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初めてのお仕事㊽

「それは僕の大盾と同じですよ、」横からタンクが口を挟んだ、「最後に敵のボスを、リーダーの大剣で一刀両断するというのが、僕ら《オンリーワン》のスタイルなんですからね!」何やら得意そうに云ってるが、そもそも実績も無いのに、スタイルを語るって・・・しかし、「そうよ、」とティナも続き、「ヨシヒコの一撃でダメなら、アタシたちだって諦めがつくもの!」その信頼の姿こそは美しいものの、理想じゃ敵は倒せないし、今日にも諦める事になってたかも知れないのに・・・


 ヨシヒコ・・・名前を聞いた時点でもしやとは思ってたケド、コイツも何らかの因縁(?)から、勇者やら英雄寄りのスキルを内に眠らせているのだろう、仲間から一身に受ける絶対的な信頼、それこそが正に、全てを貰ったと思っていた俺に、唯一欠けていた致命的なスキルだったのだ。やろうとは思わないが、俺が暴虐の限りを尽くしても屈する事の出来ない相手であろうとも、コイツなら容易く懐に飛び込んで、苦もなく味方に付けてしまう事が出来るのだ、云ってみれば鷹の目が恐れた、ルフィの持つ究極の《人たらし》能力のようなもので、それは努力なんかでどうこうなる物ではなく、完全に先天的な個性なのである。


 光と影、本来ならヨシヒコのような男にこそ、俺が貰った力を与えるべきだったのではなかろうか? ならば召喚なんて面倒な事をしなくても良かっただろうし、あんな厄介なハーレム野郎なんかじゃなく、まっとうで完璧な勇者も出来ていたろうに・・・

《それは考え違いです》と、いきなりコンシェルジュさん。ビックリした、で、どうゆう事?

《神から加護を得た者が、その力に支配されなかった例は、過去に一度もありません。過分な力は、最後には必ず、破滅をもたらすのです》

「なら先代の勇者は? ホラ、モフ耳団長に稽古つけてやったって剣の達人、話聞いた限りじゃ、何か人格者っぽかったじゃん」

《二刀流の勇者は一本の剣で魔王を封じ、しかし平和になった国で自分が疎んじられてるのを悟ると、残る一本の剣で自害されました。騎士団長が現在使っている剣は、勇者から形見として託された物です》

 なんか、まんま侍っぽいな、役目を果たしたら自分も去りなん、と云ったところか・・・虎は死して皮残す、団長さんもまた、重いモンを背負ってるね〜。

「じゃあさ、やがては俺も、皆と同じ・・・あんなハーレム野郎みたいになっちゃうってコト?」さすがにそんな事を聞くと、不安にもなってくる、謙遜ではなく、勇者でさえも避けられない運命なら、とても自分なんかじゃ太刀打ち出来ないんじゃないかと思われたのだ。

《・・・何とも説明しづらいのですが、》と、ここに来てコンシェルジュさんは歯切れが悪い、《ご主人様はどうやら、人間の基準に当てはまらないようでして・・・過去のどの勇者とも違い、欲望に対する価値観が、酷くづれてるように思われます》

 何だか含みタップリの物言いだが、それってワンチャン、ゴブリンが俺の防波堤(?)になってるって事? 実に複雑な心境だ・・・と。

「先生、ねえ、先生ったら!」

 おっと、イケね、今は指導中だったっけ。


「あの剣は俺です、やっと振れるようになったのです!」と桜田淳子も知らないクセに、ヨシヒコが花物語のような事を云ってくる。

「あ、そう、じゃあ『俺』さんってサ、色んな意味で重かったんだね〜、構えてはフラフラ〜、仕舞いには持ち上げるのに『ヨイショ』って云ちゃってるし」

「え! 俺また何か、喋ってましたか!?」自覚があるのか無いのか、それにしてもこの若さで独り言とは・・・先が思いやられると云うか、能天気に見えて、やはりそれなりに悩む所もあるのだろう。


 今よりも上を目指したいから、他人から教えを乞いたいという気持ちの反面、やはりこれまでの支えとなった根っこの部分は、どうしても譲れない、他人から云われたくらいで、変えたくないというこだわりも在るのだろう。ましてやそれが、俺のような風体(?)だったら、俺自身ですら二の足を踏んでる筈だ。これはもう、ただただ信頼関係だけの問題なのだ。

 鳴り物入りの高卒ルーキーが、コーチの指導に疑心暗鬼になって、大した成績も残せないまま消えてしまうパターンに似ている。長嶋落合、そして大谷というのはあくまでも特殊な例であり、同じ事をしたって決して大谷にはなれないのである。自分を知って、最大限の努力を注ぎ込む、成長は結局、地道な作業の積み重ねなのだ。


「だからってサァ、全然扱えてなかったよね、一度見た俺が分かるんだから、仲間の皆ならとっくに気付いてたんじゃないの? リーダーに大剣は合ってないって。ん、誰も忠告とか、アドバイスとかはしなかったの?」

「・・・」皆がてんでに目を反らす。

 ん〜、コリャ気付いてたケド、言い出せなかったってパターンやな、ま、若いし、下手に仲間のこだわりに口出しして、わざわざ不協和音を生むような事もしたくないだろうし。宜しい、だったらなってやろうじゃないの、この俺サマが、不協和音に!


 決して面倒くさいとか、そんないい加減な理由ではなく、俺はヨシヒコに二刀流を勧める事にした。

 前の勇者が亡くなって、ちょうどポジション的にも空いてる事だし、何より日本であれだけのブームを巻き起こしたんだ、それが異世界にまで飛び火したって、何らおかしい理由が無いではないか!

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