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欲しがりの妹? でしたらこちらにも考えがありましてよ!

異世界転生もの書きたいな~ でも恋愛もの苦手だし~ って思っていたら、

欲しがりな妹ものも人気なのでそちらを書いてみました。


世界観は適当です。気軽にどうぞ♪

「お姉さまそれわたくしに下さる?」


 まんまるな瞳が見つめてくる。

 妹のヴィオレッタだ。


(あー異世界転生ってやつね)


 私、ベルタは前世の記憶を思い出していた。



(こんな家族本当にあるのか)


 数日間は記憶の整理であたふたしていたけど、もう落ち着いている。

 人間の順応力ってすごい。


 ベルタはまーまー良い家のご令嬢。

 しかし随分と殺風景な部屋に住んでいる。


 理由はドレスも宝石も化粧道具もかわいい雑貨も全部、もらうそばから妹に奪われるから。


(これはまた徹底してる)


 前世にも妹がいたけれどここまでひどくなかった。

 彼女が欲しがりだったのは小学生くらいまで。


 十代後半にもなったら姉と自分は違うと自覚してほぼ何も取られなくなった。


 十六にもなっても続けているヴィオレッタが異常なのだ。

 両親はときどきはしかっているが、いつもこまった顔で妹の我がままを聞いている。


(これは私が教育しないと)


 私はニヤリと笑った。




「ねえねえお母様、ドレスを新調したいのだけれど良いかしら」

 まずは親におねだり。

 必要な物をそろえないと。


「あら‥そうね‥良いのだけど‥」

 お母様は言いよどむ。


 そりゃあ作ったそばから盗られるからね。ちゅうちょするよね。

 今まではしょうがないからお母様が若かった時の古いドレスでパーティーに出ていたのだ。


「 後‥宝石が何もなくて。ブローチくらいは欲しいの。仕立て屋と一緒に職人も呼んで下さる? デザインを相談したいわ」


 どちらもすぐに許可が下りる。そこまで長女をないがしろにしているわけじゃないみたいでホッとする。

 

 すぐに来てくれた職人たちに希望するドレスとアクセサリーの注文をした。

 ニマニマ笑いながら。



「ベルタお嬢様に商会から宝飾品が届いております」


 十日後にはもうブローチが届いた。


「まあ、お姉さまに? わたくしにも見せて」


 すかさずヴィオレッタが箱を執事から奪い取る。


「ヴィオレッタ、それはわたくしのなのよ、中身も確認する前に取るなんてひどいわ。返して」

 一応文句は言っといたからね。


「お姉さまみたいに地味な見た目じゃ宝石がかわいそうじゃない。気に入ったらわたくしがもらってあげてよ」


 見るだけじゃなかったんかい、とのつっこみは口にはしない。


「まあヒスイのブローチなのね、キレイな緑色の‥イヤ゛ぁぁ」


 うすい包み紙を取ってブローチの形を確認したとたんに、ヴィオレッタは『それ』を放り投げた。


「まあ、あなたったら自分から取っておいて投げるなんてひどいわ」


 ブローチを華麗にキャッチして私は優雅にほほえんで見せた。


「こんなにかわいらしい‥カエルなのに」


 そう、それはヒスイで作られた精巧なカエルのブローチだったのだ。


 つぶらな瞳と黒い帯はオニキスで細かく再現されている一級品である。


 ベルタの記憶を探ると、ヴィオレッタは虫とか爬虫類とかが大の苦手であることが判明した。


 だからその記憶を利用しただけ。


 もちろんベルタは‥と言うより前世の私は生き物大好きっ子である。


 超リアルカエルを首元に持って行ってベルタは妹にほほえむ。


「ね、わたくしの方が似合うでしょう?」


 ヴィオレッタは「ひぃ!」と声を上げると階段をダッシュで登って行った。

 部屋に閉じこもったようだ。


「しばらくは大人しくするかしら」



 しかしドレスが届いた時も、ベルタより先に箱を開いていた。


「あらあら、学習しないと」


 全身にニシキヘビがとぐろを巻く刺繡がほどこされたドレスを拾いベルタはカラカラ笑う。


 今回も妹は逃げ去った。




 靴にも手袋にも髪留めにもかわいらしい飾りをつけたから、ベルタは無事にダンスパーティーに出席する。


(問題は誰も寄ってこないのよね~)


