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14.聖女にとっては絶体絶命


「…………双方合意の元、恥じぬ戦いを……」


サデュット帝国の城は、戦技場がかなりの規模を誇っている。

国の名所が闘技場だから、城内にある戦技場も闘技場ほどではなくてもそれに恥じない構造をしている。皇帝陛下から決闘前の口上が響かされる中、全体が静まり返っているけれどそれでも数え切れない大勢が私達に注目しているのが視線の雨でわかった。


急遽決闘をすることになってしまった私とニーロとラウナだけど、城内の戦技場はもともと城の兵士や討伐隊の訓練所でもあるから、場所を明け渡してくれた彼らが今は客席で立会人としてこちらを見下ろしている。

まだ聖典のことは広められていなくても、聖女対天才魔導師と最強剣闘士の戦いだから皆も興味あるのはわかる、わかるけど!!


─ どうしよう……。


ついカッとなったなぁと、頭が冷めてももう遅い。

目の前ではニーロがお得意の槍を手に準備万端に体操しているし、ラウナもいつでも魔法使えるように身構えてる。開始と同時にもしかして勢い余って私の二週目人生終わっちゃうんじゃないかと思う。モイも隣で心配そうに弱い声で鳴いている。

陛下の口上ができる限り長くなることを祈りながら必死に考える。ニーロ達に怪我をさせたくなくて思わず受けちゃった決闘だけど、そもそも私には勝てる見込みがない。

二人がすごく強いということもあるけれど、それ以前に私が弱すぎる。


もともと、旅だってずっと二人におんぶに抱っこでなんとか生き延びてきた私だ。当然、そんな二人に勝てるわけがない。

だって私は神聖魔法を習得するのにばっかり必死で、今までたったの一度もニーロから戦闘技術を教わったこともなければ、ラウナから元素魔法を教わったこともない。初期魔法すら成功したことがない。唯一の取り柄は神聖魔法だ。

神聖魔法だけ勉強した。頑張った。神聖魔法が記録されている魔導書を頑張って全部解読した。旅ゆく先でも聖典のついでに各所に封印されている神聖魔法の痕跡や遺跡だって仲間達の協力のお陰で見つけては魔導書の理解を深めることができて習得に繋がった。

神聖魔法〝だけ〟で言えば、誰よりも沢山使える自信はある。仲間のお陰で神域魔法だって使えるようになれたんだから。


ただ、神聖魔法には決定的な弱点がある。


実際は弱点と言って良いのかわからないけれど、少なくとも今の私にはすっごい弱点で欠点が。

どれくらいかと言えば、あの口だけ教皇様が私に耳打ちしては念を押した解決策が「開始と同時に降参しなさい」だったくらい。

聖典を手に入れる手段の私に怪我されるのも困るから取りあえず無傷にしたいのはわかるけれど、全然何の解決にもならないしラウナもニーロも陛下も納得してくれるわけもない。

それでも欺されてた頃の私なら「お優しい教皇様が心配してくれてる」って思っちゃったんだろうなってわかるのがもう恥ずかしい。皇帝陛下も早く目を覚ましてくれればこんなことには


「始めよ!!」


…………しまった。皇帝陛下の響かされる号令で、ハッと目が冷める。解決方法を探していた筈なのについ現実逃避に耽っていた。

開始と同時にニーロが飛び出してきて、逃げようと身体が動くけどそれも一歩二歩だった。「いっくぞ!」と元気いっぱいの声で鋭い蹴りが飛んできて、届く前にと思わず結界を展開する。そして蹴りはニーロごと


結界を()()()()私の足下に突き刺さった。


ダガァンッ!って丈夫な地面が砕けた音に心臓ごと身体が跳ねた。

見れば、ニーロの足が地面に突き刺さっている。あと十センチもずれていれば私の足が粉粉に砕けていた。

ヒッ!!と喉を鳴らしながらまた後ずさりする。どうしよう、もう足が震えてる。ニーロの足は地面突き破って今もゆっくりと抜かれて無傷なのに!

