初めてのお仕事㉒
ピーッ! ピーッ!!
10時の合図が鳴るまでに、ナンとトミちゃんは、200本近いポーション草を採取してしまった! 20人分の1日のノルマを、たった30分弱で(しかも1人で!)終わらせてしまったのである。この世界にあるかどうかは知らないが、呆れたような顔のクリちゃんショウちゃんシノちゃんは、きっとこの時、〈ナントカと鋏は使いよう〉に類似した諺を思い浮かべていたに違いない。
鎧を脱ぐと、まるで蒸気のように汗が舞ったが、その顔はひどく満足そうに輝いていた、そして魔道具からグビッと水分補給をすると、俺らに向かって実に偉そうに、
「いや〜、一仕事終えた後の一杯は、格別だべな〜、水なのに不思議と甘く感じるぐらいだ!」まあ確かに、トミちゃんはよくやってくれたので、魔道具には冷えたポカリを入れて置いてやったのだ、「おらにイチバン近い水だべ〜♪」頼まれてもいないのに、そんな広告文のような感想まで云ってくる、案外俺らの世界に来たなら、インフルエンサーぐらいにはなれるんじゃないカナ?(笑)
「ああ〜・・・」
大量の収穫を、しかし【回収ッ!】で、ノルマの5本だけをクリちゃんに預けて、残りの全てを俺のポケットへと仕舞うと、トミちゃんは(驚くのも忘れて)そんな情けない声を出した、
「だから、リーダーに見つからないように保管するだけで、別に盗るって訳じゃないんだから」と説明、「それとも、このまま持ってって、ナベちゃんたちに全部没収されたいの?」
それで納得してくれたので、俺らは急いで朝の集合場所へと戻って行ったのだ。
やはり俺らが一番遅かったみたいだ、向けられる冷たい視線を避けるように、遅刻した学生みたいに背後から回ったのだが・・・!
「時間を守れない奴は、ペナルティだって云ったよな?」カナタが大声で一喝してきた。しかし、俺にはそんな覚えは無かった。
「いや、云ってなかったと思いますけど」
クスクスッ!と、図らずも回りから笑いが起こった。それで更に火がついたのだろう、
「今云ったヤツ、出て来いッ!」まるでバーサーカーのように、狂気に満ちた顔つきである。
面倒くさそうにタカハシが出て行くと、
「またジジイかッ!」憎々しげに云って、その巨体で威圧するようにタカハシの前に立ちはだかる。しかし包帯を巻いた右手は痛々しく。なので俺は、単に思いやりで、
「試しに一度、軽く殴ってみたら? いきなりだと、危ないし、」俺は本当にカナタの身を案じて云ったのだが、何故か火に油を注ぐ形となってしまって、カナタは左手をグルグルと回してヤル気満々だ。しかし、やはり両手が使えなくなるのは可愛そうだと、何かないかとふと足元を見れば、ちょうど野球のボール大の手頃な石が落ちていたので、これ幸いとその石を拾うと、それで攻撃されると思ったか、警戒するカナタに心配ないよと笑って見せ、ちょっとコレを見てくれる?と硬化した自分の頬に強化した腕で石を叩き付けると、パーンッ!とかんしゃく玉のように破裂して粉々になってしまったので、それでようやくカナタを思い止まらせる事が出来たのだった。




