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初めてのお仕事㊴

よし、タンクの兄ちゃん、ちょっと来いや!

は、は、はい?

ここに来て、盾を構えろ。

イヤです!

・・・

良いから来いッ!

あんなの無理ですッ!

 タカハシは駄々をこねるタンクを、大盾と全身鎧、そして悲鳴ごとホイサと持ち上げると、3匹のジャイアントバットの前に、チェスのルークのようにポンと立たせた。

「奴は俺の魔法で、ゆっくりとしか動けないから、落ち着いて、よ〜く相手を見るんだぞ」

「は、はい」ようやく幾らか落ち着いたか。

「じゃあ注目、」俺は空中で殆ど静止しているジャイアントバットの頭をポンポン叩いて、「今コイツが、ゆっくりと口を開けようとしてるのは見えますか?」牙の覗いた口元を、視力検査のCのように指差す。

「は、はい、見えます」大盾から恐る恐る、目だけを覗かせて。

「じきにこっから、超音波ってって、当たると動けなくなる魔法みたいなモンを撃って来るから、それをその盾で弾くんだ」

「それって、見えるんですよね?」

「いや、無色透明、無味無臭」って、後半はテキトーだ。

「そんなの無理じゃないですかー!」デカい図体して、いつまで泣き言を・・・

「諦めたら試合・・・」いや、コレはもういいか、「目で見るんじゃない、感じるんだ!」

「ハァ? ちょっと何云ってるか分からない」ヌンチャクで一発、コツンとやってやろうか?

「ええい、グダグダ云わんと、ホレ、そろそろ来るぞッ!」

「ヒイイ〜!」目で見るんじゃないとは云ったものの、本当に目を瞑ってしまうとは・・・

 俺はタンクが握る大盾の持ち手に、自分の手を重ねると、

「何もしなくて良いから、ただ、俺が盾を動かした時に、忘れずにパリィって叫ぶんだぞ、そうしないと経験値を貰えないから」

「は、はい〜」って、エスパー伊東かよ?

 そうこうしてる内に、ジャイアントバットが超音波を発射してきた。【ゴブリンアイ】の透視力で見ると、それは昭和の親父が子供にせがまれて作った、おちょぼ口からポポポと連続で発射される、タバコの煙の輪っかのようだ。

 俺は昔得意だったブロック崩しを思い出すと、超音波を球、盾をラケットに見立てて、それから球の軌道を変える為のテクニック、カットのタイミングをパリィに重ね合わせた。そして超音波の第一波が、大盾の表面に届いた瞬間、カッ、今だッ!

「パリィッ!」やった、ジャストミートだ! 最初の輪っかが後続も巻き込み、増幅された超音波が、まだ口を開けたままのジャイアントバットを襲う。

グ・ギャ・ギャ・ギャ・ギャ・・・魔物の絶叫までもスローテンポである。ゆっくりと落ちて行くジャイアントバットに安心して、仲間たちも駆け付けた。

「タンク、やったな、凄いじゃないか!」リーダーの青年が声を掛ける。

「え、何があったの、アレ、これは僕がやったのかい?」って、しっかり目を瞑っていたからね。

「他に誰が居るんだよ」自分よりレベルアップしただろう仲間の活躍を、まるで我が事のように喜んでいる。それを見ていると、不思議と自分が恥ずかしくなってきてしまうのは何故だろう・・・

 ゆっくりと落下していたジャイアントバットは、地上に落ちる前に姿を消して、カツンと転がる小さな魔石だけになってしまった。クリティカル判定のパリィで、幸運にも一発で即死させる事が出来たのだ。

【ストッピング!】

 俺は残りの2匹に停止魔法を掛けると、タンクのステータスを確認した。ゲゲっ、やっぱレベルが、一気に5まで上がっている! さすがはCランクのモンスターと云ったところか。しかし俺の目当てはそれじゃない、え〜と、スキルスキルはと・・・やった、スキルに【パリィ】が発生してる! 上限も99と、どうやらマックスのようだし、これを磨いていけばどんな攻撃もカウンターで返す、おっとろしータンクへと成長する事だろう。

 未だ目をパチクリさせているタンクに、一通り新しいスキルの説明をしてやる。明確な目標が出来たのでおお喜びだ。

「おじさんは、こんな凄い魔法を、どうやってマスターしたんですか?」憧れの眼差しで訊いて来る、おじさん呼びは、許してやろう。

「そりゃーアレだよ、インドの山奥で修行したり、魔導書を求めて天竺に行ったり・・・」って、仕方ないだろ、まさかここで、『気が付いたらナンカ、神様がくれてたみたいでサ〜、あはは、ラッキー♪ 何ならキミらも、今すぐ勇者パーティーにしてやろうか?』なんて正直に云って、若者たちをドン引きさせる訳にもゆかないしね。それに、気が置けない仲間たちと、戦ったり逃げ回ったり、そんな経験こそが一番楽しいってのも分かってるし。それを奪ってしまうなんてのは、親切じゃなくて余計なお節介、否、それよりも酷い傲慢だろう。この世界に〈たかみな〉が居たら、彼らの前で云って貰うのに・・・『努力は必ず報われる』って!

「そっかあ・・・最後はやっぱり、努力と鍛錬なんですね」勝手に納得してくれるのは有り難いが、何だろう、この燃えたぎるような胸のモヤモヤは・・・

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