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初めてのお仕事⑨

 ドラクエやリムル様の印象で、それほど怖いイメージの無かったスライムだが、やはり実物はマンガと違って、普通に恐ろしい魔物なのだろう。

 どうよ、おらの武勇伝聞いて、ちょっとは見直したけ? 靴の上から失った小指の辺りをポンポン叩き、どうよどうよと訊いてくる。しかし、なぜ彼は自慢げなんだ? てか、どこら辺りが『武勇伝』で、どこら辺りに『見直す』要素が? それは普通に、黒歴史では・・・まあ、本人が良ければそれで良いのだが。俺は話題を変える事にした。

作業中にサァ、他の派遣とかち合ったりとかして、トラブルになったりとかはないの?

まあ、それは相手によるべな。

相手?

ウチより弱小(の会社)だったり、リーダーがショボかったりだったら、ナベちゃんやカナタのハッタリで追っ払えっけど、大手だったり、冒険者崩れが混じってるようなトコだったら、逆にコッチがコテンパンに追っ払われるってだけのハナシだ。

・・・どこも、『弱肉強食』なのね。

ナヌ、焼肉定食?って、云ってない云ってない! てか、コッチの世界にも焼肉定食って、あんのッ!?


 そうこうする内に、向こうでは3グループが完成していた。残りの2人は・・・居た!

 誰からも少し離れた場所に1人座って、俯いて蒸し芋を齧ってる少年と、既に決まってしまったグループに、さざ波のような視線を送って、内股でモジモジしている少年、知り合いの居るグループに、入りそびれたりでもしたのだろうか?

あの2人で決まりだね、クリちゃんが冷静に云う、戦力としては、あまり期待出来そうにないけど、となかなかに辛らつだ。

よっしゃ! 一声上げると、トミちゃんは座ったまま2人にオイデオイデをした、しかし気付かないと分かると、コリャ、小童ども!と大声で、とっととコッチさ来やがれ! その怒鳴り声に驚いて、慌てて2人の少年が駆け出した、それを見て2人のリーダーがゲラゲラと笑っている、本日の犠牲者決定、という訳か、新人をイビり倒して、自分のポジションを守る事にしか興味が無い、そんな腐ったリーダーたちが、多くの派遣会社を潰してきたのだ。

 ま、正直な話、追加は飾りだろうと問題ないのだが・・・仕事なんて俺とトミちゃんが居れば、何とでもなってしまうのだし。

問題は、いかにして今日1日を楽しむか、である!

少年よ、名前は?

ショウです。そうか、俺にはショータってゆう甥っ子が居てね、そうかそうか、君とは友だちになれそうだ、ビスケットでも食べると良い、あ、トミちゃんの分は無いよ。

で、君の名は?と訊いてマジマジと見れば、この内股の少年は、俺が中学の時に恋に焦がれて胸こじらせた(?)、初恋の人、松尾昭子ちゃんにソックリではないか! ちょっと野暮ったいこけし髪、それに似合ったポッチャリ丸顔、そして何よりも印象的だった、小ダヌキのような垂れ下がった、魅力的な可愛い目!

 ど、どうして君が、ここに!? その時の俺の態度には、よほど切羽詰まった、鬼気迫るものがあったのだろう、何しろ、半世紀分の思いを、神の加護まで借りて、力尽くで伝えようとしていたのだから!

「い、い、い・・・イヤ〜ッ!!」

・・・

とっつぁん、謝んなさいよ、ありゃど〜見たって、とっつぁんが悪いべや。

いや、あのね、初恋の・・・

可愛そうに、シノちゃん、これがトラウマになって、セラピストの世話になるなんて事がなければ良いのだけれど・・・

これこれクリちゃん、どこでそんな、『トラウマ』やら『セラピスト』なんて言葉を?

・・・無言のまま、手で胸の辺りを隠すショウちゃん。

って、大人しそうな顔して、なんなら地味に一番ヒドイな、てか、別に俺は男になんか興味ねえっちゅーの! オイ、そこ、クリちゃん! 『ムキになる所がまた、ね〜?』とか云うんじゃないよッ!


 泣き止まないシノちゃんの為と、ポケットコンビニで銅貨2枚のイチゴ大福を買うと、頼むから、これでも食べて、ね、機嫌を直してよ!

 すると、さすが『男の娘』だけの事はある、スイーツを食べた途端、ケロリと見せたその笑顔は、中学の時に俺以外の皆に見せていた、あの昭子ちゃんの眩しい笑顔そのものだったのだ! 

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