追放①
【追放①】
長いトンネルを抜けると、そこは異世界だった・・・
「おお、成功だ!」向こうから聞こえる声に、タカハシは恐る恐る目を開けた。すると、どうだろう! そこは大理石の柱の立ち並ぶ豪奢な広間で、居並ぶ人たちときたら、中世ヨーロッパ風に着飾った貴族に、ドン・キホーテのような甲冑に身を包んだ騎士、それから長いローブを羽織った神官だか賢者だか魔法使いといった、ラノベでお馴染みのフルコース(?)ではないか! ウン、もはや間違いないね、これは《異世界召喚》だッ!
「勇者様だ、勇者様だ!!」さて、歓声は未だ聞こえているものの、何だか様子もおかしい、おそらく100人は居るだろうと思われる人々の中で、しかし誰一人としてタカハシを歓迎する者が居ないのだ。皆は先に到着したハーレム野郎の一行ばかりをチヤホヤするばかりで、タカハシには一向、目もくれようとしないのである。って、チョー待てよ、そこのアンタ、今確かに目が合ったよね!? てか、アレがあの3人組か? おいおい、何だか顔、変わってないか?・・・いや、それどころか、体格まで変わってるって、どーゆーコトよ?
ハーレム野郎は軽薄な茶髪から眩しい金髪に、バタ臭かった顔は聖闘士星矢のライバルのようなクールビューティーに、ムキムキの身体なんかは見なくても分かるシックス・パックと、まるでミケランジェロの彫刻みたいな事になっている! 同じような変化で、2人のギャルもギリシャや東欧の神話に出て来る女神じみてるし・・・もはやそこに、日本人の面影すら見つけるのが難しい、正直、服が同じでなかったら、俺はアレが連中だと気付けなかった事だろう。
(そうか、あれが召喚者に与えられる《神の祝福》か)
って、感心してる場合じゃなかった、とにかく当座の俺の問題だ、とタカハシ。自分も早く、祝福のおこぼれ(?)に与からねばと、人垣を割って勇者パーティーに近付こうとするのだが、おかしい・・・何故かタカハシは、回りの人間からグイグイと押されて、気付けばその輪の中から弾き出されているのだ。
ははーん、さてはアレだな、そうか、俺ってばちょっとばかし(?)年上だし、皆は俺も同じ召喚者だって事に、まだ気付いてないんだな。そう思うと、タカハシは気を取り直し、貴族らの肘鉄にもめげずに、再び輪の中へと突入して行って、
「あの〜、僕も仲間なんですよ〜! 一緒に召喚されて、やって来たんです♪」そして同郷の3人に手を振って、「なあ、おい、お前からもちゃんと、彼らに説明してやってくれよ!」タカハシがハーレム野郎に頼むと、
「ハァ〜!?」ハーレム野郎は物凄い目付きでタカハシを睨むと、「だ〜れが仲間だって? 気安く話しかけんじゃねえよ、この『モブ』がッ!」
も、も、モブ? え、えっ!? 誰の事を云ってんの、まさか、え、俺っ!?