!!


「あああぁのニーロ……、マリウスってエルサさんって娘さんいる……?」

「?なんだ知ってんのか?まぁ有名な戦士だしな」

確定。

きょとんとした顔のニーロに反して、サーーーーッッと一気に血の気が引いていく。えっと、えっと本当にどうすれば良いんだろう?!

ニーロに今すぐ試合に申し込み直してと言おうかと口が開いて、途中で止まる。駄目だ、それが一番だけどどう説明すれば良いか頭の悪い私にはわからない。でも、でもこのままだとマリウスが!ニーロが……!!


「…………おい聖女。俺を無視すんな」

「あくせる……。……………………。…………!アクセル!!ちょっ、ちょっとアクセル来てください!!」

「ハァ?!」

「闘技場に!!!」

私の肩を掴んでのぞき込んできたアクセルに、息を飲む。そうだアクセルが居た!!と気付いた瞬間に腕を引っ張って走り出す。

ニーロや修道女達にもぶつかったけれど「ごめんなさい!」と大声で謝って走る。ニーロが追いかけてくる声がして、追いつかれちゃっても良いからとにかく走る。日の下を走らせてごめんねアクセル!!!

「おい!」と怒鳴るアクセルに、今は走るのが精一杯で話せない。とにかく!とにかく急がないと!!剣闘士まで辞めさせてしまったニーロをこれ以上苦しまたり絶対しない!!一刻を争う今は、思いついた方法から頼るしかない!


アクセルがいてくれて良かった!と心から思いながら私は全力で闘技場へ向けて走った。

…………そのすぐ後ろにニーロも付いてきていることも覚悟して。


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【1月25日書籍発売!!】

書籍化決定


《コミカライズも決定!!》

皆さんのお陰です本当にありがとうございます!!

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