初めてのお仕事㊲
「誰か、誰かーっ!」
とダンジョンの中心で叫んでいる青年の背後に近付くと、
「大丈夫だ、俺が診てやろう」
「ひゃっ!」振り返って驚かれるのも慣れたもの、「す、すみません、魔物と勘違いしちゃって・・・」言い訳が更に悲しくさせるって・・・なかなかにレアだよね。いや、今は一刻を!
「コリャ酷い」魔法使いらしい黒い衣装の娘は、腹に大穴が開いて虫の息だ。「ちょ、コレ、腸がチョー見えちゃってるんですケドー!」
「・・・」
しまった、いつもの癖で、こんな時でも無駄口を叩いてしまう、潤んだジト目で、正面から睨まれるのって堪らない。コホン、では・・・
『痛いの痛いの〜、』少女の腹の上で適当に手を動かし、ギュッと〈何か〉を捕まえる仕草、そして、『飛んでけーッ!!』の掛け声と共に、俺すら知らない〈何か〉を、ポイッと遠くに投げ捨てる。
「うぎゃーっ!?」
ん? なんか遠くで聞こえたような・・・気のせいか。
「傷が塞がってる・・・」青年がうわ言のように呟いた、「奇跡だ、治ってる!」
「う、う〜ん、アタシ、いったい何を・・・キャッ!」
はい〜、早くも2度目の悲鳴、頂戴いたしました〜♪
「心配しなくて良いよ、」青年は申し訳なさそうに、俺に目顔で謝ると、「この人がティナを助けてくれたんだ、見た事もない、スゴい魔法でね!」って、俺も初めてだし。
「え、あ、アタシったら・・・」顔を赤くしてペコリと頭を下げる、そして腹に大きく穴の開いた服を見ると、「傷が無いっ!」とひときわ大きく驚いて、「キャッ!」と再び、今度は俺の顔に驚いたんじゃないよ、破れた服から、おヘソが見えてたんで、恥ずかしくって上げた悲鳴だよ、フンスカ!
どうしてこうなった?
眼の前で垂れる5つの頭、お願いします、俺たちと一緒に、ダンジョンに潜って下さいっ!!!!!
ほうぼうに散って助けを求めに行っていた仲間たちが戻ると、まず俺を見て驚き、続いて回復した仲間を見て驚き、これは弟子入りするしかないという結論に至ったようなのである。正直、その経緯は全く理解出来なかったが、どうせダンジョンも覗くつもりだったし、それにイザとなったら【透明人間】でトンズラすれば良い話。
分かった、じゃあ、15分だけだよ。この状況で、とても『肉を焼いてるから帰りたい』などとと云い出す勇気もなかった。あ〜、せめて1人か2人、性根の悪ぃガキが混ざっててくれたらな〜、難癖付けて帰れたのに。みんながみんな、良い子たちだなんて・・・却ってタチが悪くないかい? 一方、向こうでは、
痛い痛いっ!
おい、どうしたんだ、急に?
分からん、まるで誰かに腹を抉られてるようだ。
大げさだな、何ともなってないぜ。
ヤメロ、触るなっ! とにかくポーションをくれ、違う違う、そんなんじゃダメだ、そんなのはルーキーを騙す為の、色を付けただけの、ただの水じゃねえか! 本物だ、頼む本物を、早く!
そんなモン、ウチらが持ってる訳ねえだろ。仕方ねえなあ、おーい、誰か、余分なポーションを持ってないかー!
う〜ん、何も聞こえない聞こえない、自業自得自業自得、ホラ、小童ども、さっさとダンジョン潜っぞッ!