 壁の花、なんて良い方だ。

 今のベルタには誰も近づかなかった。


 ヴィオレッタは向こうで大勢に囲まれながらこちらをニヤニヤ見てくる。

 仲の良い子たちとベルタの悪口でも言っているんだろう。


 今のベルタにはそれもどうでも良かった。


(早いこと結婚相手見つけてよね)


 そう、あんなのにはさっさと実家から出て行ってもらわないといけない。

 今の家をつげるのは自分しかいない。


 ヴィオレッタがついだりしたら没落まっしぐらだ。

 彼女の浪費癖は両親も分かっている。


 だから親にはしっかり念を押していた。

 あの子のお相手をさっさと探すように。

 私も目を皿のようにしながら年若い男の子たちをチェックだ。



「あの、素敵なドレスですね」


 すぐそばで声がしてベルタはギョッとした。

 いつの間にか年頃のご令息がベルタの隣りに来ていたのだ。

 

「ボ、僕、生物の研究をしているので‥それはミナミマダラニシキヘビですか?それとも、アネッタイニジヘビでしょうか?」


 専門家が来てしまった。


「いえ、蛇にはくわしくないので、ただのイメージで作ってもらったの」

 前世の知識をざっくり伝えただけだから、蛇の刺繍は職人さんの創作物である。


「で、でしたら家に図鑑があるので、今度お貸ししましょうか? その‥刺繍の参考に‥」

「は、はい。それは助かります」


 流れで連絡先を教え合う。


(はっ、いけない、あの子の相手を探さなきゃいけないのに、自分が先につり上げてしまったわ)


 このままでは婚約者を妹に盗られるパターンだ。

 しかし知り合ったばかりのアズール君を無下にもできない。


 まごまごしているとまた別の声が聞こえた。


「アズール、ご令嬢を困らせてはいけないよ」


 ふり返ると、金髪にブルーの瞳のさわやかイケメンが立っていた。


(こいつだ!)

 私の心は高鳴る。


 真剣に金髪君を凝視していると、「で、では僕はこれで」とアズール君は背を向けて立ち去ってしまう。


 心なしかさみしそうに。


「ふふ、奇抜なドレスの令嬢がいると会場でうわさになっていたんだ。よければ一曲踊ってくれないかい?」

「よろこんで」


 アズール君に心残りはあるけれど、もう家の情報はゲットしている。

 今はこちらに集中すべきだ。


「僕はオラニエ家のシトロン。あなたの名は?」


 金髪シトロン様は裕福で有名な家門のご子息だった。

 三男だから爵位はつがないが、もう商会を経営しているやり手らしい。

 なのにまだ婚約者がいないとか。


 ハッキリ言って私だって婿に欲しいレベル。

 もうシトロン様一択だ。


「あらお姉さまのお相手、とても素敵ね」

 曲が終わるタイミングでヴィオレッタが割りこんできた。


 まったくタイミングがいいったらありゃしない。


「シトロン様、こちらわたくしの妹で」

「ヴィオレッタともうしますの。うちの姉と踊っていただいてありがとうございますわぁ姉ったらこんな不気味な趣味をしていますので誰からも声がかからなかったところなんですぅ何かお礼ができないかしら、あら今度の曲はとても楽しそうねぇわたくしたくさんダンスの練習いたしましたの」


 妹の怒涛の攻勢にシトロン様はダンスを申しこまされてしまった。

 まあ作戦通りだけどね。



「どなたか素敵な殿方はいらっしゃった?」

 帰宅の馬車の中で一応私はたずねてみる。


「シトロン様以上の方はいらっしゃらなかったわ」

 ヴィオレッタからは予想通りの答えが返ってきた。


 だからシトロン様の情報を両親に伝え早速お見合いの打診を打つ。

 いちおう姉妹どちらか選んで欲しい体で。


「まあシトロン様あの夜の後からわたくしあなたに会いたくてたまらなかったの」


 お茶会は三人でおこなったけれどさすがヴィオレッタ。

 姉に口をはさませることなどなく二人の世界を築きあげる。


 あざと可愛く社交的な妹と、ドレスの新調が間に合わなくてお古で済ませた私。

 シトロン様が選ぶのがどちらかは分かり切っていた。



「ふふふ♡ お姉さま可哀そう、選んでもらえなくて‥」


 勝手に部屋に入りニヤニヤとなぐさめてくる妹に私はため息をつく。


「シトロン様だってお姉さまよりわたくしが好きなのよ♡ 気味の悪い意地悪なんかしても無駄なんだから! みーんなわたくしが可愛いの。お姉さまじゃなくて!」


 

