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天の子  作者: 夢樹明
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戦勝祈願

 天文18年 9月後半


 古渡城で、戦勝祈願の舞いを舞っている天丸です。


 戦に参加する、武将や兵が、勢揃いして戦の勝利を祈っています。


 今回の戦の目的は、手柄を立てて、古渡城を下賜して貰うことです。


 着々と城や城下町の建設も進んでいるのことで、是が非でも、この地を手にして、豊かにしようと、皆、意気込んているのが解ります。


 一応、僕が旗印になっているのだけど、まだまだ元服には、程遠いので、守り役と言うことになっている、中根喜右衛門忠吉が、まとめ役として、上に立っているのですね。


 実は、僕も何故、数え4つの幼児に、責任ある立場が回って来るのか、わかっていないのです。


 お爺と父である、織田弾正忠信秀様との間の微妙な関係が垣間見得るところなんですかね。


 とか言いながら、お爺は、今ここに居ません。


 美濃は、墨俣で開催した、大市は、盛況を博しているようで、最初ということで、お爺も行ったきりになっております。


 さすがに、津島を巻き込んでの、大商いを津島の大橋殿に、丸投げという訳にもいかず、まだ、手が放せないようです。


 斎藤道三公だけではなく、国人衆からの問い合わせも多く有って、大変だと、報せが届きました。


 と言うことで、代理に、千賀地半三正種と中根喜介忠定殿が居ます。


 中根喜介忠定とは、僕の叔父で、かか様の弟に当たり、お爺とお婆の倅になります。


 この前まで、商いで、船に乗っていたので、浅黒い精悍な感じの青年で、ちょっと、お婆に、似た感じがします。


 天文屋の船団を率いて、海賊相手に渡り合っていたそうです。今回は、一軍を率いて戦に参加して貰います。


 半三も、武将として、出陣してもらう予定です。市平や三矢も戦に参加すると言うことで、侍女が、5人ほど増えたりしました。


 百地や藤林も嬉しそうに、出陣式に参加しています。


 もちろん、滝川彦九郎一益に、風間出羽守も居ます。全体的に、士気は高いようです。


 僕の本音としては、戦なんかしなくて済めば、その方が良いのだけど、戦をするのなら、必ず勝つくらいの気持ちで、望んでいくよ。


 その為の、小細工もしてあるから、勝ちを祈って待つしかないね。


 それでも、戦に行く兵たちには、武器と防具を支給して、少しでも致死率を下げようと思います。


 兵たちには、槍と小刀と甲冑を渡している。


 槍と刀は、平均的な物だけど、甲冑は、特別な物を用意しましたよ。

 

 とはいえ、遥か未来の大河なドラマみたいな、お揃いの黒い甲冑なんかを想像するかも知れないけれど、そんなのは、偉い武家の縁者や家人くらいのもので、普通は、胴巻きやハチマキでもあれば、上等と言うくらいのもの。


 ほぼ、雑兵の装備は、家にある物を使うか、見よう見まねで作るか、村の物を借りたり、領主に、割り当てられた物を借りるかすることがほとんどだしね。


 装備なんかは、戦で、勝って奪いとるか、手柄を立てて貰うなんて言う、剛の者も中には、いたりするんだよね。


 渡す甲冑は、竹や木に、麻紐、藁を使って作っているけど、ちゃんと、籠手や具足もセットにしています。最終調整は、甲冑を着ける本人にしてもらうことにしたけれどね。


 見かけは、それほどでもないけど、身体が守れることを、第一にしたよ。そうそう、草鞋も厚めにして、麻紐を使ってしっかり履けるようにしてみました。


 それに、天文屋系列で、働いていた者たちには、隊伍を組んで仕事をしてもらってました。


 隊伍制とは、古代中国の春秋戦国時代からあった軍隊形式で、5人一組を最小単位にしていて、5人の中に、伍長というリーダーを決めて、伍長の指示で、隊が動くことで、命令が素早く伝達できるし、ある程度強い敵も、連携して戦うことで、倒したり、生き残る機会が増やすのが狙いです。


 僕も、素人考えながら、新兵たちに、戦闘の注意点を語ってみたりして、槍は、突く物ではなく、上から叩くもので、借りに突いて抜けなくなったときは、抜けない槍は頬って置いて、別の槍や小刀で戦うこと。


 敵が、大刀を使って攻撃して来たら、無理に避けずに、前に出て受ける。


 刀を振るとき一番切れるのは、切っ先三寸で、変に下がると、振り切られて、被害が増すことになってしまう。


 刀でも、鍔元から、一尺ならば傷も少なく済むかもしれない、そうやって押さえている間に、隊伍を組んでいる者が攻撃を加えることも可能になるだろうな。


 石を投げつけることも、有利に働くことになるから、いくつかの石を拾って置くことも大事だね。

 

 食糧についても、熱田の常滑焼きの水瓶を見ていて思い付いた、ナンを作ってみました。


 水瓶が、ナンを焼く釜みたいだなぁと思って、小麦粉を練って、焼いてみて、何人かに、試食してもらったところ、乾飯よりも遥かに良いと好評でした。


 僕は、戦に行けないけど、旨い物を食べるて、気分を少しでも、上げて欲しいと思います。




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