追放②
戸惑うタカハシに、回りの全員がウンウンと頷く、そして、
「ホレ、コレで自分を、よ〜く見てご覧」とローブを纏った老人が、気の毒そうに大きな手鏡を差し出した。
(鏡なんかで、いったい俺にどうしろと・・・!?)
訝りながら鏡を覗くと・・・!
ウン、納得出来た! そこには元の世界と1ミリも変わらない、老いぼれて、禿げちゃびて、それでいて耳毛だけは飛び出し、おまけに前歯が2本欠けた自分自身が、媚びるような、言い訳がましい顔を覗かせていたのだ!
こりゃー・・・モブだわ!って、何だよ何だよ、同じ世界からやって来たのに、片や英雄で、片やオッサンって!? そりゃ確かに、俺はオッサンだケドさ、設定自在の異世界召喚だろ? だったら俺にだってサービスしてくれても良いじゃないか! ちくしょう、コッチの世界でも若者礼賛主義ってか? こんなロートル丸出しで、いきなり魔物がはびこる異世界なんて・・・ダメだ、どんだけ考えたって、悲惨な死亡フラグしか浮かんで来ない・・・
期待からの急転直下、余りのショックで、タカハシは船場吉兆のように頭が真っ白になってしまった。
「まあ、そう気を落とすものでもない、」ローブの老人が何の励ましにもならない事を云うと、「外見は、そりゃあ残念(?)じゃったが・・・そうじゃ! その分、職業とスキルに期待しようではないか!」
恐らくは、本人に悪気は無いのだろう、しかし今のタカハシには言葉の一つ一つが突き刺さる。だが・・・そうだな、ココは一つ、運試しだと思って、それッ、
「ステータス、オープン!」タカハシは無理に明るく振る舞うと、異世界モノのお約束、半透明のホログラムを出してみた。
「おお!」突然目の前に現れた、淡い緑色をしたスクリーンに感動したのも束の間、「こ、これは・・・?」その表示内容に絶句する。
「な、なんと・・・ステータスが、真っ白じゃ!」横から覗いていた老人が絶句した。
(タカハシ59歳、まだ誰のものでもありません)脈絡も無しに、タカハシの中でそんな台詞が浮かんだ。ああ、どこまで逃げても、俺の居場所なんか無いんだなあ・・・
「さ、さてと、そろそろ勇者さまたちの細かいステータスを調べねば!」
さすがに慰めようが無いと見えて、老人はいそいそとハーレム野郎の所へ戻って行った。すると、一部始終を見ていた3人が、
「おい、スゲーな、ステータスが白紙って、どんだけカスなジジイだよ!」
「やーだー、まるで0点のテストみたい!」
「・・・町から出たら、一歩で即死」
ぐぬぬ〜、ヤツら、云いたい放題、抜かしやがって〜・・・