観衆の兵士達は「流石剣闘士ニーロ!」って盛り上がるのが羨ましい!!私もどうせならそこに立ってニーロの活躍みてたいよ!!


「…………おいヴィー、まさか、何も考えてねぇのか?」

こそっと、周りには聞こえない小さい声が掛けられて顔を上げる。

ニーロがすごい困った顔をして私を見てた。ニーロならもう既に五回は連蹴してるのに、今はゆっくり足を引き抜いて槍も向けずに身構えるだけだった。

絶対いまの蹴りもわざと避けてくれたんだと確信する。ニーロはいつだって弱い者いじめするような子じゃないから!!

口は笑っているけど、顔色が若干青いニーロの表情がすっっっごい懐かしくてうっかり恐怖ではなく別の意味で泣きそうになった。うわあああニーロのその顔好きだったなぁあ!!


むぐぐっと唇を絞る私に、ニーロは「マジかよ……」と呟いてまた顔がヒクついた。あああごめんねごめんなさい本当に考えてない!!

とにかく謝ろうと「ご」から言い出したところで、ニーロとは違う気配に気付く。ちょうどニーロが壁になって見えない方向に顔を傾げ、息を飲む。

「ならさっさと降参を」


「ッニーロ危ない!!」


言いながら、もう一度結界を使う。

ニーロは「え?なっ?!」って言いながら背後を振り返るまでしてからだったけれど、羨ましいくらいの運動神経でそのまま跳ねて回避した。…………避けなくてもニーロごと結界張ったからじっとしてくれていれば良かったのに。

結界にぶつかった水の固まりが四方に散って、避けた後のニーロも濡れた。


ラウナの元素魔法の一つ、水魔法だ。

私一人くらいなら包めちゃう大きさの水の固まりが宙を走って突進してきたところだった。空中にぷかぷか浮かぶ水は綺麗だし可愛いけど、ぶつかるだけでも凄い威力で、捕まったら身動き取れないし最悪窒息死させられるから結構怖い攻撃だ。

一度散らばった水は、地面に吸い込まれきらなかった分がまた空中に集まりだす。あああラウナはすごいなぁ!そうだねこの時から水が散開しても収集できるほど操れたんだよね!


「ッおい女魔導師!!俺まで巻き込むな!!」

「アンタがいつまで経っても退かないからでしょ?!助けてもらってんじゃないわよ!どっちの味方なのよ!!」

うわあああああラウナとニーロの生喧嘩!!すっごい久々!

相変わらずと言って良いのかわからないけど、毎日見ていた筈の二人の光景にまた泣きそうになってきた。

ラウナに向き治るニーロが喧嘩をしながら、背中に隠した手を動かしてるのに気付く。

私に向け、虫を払うような動作だった。「逃げろ」って言ってるのがわかって、先に鼻を啜った。時間を稼いでくれている間にばたばたと遅い足で戦技場の奥まで走る。

ニーロ!!ごめんねもう私がニーロ相手に勝負にならないのわかったね!!?


幼なじみだし、私が弱いのも神聖魔法しかないのもニーロは知ってる。

もしかして短期間でちょっとは強くなったとか期待してくれたのか、そして今ここで私が逃げても勝敗が変わらなければ良いと思ってくれたのか!どっちにしても早速ニーロに迷惑かけていることが嫌になる。


神聖魔法は、魔物や魔族に特化した魔法。

魔物を浄化する為だけに考えられた魔法で、他の派生も全て神聖魔法は〝神の慈悲と奇蹟〟が元になっている。だから回復魔法は使えるし自分だけなら壁も通り抜けられるし神の領域媒介で転移することもできるし結界は魔物だけを排除して人間は影響を受けない。でも本当にそれ〝だけ〟で、つまり神聖魔法は魔物は殺すけれど



