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始めてのお仕事⑰

「だから単純に考えても、俺たちは各人1本見つけりゃそれで充分なんだよ、20人で銀貨60枚、それで俺たちに給料払っても、60−5で、会社は銀貨55枚の儲けになるんだから!」

「じゃあ、リーダーだけじゃなく、会社もグルなのかしら?」とはシノちゃん、「ギルドじゃあり得ない話だけど」

「トミちゃんから聞いたから、それは無いだろう、恐らくはナベちゃんたちリーダーの独断だ」

「どうゆう事だべ?」

「恐らく、リーダーたちは新しい〈内職〉を覚えたんだろうね」

「内職?」

「うん、会社に納める20本を除いて、後は自分たちで着服するつもりだ」

「そんな、もし会社にバレたら、大変じゃ?」

「自信があるんだろう、」とタカハシも自信ありげに、「仮に俺らに、会社に何か云えるチャンスがあったとして、古株と俺たちペーペー、果たして会社は、どちらの言葉を信じると思う? それにどの道、会社としてもノルマの20本さえ納めてくれたなら、充分な儲けになるんだからね、恐らくはこんなのは日常茶飯事で、大した問題とも思ってないのだろう、結局俺たちペーペーは、泣き寝入りするしかないって訳さ」

「だったら、おらたちから奪った薬草は、何処にいくだね? それだけの量を、会社みたいに、ギルドに買い取って貰うなんてわけにはいかねえべ」

「闇の取引所なんか、そこら中にあるわよ」とシノちゃん、「暗殺者ギルドや奴隷商と同じで、ただ国が存在を認めてないだけで」と、さすがは現役の冒険者。

それでも金貨4枚くらいにはなるだろう、一日の稼ぎとしては悪くないんじゃないかな?

き、き、金貨、4枚! そう叫ぶと、何て事だ、ひ〜ふ〜み〜! あのトミちゃんが指を使って、自らの意思で勘定を始めたではないか! あたら欲望とは恐ろしいものだ、ついさっきまで計算を知らない事を自慢していたような男を、一瞬でスクルージのような守銭奴へと変えてしまうのだから! しかし、すぐに・・・

そんだけあったら、おら〈長い間〉遊んで暮らせるべ!と曖昧に。諦めるの・・・早っ!

「しかしどうするんだい?」とはクリちゃん、「リーダーたちの企みだって分かった所で、無視したら結局、僕が殴られるんじゃん」確かに、ペナルティのあるクリちゃんにとっては、それは死活問題と云えるだろう、しかもカナタの奴はさっきのクリちゃんの挑発で、腕に大ケガも負ったもよう、恐らくは手加減どころか、全力で〈潰し〉に来る筈だ!

決まってるさ、と俺。

へ? やっぱサボるのけ? だったらおらは大歓迎だべ!

いや、キッチリと働くよ!

え、なすてまた? 取られるって分かってんのに?

1つはヒマだしね、それに、そもそも採取した薬草は、リーダーなんかに渡す気もないし。恐らくは、帰る前に何かしら理由をつけて、薬草を一まとめにしろとか何とか云ってくる筈だ。

その時に悪事を暴くのかい?

いや、そのまま200本でも300本でも、持ってるだけ全部を渡してやるさ!

なして! わざわざそんな?

心配要らないって、トミちゃん、実は俺の得意技は〈奇術〉でね、後で今日一番に面白い技を見せてあげるから、それまで楽しみにしていてよ♪


でも、そうは云ってもとっつぁんよ、今の話聞かされて、おらたちがもう、まともに仕事なんか出来っと思うけ?

仕事じゃないよ、とタカハシ。

何を云い出すだい? 仕事じゃなきゃいったい、コレは何だって云うだね?

だから云ってるじゃん、〈ヒマ潰し〉って。

へ?

何かしてなきゃ、1日はムダに長いのよ。

それでも働いて疲れるよりはマシだべ。

じゃあ、トミちゃんはマズいビールを飲みたいの?

ビール? トミちゃんは怪訝な顔をして、〈エール〉のコトけ?

そうそう、遠くまで歩かされてさ、無理な体制で身体動かして、汗ダラダラ流して、そして帰る頃にはクタクタに疲れて、それでよ〜やくホームに戻ってから、会社やリーダーの悪口云いながら飲む、最初のエールの一口ときたら! クウゥ〜・・・

ゴクリッ! とても喉から出たとは思えない、不気味で立派な音、その本人は、目の前に浮かんで見えてるらしいエールのジョッキを、半ば瞳孔の開いた目で一心不乱に見つめている。間違ってその間に指を入れたら、焼き切られそうな程の熱視線! そしてお約束のヨダレが、ダラーリと。

と、トミちゃん、ヨダレヨダレっ! 今度は地面に届いちゃってるから!

ハッ!? トミちゃんは幸せな夢から覚めると、ピシッと指で弾いて、器用にヨダレの滝を切るのだった。

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