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黄泉水底ノ鎖

作者: Hora

 地球には世界・天界・冥界の3種類の知的生命体が混在している。それぞれの3次元空間が同じ場所にズレて存在しているのでそれぞれは原則的に知覚することはできない。ただし莫大なエネルギーが発生する前後数年間だけはひずみが起こり、相互に干渉が起こる事がある。

 莫大なエネルギーとは火山の連鎖噴火や隕石の衝突、超巨大地震などだ。世界・天界・冥界のそれぞれに甚大な被害を与える。極稀ではあるが異界同士で手を組み大災害に対処した過去も存在する。

 気性の穏やかな天界・気性の荒い冥界・どちらも内包するこの世界。世界との天界や冥界との幾度かの邂逅(かいこう)は神話や寓話、逸話として多く残されている。


それぞれの界の刑務所の話をしよう。


 天界で罪を犯したものは特定の敷地内で生活をさせられる。強制力は大して無く生活の時間の70%をその敷地の中で過ごすように言われるだけだ。70%を下回ったとしても、1カ月で調整して70%以上になるように促されるだけである。ただ重い罪を犯した場合においては、この世界に()とされる。天界独自の技術で世界に送る技術が確立していてこの世界にもそれを受け入れる団体が存在する。とはいえ長い有史の中でも()とされた天使は非常に数が少ない。犯罪そのものが非常に稀なのである。


 この世界の刑務所は地域・時代により千差万別である。天界のように緩い施設もあれば、多くの人が一般的にイメージするような規律があり、番号で呼ばれ、社会復帰のための刑務作業をさせられる刑務所が一般的ではある。ただ人権に配慮がなされているのはここ80年程の話であり、それ以前の刑務所のような施設はただの拷問・殺人部屋であった。そのような理不尽を領主が許可していた。見せしめとして犯罪者はこのようになるのだ。この領地の検挙率はこのように高いのだ。と冤罪も(いと)わずに示すことで、犯罪抑止力に繋げる。ひどいように感じるかもしれないが、現代のように監視カメラや捜査能力が無かったのだから犯罪抑止のため罪を重くするしかないのである。領主が多少狂っていると思わせるのがポイントである。もちろん領地を潤わせ犯罪が起こらないようする事が領主としてベストではあるのだが…。


 冥界は最も犯罪が多発し続けていることもあり罪や罰に関する深堀りは他の追随を許さない。冥界で最も人気のある職業は給料が高い看守である。ただ給与は二の次で拷問を行なって褒められる仕事なんて最高…なんだそうだ。捕まった方からするとたまったものではない。毎日のルーティンで当然のように拷問が行なわれ

「もう殺してくれ!」

と叫んでも、殺さないように殺さないようにと調整される。とは言え、うっかり死んでしまったり、自殺で逃げられてしまったり、痛みを快感に変える存在などがいて逃げ道・抜け穴は意外と多い。本当の意味の逃げ道・抜け穴という物理的な脱獄は絶対に不可能だ。

ではこの冥界における最高刑はどのようなものなのか。それは43人以上の個体を惨殺せしめた凶悪犯罪者に適用される刑。冥界ではだいたい年に3~4回は発生する。その刑は非常にシンプルといえる。


放っておかれる。


 冥界秘蔵の不老不死の薬。製法は秘匿とされているが、製造にそれなりの手間と金額と時間がかかる。冥界では大王がすでに飲んでいる。最も冥界で権威のある裁判官でもあり、犯罪者を裁く仕事を何億年も勤め続けている。その不老不死の薬を贅沢にも最高刑の犯罪者に使用するのだ。そして日本からほど近い水面下10000mを超える海底であるマリアナ海溝に捨てられる。呼吸は当然できない。そもそも水圧で臓器もろくに機能しない。深淵の中でも薬のため死ねず永遠の苦痛を味わう。

 その足には鎖。繋がれた重石(おもし)のサイズはバスケットボール程ではあるが100tの質量がある。地上に帰る事はもちろんのこと、数mmの移動すら絶望的なのである。その鎖の名は黄泉水(よみのみな)底ノ鎖(そこのくさり)という。この世から冥界に落ちた日本人から構想を得たものだそうだ。マリアナ海溝に海底探査機で行き写真を撮ってみよう。タイミングが合えば恐ろしい心霊写真が撮れるはずである。

43話目/50話

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