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非常事態⑧

 翌日、国民への発表を前にして、〈緊急特別臨時〉国会が開かれた。欠員が目立つのは、プライベートで与党を批判して、ユーチューバーと同じ末路を辿った議員が多かったからだ。

 集まった一堂は誰もが疑心暗鬼で、とにかくもう、一刻も早く真実を知りたいという一心だけであった。

「まず、今回の件をハッキリと説明してくれ! 支援者に話をしようにも、何も分からんと云うのじゃ、政治家としての立場が無い!」

そうだそうだ、与党はいったい、何を隠してるんだ!と大きなヤジ。

「総理、事によっては、与野党逆転どころか、党の解体の危機でもあるというのを、分かってらっしゃるんですかっ!?」と、仕舞いには与党側の若手議員からも責められる始末だ。

 しかし、それが集まった全員の本音なのだろう、仕切りが仕事の委員長も、敢えて発言を止めるような事はしなかった。

「ハッキリ云って、こんなのは独裁だろ、報道の弾圧に自衛隊による民間人への武力行使容認と、一体いつから日本は、北のような独裁国家になったんだ!」

 この臨時国会に出席する為に、特別に拘置所から釈放されたツバメの党の代表が、少数政党の強味とも云うべきか、ここぞとばかりに熱弁、正論を振るってきた、と!

「あれ、あ、おいおい! 何だ、どうなってんだ!?」

 不意に議員は浮かび上がると、選挙法違反で逮捕のきっかけとなった、あの電話ボックスの上に腰掛けるようなポーズで、ふわふわと空中に置き去りにされたのである。そして、

「あ、ぐるじい、だ、だじげでぐでえぇ・・・」と、まるで見えない壁に向かって爪を研ぐような仕草で、首をギチギチと回転させると、「ぢ、ぢ・・・ぢぎれるうぅーッ!」暫く粘った後で、まるで枷が外れたように勢い良くグリンと一回転して止まった。乱暴な母親が、まだ首の座らない赤ちゃんを、無理やりに抱き上げたような姿勢で、空中でプランプランと揺れている。

 議事堂内は静まり返り、誰も喋る者は居なかった。効果が全体に行き渡ったのを確認すると、おもむろに官房長官が口を開いた。

「今起こっているのは・・・つまり、今回のスカイツリーの一件は、こうゆう事です」空中の遺体を指差して。

「何を云ってるんだね、キミは? 論点のすり替えだ!」

「ふぅー、分かりました・・・見せてやれ!」

「何を? あ、ああ~っ!?」

 その瞬間、居眠りしていた者も含めて500人の議員が、一斉に宙へと浮かび上がったのである。

 混乱の中、議場の扉が開いて、白い服を着た少年が入って来た。慌てて駆け寄った刑務官は、首を180度回して倒れてしまった。

「皆さん、どうか静粛に、」空中でハイハイをしている委員長に代わって、「因みにこれは、ここに居る少年一人の力です」

「何だって! じゃ、じゃあ、あの事件もコイツの仕業か?」空中で逆立ちしている議員が、苦しそうに。

「あんなバケモノと一緒にしないでよ、」薄笑いで答えたのは少年だ、「ボクの力じゃ、こんなふうに人を浮かべるか、せいぜい頑張っても車一台持ち上げるので精一杯、ましてやそれを瞬間移動させちゃうなんて、もはやギャグってゆうか、デタラメってゆうか・・・そんなの神とか悪魔っしょ?」

「そのバケモノが本気を出したら、どのぐらいの事が出来ると思う?」ちょうどいい機会だと、官房長官も気になる所を訊いてみた。

「さあねえ、ハッキリとは云えないケド、映像で見た限りでは、まだ全然余裕だよね・・・そうだな、本人が〈ヤル気〉になれば、この日本ぐらいだったら、余裕で持ち上げちゃうんじゃないの?」

・・・

「分かったから、とにかく下ろしてくれないか」圧倒的な沈黙を破って、高齢の議員が殆ど泣きそうな声で云ってきた。「大変な事が起きてるというのは良〜く分かった、総理と官房長官の暴走と、勝手に早計した我々を、どうか許してくれ」

「じゃあ、全面協力と受け取って?」

「そうだ、降参だ!」


「こういった人間が、まだ他にも居るのか?」腰をさすりながら、恐る恐る少年を指差すベテラン議員。

「職業と同じで、それぞれに違った能力がありますからね」

「じゃあ、あの大量の心臓マヒの一件も?」

「あれには2人使いました、遠隔透視と、テレキネシスです」

「何でそのような人間を?」

「今回のような、特殊なケースに対応する為です。残念ながら、防衛は出来ないと証明されてしまいましたが・・・それでも我々は、超能力なんてものの存在を、絶対に隠し通さなければならないのです! どうかこの際、忖度なく云って下さい、犠牲を払ってでもこの国の秩序を護ろうとする私の行為は、やはり、間違っているのでしょうか?」

 誰も答えようとしなかった、同じ立場に立たされたとして、自分なら一体何が出来ただろう、天災にも等しい国家級の災厄に、取り敢えず行動で示した彼の勇気は、少なくとも認めるだけの価値はある、それが全員の総意、精一杯の答えだった。

「ありがとうございます、皆さんの理解を得られなければ、きっとこの国は滅んでいたでしょう」

「しかし恐ろしい話だ、よもや子供の頃に読んだ漫画のような人種が、本当に存在したなんて・・・しかし、大丈夫なのかね、この少年の他にもまだ居るようだが、その〜、こんな連中を我々にコントロール出来るのかね?」

「それなら心配要りません、」官房長官はポケットからリモコンを出すと、「各人にはちゃんと、安全装置を付けてありますから」

 チッ!と少年が舌打ちをして、胸の辺りに手を当てた。

「彼の身体の中には、無線でいつでも起爆させられる爆弾が埋め込まれています、その起爆スイッチを握ってるのは、私を含めて全国に10名、それぞれを違う都道府県に散らせてあるので、彼には何の自由もありません。幾ら彼の能力でも、同時に10人を相手にする事は出来ませんからね、何なら増やす事だって出来るのですが、予算の都合で今は見送っています。国庫から毎月消えている10億は、その為にだけに雇われた、安全装置たちへの俸給ですよ」

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