〝人〟は害さない。



教皇様も神官も皆、神聖魔法は神様の魔法だから最強だって言ってたし、実際そう信じてたんだと思う。

浄化の国とも呼ばれる我が国では崇高視されてる神聖魔法の、それが現実だと思い知ったのはそれこそ神聖魔法をようやく神域まで習得し始めた頃だった。


いつかは私も神聖魔法で皆の戦力になれると思って夢見たけれど、結局神聖魔法はどこまでも対人や災害には無力で、人にも効果を与えるのは味方に対する補助とか癒しとか浄化効果や防御くらいだった。

神聖魔法には人間への攻撃手段がない。人間や生物相手に攻撃効果がない。

今使った高位結界は、魔物や魔法攻撃もある程度弾くけど、やっぱりニーロみたいな物理攻撃は防げない。子どもが投げた石だって貫通する。つまりラウナの攻撃は防げても攻撃する手段はないし、ニーロ相手に至っては逃げるしかない!!


バシュンッバシュンッ!と走っている間もラウナの水魔法が結界に弾かれてはまた再編成されてぶつかってくる。

逃げる私は壁に突き当たり、背中を預けて呼吸を整えた。ほんの少し走っただけなのにもう息が苦しくて、身体は年齢と一緒で昔の状態なんだってすごくわかる。

ようやく向き直れば、追ってきていたのは水魔法だけでニーロとラウナは一歩も動いていなかった。こっちに向いたまま、表情までは見えないくらい距離が開いている。でも絶対ニーロは困った顔しているんだろうなあああとわかる。本当本当ごめんねニーロ!!


水の固まりが、突然ぼちゃんと地面に落ちた。

そのまま再生しないから、ラウナが私に効かないと判断したらしい。つまりはと、私は結界を張ったまま身構える。ラウナの元素魔法がまた姿も形も分子から変える。ラウナの中心を纏うように真っ赤な炎が生み出されては大きく膨らみだした。


「ッ煉瓦をも貫く火力です!!防げないならば降参してください!!」

ああああああラウナ格好良い!!!好き!!!!!

ラウナはわりと敵相手なら欺すのも裏をかくのもするのに、子どもには優しかったもんね!!こんな時にも警告してくれるラウナはやっぱり優しい!

「おい!やり過ぎだろ!」って心配してくれるニーロに申し訳ないと思いながらも、もしかしたらここで防ぎきったらラウナにだけでも勝ったことにならないかなとか甘いことを考える。

ぐるぐるとドラゴンのように渦を巻いて空に上がっていく炎を眺めながら、結界に意識を注ぐ。ラウナが本気なら私も本気で結界をしないといけない。


私の意思が伝わったのか、とうとうラウナから炎が放たれる。同時に周囲から悲鳴や大声が聞こえ、……ハッとする。

私の背後にも観衆の兵士達が大勢いる!ただの高位魔法の結界じゃ駄目だった!!うっかりでもラウナの魔法が背後に逸れたら死人が出るしラウナの責任になる!!!

向かってくる炎を前に、慌てて結界を広げる。高位魔法ではなく、広範囲の最高位魔法の結界に。

シャボン玉みたいに大きく膨らんだ結界が、ぶつかった瞬間無事炎を打ち消し、そのまま戦技場全体まで広がった。


「ッあれ?!嘘……魔法が!!」

火を消されたラウナが、次にまた別の魔法を使おうと構えたところで悲鳴が上がった。

戦技場ごと結界で包んだからラウナも攻撃魔法が全部無効化……というよりも使ってもすぐに消滅する。ごめんなさいラウナ!