 何かもう妹に付き合うのが面倒くさい。


「あなた、いつもわたくしの物を欲しがっていましたけれど、本当に欲しい物は何なのかしら」



 キョトンとするヴィオレッタ。

 私は冷たく言い放つ。


「あなたが好きなのは傷つく私を見て優越感にひたることでしょう」


 私が妹を観察して出した結論がそれだった。


 ヴィオレッタの顔が真っ赤になる。

「お‥お姉さまひどいわ! わたくしを貶めたいの!」


「わたくしのドレスも宝石も、取ったら少し身に付けたら後は箱から出さないし。自分で選ぶ時はここからここまで全部って、とても考えている風には見えないし」


 めずらしく妹は言い返さない。


「あなた自分が何を欲しいのか分からないんじゃない? あ、何も好きじゃないのかしら。つまり自分がないのね」


 私は無情にとどめを刺す。

「だから本当に欲しい物は手に入らないのよ、ないんだから」


「ひ‥ひっどーい!」

 ヴィオレッタは子供の様にギャン泣きして部屋を飛び出て行った。


(少しは考えるかしら)




 ヴィオレッタとシトロンの婚約が整い出すのを見計らって、私は両親にアズール君の話を切り出す。


 婚約の打診はすぐに受け入れられた。

 向こうの家も、生き物マニアの息子の縁談には手を焼いていたようだ。


 婿入りもつつがなく了解してもらえる。


「そ、その‥ベルタ嬢は僕で良かったのでしょうか」


 自信なさげにつぶやくアズール君に私は甘酸っぱい気持ちになっちゃう。


「ええ、わたくしも生き物が好きだから‥」


 精神年齢がいくつでも告白は恥ずかしいの!



 そんなこんなで姉妹立て続けで結婚することに。


(とりあえず妹撃退計画は全て成功。私は幸せ。ヴィオは‥どうなんだろう。ま、あの子しだいか)


 ラブラブ新婚生活を満喫しながら私はフウッと息を吐いた。




 後日。

「もうシトロン様って厳しすぎて嫌になりましたわって‥イヤァ゛ァ゛」



 案の定出戻りしてきたヴィオレッタは、玄関をくぐると同時に絶叫を上げた。


 屋敷の内部は、生き物マニアの夫婦によって魔境へと変貌していたのである!


 壁には数々の昆虫の標本がずらりと飾られ、柱のそばにはトカゲや蛇の彫刻が並び、動物の骨格標本が無造作に置かれている。


 そんな家に妹が住めるはずなかった。

 Uターンして逃げ去る。



 彼女がその後二度と屋敷に来ることはなかった。

 両親からの情報では離婚と再婚をくり返し、社交界のうわさになっているとか。

 

 ま、私には関係ない。


 本当に好きなことが何か、分かっていれば幸せなのだ。


 

ドレスや宝石だけじゃなく婚約者まで! ってな展開が予測出来たら

先にできる事はあるんじゃないでしょうか、ってコンセプトです。


ドオタクじゃない普通の姉には難しいかもしれないですけど(笑)



たくさんの方に見てもらってうれしいです。

ポイントありがとうございます!


気がついたら、コメディー部門四半期ランキングの三位に!

こ、これがビギナーズラック⁈

本当にありがとうございます。


囚われの貴公子と白馬の姫もついでに読んでいただけたらうれしいです。

(ずうずうしくてスミマセン)

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― 新着の感想 ―
周りから変な趣味って社交から爪弾きにされないか心配だけど、その内装めっちゃいい!ですね。
〉「あなた、いつもわたくしの物を欲しがっていましたけれど、本当に欲しい物は何なのかしら」 何なのかしら」 この部分重複している文は削除わすれだと思うのですが、誤字報告で全文削除は受け付けてもらえな…
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