初めてのお仕事⑤
「いったいなんの騒ぎだ!?」
門衛たちが爆発音と煙に驚いて、持ち場を離れて集まって来た、当の魔女っ子は、何が起きたのだと訊かれても、わんわんと泣くばかりで埒が明かない、おい、しっかりしろ、お前は冒険者だろ!? 焦れた門衛に肩を捕まれ、身体を乱暴に揺すぶられると、ようやく顔を上げ、恨みがましい目で遠くを睨む、そして見つけた、ただ一点だけを確信を持って指差す、俺がそそ〜っと横にスライドすると、魔女っ子の小さな指も、それと一緒にそそ〜っと移動した、それを二三回繰り返すと、不審に思った一人の門衛がコチラへとやって来て、俺の顔を見るなり、ヒャッと小さな悲鳴を上げた。
門衛の男は明らかに俺を意識しながら、しかし決して目を合わせようとはせずに、おい、この派遣会社のリーダーは誰だ?と訊いて来る。はいはい、俺ですけど、とナベちゃん、どうかされましたか?
「・・・行っていい」
「え!?」
「通っていいぞ」
「でも、まだ、点呼も荷物検査も・・・」
「そんなものは、どうだっていいんだ、さっさと行けっ!」兵士はじれったいと云わんばかりに声を荒げた。
「は、ハイ、すみませんでした、」ナベちゃんは訳が分からないままに皆を振り返ると、「おい、お前らぐずぐずすんな、行くぞっ!」
順番を無視して先に行く俺らに、回りの派遣から不満の声が上がった、しかし門衛は腰の剣を引き抜くと、文句のあるヤツは、前に出ろ!と男らしい声で云ったので、騒いでいた連中は度肝を抜かれて、続きの声を飲み込んだのだ。そして俺に近付くと耳元で、あの魔法使いの小娘が粗相をしたのでしょう?と決め付けて、ギルドに報告して、然るべき処分を下しますので、今日のところは何卒ご容赦下さい!
「あ、ああ、」俺は云って、「ひょっとして、昨日の晩の・・・見てたのね?」
「はい、」神妙な顔で、「初めから、終いまで!」初めも気になるし、だからと云って、終いもというのも気になるのだから狂おしい。そして、「全てこちらで処理しますので、どうかミノス様に宜しく」
どうやら俺のポジションは、そうゆう事(?)になってるらしい、これが兵士たちの間でどこまで広まっているかは知る由もないが、とにかくこの門衛に限っては、どうゆう勘違いからか、モフ耳団長と俺が親密な関係であると信じているらしいのだ。人目を憚らずに、団長のモフ耳をモフモフさせて貰った事と関係があるのだろうか?
しかし、モフ耳団長の影響力たるや、絶大なものだな、知り合いっぽいっていうだけで、王都の出入りもフリーパスなんだから! ウン、やっぱ敵に回さなくて良かった良かった♪
あれだけ泣いていた魔女っ子は、今はケロッとした表情で、何やら門衛や兵士たちに事情を説明していた、その会話の途中で何度も何度も俺を指差すものだから、俺は女の執念深さに、ほとほと困惑するばかりであった。
だいたい、先に仕掛けたのは魔女っ子の方ではないか、前世の憧れもあって、ただただ無邪気な思いから見つめたこの俺を、何も聞かずに殺すってのは、万国共通で間違ってはいないかい? そりゃあ、光速で飛んで来た石は怖かったろうケド、君が僕らにしようとした事だとて、似たりよったり、なんならもっと酷い事だったのだよ、この機会に人の痛みも知って、やがては立派な魔女っ娘、否、一人前の美魔女になろうじゃないか!
そして期待を込めて振り返ると、やはり魔女っ子は、今度は呪うような目つきでタカハシを睨みつけていたのである・・・ちょっとユ〜ウツ♪