魔法を防いだり弾いたりする結界なら神聖魔法以外の魔法でもあるけれど、結界内の魔法を封じるような魔法は私が知る限り神聖魔法か闇魔法くらいだ。ラウナが驚くのも無理はない。


この頃のラウナはまだ純粋な魔法が好きで、魔導具とかは持っていないからこれで暫くは時間を稼げる。

今も使える魔法はといくつも魔法を使っては消えて、とうとう最高位魔法を使おうと詠唱まで始めている。それでも頭の良いラウナなら次に何をしてくるかわからないから注意しつつ、私は次を考える。

偶然だけど、結果としてラウナが暫く攻撃してこなくなった。あとはニーロ、ニーロだけど……本当にニーロと決着を付ける方法はない。


ニーロも、ラウナが魔法を使えなくなったことに首を捻りながら、私にも戸惑いの眼差しを向けている。一撃で私に勝てちゃうからこそどうすれば良いのかわからないのだろう。私だってわかんないけど!!

周囲の視線を気にしながら頭を掻いて歩み寄ってくるニーロに、これ以上逃げ場もなく追い詰められる。結界もニーロを弾けないし、壁抜けだって人は通り抜けられない。ニーロの攻撃を防ぐ方法が私にはない。


「おいヴィー、もう降参しろ。女魔導師の魔法封じたんだし、引き分けで良いだろ?」

近付いてきたニーロが、また声を抑えながら呼びかけてきた。本当、本当ニーロは優しいね!!?

ここで私を蹴飛ばしたら勝ちなのに、降参の時間もくれるニーロに肩が強ばりながら泣きそうになる。たしかに引き分けなら良いかな?良いよね?!ラウナはまだ本領全然発揮してないけど!!実力のラウナになら絶対私が負けるけど!!

もし、ラウナが今身体強化や補強魔法を自分に施して私に殴りかかってきたらそこで負ける。神聖魔法の結界はあくまで害ある魔の浄化だから、味方に付与するような魔法や防御魔法までは阻めない。

今だっていつラウナがその魔法を自分に使って気付くか心臓がヒヤヒヤしてる。


ニーロが降参の機会と、ラウナが詠唱魔法に夢中になっている今しか無事で済む機会はないかもしれない。

ニーロとラウナが傷付け合うのは回避できたし、引き分けなら勝ったにも負けたにもならない!私も神聖魔法だけは見せれた!

アクセルを説得だけして一緒に逃亡しちゃえば良い!この決闘だってもともと希望したのはラウナの方でそのラウナが攻撃方法に気付く前に降参で強制終了するのもきっと立派な戦術!の筈!!

息を胸まで吸い上げ「降参します」の言葉を頭で三回唱えてから



「俺らの同行さえ認めれば全部丸く収まんだから」



「……………………」

だめ。

ニーロの言葉に、放とうとしたものがそのまま喉の奥へと転がり落ちた。

口を中途半端に開いたまま固まって、ニーロを見つめ返す。ああそうだ私ったら何考えてたんだろう。こんなところで諦める程度の覚悟じゃない!

絶対に!たった一つでも二人が同行する可能性は潰さないといけないんだ!


今度こそニーロもラウナも巻き込まない。

ラウナは魔道研究を毎日思い切り楽しんで、ニーロも剣闘士としての人生を謳歌する。私のことなんか忘れて自分の人生を楽しんで長生きして欲しい。

ニーロだって今は優しいしこんなに親しげに話してくれるけど、旅が始まったらすぐに後悔する。私みたいなお荷物のせいで毎日怒ってピリピリした毎日できっと嫌な気分になってた。

「エンジェラ」の名前を与えられた後もずっと唯一私を昔のままの呼び名で呼び続けてくれたニーロも、任命されてから「聖女」と呼んで、私達を護る為に厳しくなって、毎日責任を負って気の休まる日もなくなる。

ニーロに昔みたいに仲良くして欲しいとも思ったけど、何より今みたいに自由で明るいニーロでいて欲しい。最期には私達に頼ることも打ち明けることもできないで、一人で無理して死んじゃうニーロなんてもう



『なぁ聖女。…………いつもの、頼む』



「おいヴィー?まさか戦る気か??嘘だろ!?」

……頭に浮かんだのは、今目の前に慌てて身構える友達とはまるで別人の、一番思い出したくない姿で。

苦しんで苦しんで苦しんで苦しんで、……最後に全部を終わらせるのを自分で決めた笑顔だった。血と嘔吐物で汚れて顔色も血の通わない蒼白で、無理に開いた目の焦点だっておかしくて声も擦れてた。

ニーロとお話できるのが最後になるのが嫌で嫌で使いたくなかったけれど、ニーロもラウナもアクセルも望んだから泣きながら使った魔法だ。

ああ使いたくないな、と。指を組みながら思う。

もう、この魔法はニーロが死んじゃった日に二度と使えないと思った。使うと絶対思い出すから。


それでも、今はこれしかない。今度はニーロとラウナを守る為に。


詠唱も不要に、それは展開できた。

たかが中級魔法を戦技場内を範囲に展開させ、柔らかな風がふわりと足下から吹く。一度集中の為に瞑った目を再び開けば、ニーロがぐらりと大きく揺れたところだった。

ぱっちり開いていた瞼が沈み、真横にふらりと倒れ込もうとするニーロに慌てて手を伸ばす。届いても、ニーロの体重を支えられるわけもなくそのまま私も一緒に地面に倒れた。

横向きに倒れたニーロの頭に両手を伸ばしたまま、私自身は身体正面がばったりと地面についた。両手で庇えたつもりでもやっぱり心配で、そのまま回復魔法もかける。

顔だけ上げて見回せば、ラウナも地面に倒れているのが遠目で見えた。ああ良かった、やっぱり効果があった。

体勢を起こして、ニーロの頭から両手をそっと引き抜く。

大きく胸を膨らませて口を開けるニーロからははっきりと寝息が聞こえた。血色の良い肌と柔らかな表情に、急にまたこみ上げる。…………嗚呼。




生きてるなぁ……。




「……っ……っっ………」

ニーロの羨ましいくらい綺麗な金色の前髪を撫でながら、目の奥が熱くなってすぐに溢れた。

唇をぎゅっと噛んでも駄目で、ずずっと鼻を啜る。声を我慢しようとすれば肩が震えて、もっと駄目になる。視界が滲んじゃう中、それでもニーロの寝顔から目が離せない。

まさか、この魔法をまた仲間に使う日が来るなんて思わなかったなぁ。


安眠魔法(ラウハリネン・ウニ)

神聖魔法は、人を害せない。

この魔法は敵に攻撃する為じゃない、〝味方〟対象の魔法だ。その証拠に敵には今まで何度やっても効果はなかった。

でも、二人にはちゃんと使えるよね。旅でただのお荷物だった時に使っても効果があったのと同じように、私にとっては今も二人は仲間だもん。

この魔法は仲間達には、ちょっとは役に立った。ラウナは旅の最初の頃は野宿になれなかった時もこれですぐに眠れたし、……病気になったニーロが眠れなくなった時も、すぐだった。


ニーロは旅の間誰よりもずっとずっと無理をして、旅の途中で病になってそれをずっとずっっと隠して平気なふりをして、私達が気づけた時にはもう遅かった。

自分の意思で起きることも出来なくなるほど苦しんで、聖典の旅に荷物になるのは嫌だと言って〝最期〟も自分で決めた。

あの時にこんな魔法じゃなくて最高位の回復魔法も使えたらニーロも死なないで済んだのに。……ごめんね、本当にごめんなさいニーロ。



「今度はっ……ちゃんと、皆守るからね」



寝息を立てる仲間に、言葉にして約束する。

役立たずで足手まといで弱虫で泣き虫だった上に神聖魔法も未熟だった当時の私には、死んじゃうニーロに嘘でもそんなこと言えなかった。


皇帝陛下の声で、勝者として私の名が響かされてから目を拭う。

勝利の歓声の中、ニーロを地面に寝かせた私は急いでラウナの元へと向かった。


明日11時も更新いたします

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