表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天の子  作者: 夢樹明
27/36

本証寺と僧坊酒

本証寺は、旧仮名使いが、変換出来なかったので、、新仮名使いにしています。

 天文18年 9月初め


 朝、晩、涼しく感じるようになって来ている、天丸です。


 本格的に、寒くなる前に、布団が欲しいと、思う今日この頃。


 綿入りの半纏やベストのような服も、作ってもらおうと、お爺と話しています。


 木綿については、三河の本証寺に、取りまとめをお願いしています。


 本証寺の住持玄海和尚に、お布施という名の贈り物をして、円満に取引をしてもらっています。


 穀物に、塩、銭、少量だけど砂糖は、やっぱり人気です。


 玄海和尚には、更に、反物や化粧品、鏡を贈ると、喜んでもらえたようで、良かった。

 玄海和尚も、普通に妻帯しているそうで、娘がかわいい盛りの様で、笑顔を見せていたようです。


 ついで、といっては、何ですが、肥やしの生産を提案してみたのです。


 実は、本証寺という、お寺は、土塁や柵に囲まれた。寺内町を持つ、所謂、城塞都市のような広い敷地のお寺なのです。


 普段から、町の者や近隣の者が集う性質上、出す物も出す訳で、正直な話し、寺でも困っていた訳ですね。


 今までは、小は、そこら辺で、大は、そのまま畑へ、とか、穴を掘ったり、土を被せたり、様々だったようで、玄海和尚も苦笑いを浮かべていたようですね。


 まずは、厠を造って、用を足す場所を決めて、田んぼや畑の近くで、作物が、出来にくいところに、肥やしぼっち、ちょっとした山になるように作ります。


 肥溜めと、違うのは、枯れた草や、葉っぱ藁崩、土なんかを混ぜて、山にして、たまに混ぜたり、棒を差して隙間を開けて中に、空気、酸素を入れて、バクテリアによる発酵を促すと、化学反応で、40℃~50℃近くまで温度が上がって、寒い時期には、湯気が出るのが、はっきり分かるようにまで、なるのです。


 肥やしになると、臭いもほとんど無くなって来るので、そうなったら肥やしとして使えるという話しをしたそうだけど、玄海和尚は、胡散臭げに見ていたので、出来た肥やしを買い取ると、言ったところ、それならばと、快諾してくれたようだ。


 ちなみに、本証寺でも、僧坊酒を作っているみたいで、売って欲しいと頼んでみたが、少量なので、寺内町だけで、消費してしまうと、断られたそうだ。


 ならば、作り方を教えてもらえないかと頼んだが、口元だけ笑みを浮かべ、冷めた目で、断られたらしい。


 それなら、仕方ないかと思っていたら、寺からの帰りに、半三は、自分の手の者を見かけて、話しを聞いてみることにしたそうだ。


 何でも、10年近く見ていなかった者だった、そうだが、偶然にも、杜氏の見習いをしているそうで、先代の杜氏頭の娘を嫁にしているそうだ。

 

 ただ、先代は、3年程前に亡くなったらしくて、新しい杜氏頭の僧侶には、雑用ばかり言い付けられて、大した仕事を降られていないらしい。


 半三の手下は、戦で、手傷を負って、本証寺の寺内町に潜んでいたらしく、伝も仕事も無く、ほぼ、乞食同然の状態だったところ、襲われでいた、先代の娘を助けたことで、仕事にありつけ、更には、嫁まで出来たところで、先代が亡くなって、今は不遇な境遇に置かれているらしい。


 半三の部下のサクセスストーリーには、別に興味は無いけど、杜氏としては興味がある。


 半三も、ならばと、熱田へ誘ってみたところ、殺されてしまうと言うことらしい。


 僧坊酒とは、遥か未来の清酒のようなもので、酒といえば、どぶろくが、ほとんどの今では、絶対に秘密にしなければならない、重要な物なのです。


 しかも、男の嫁は、生粋の一向門徒、熱田に連れて来たところで、考えが変わるとも思えない。と、相談を受けて、一芝居打つことにしました。


 ある日、杜氏見習いの男は、飯の足しにと、山へ行きました。


 山の幸を手に、帰る途中、運悪く獣に襲われて、傷を負ってしまいました。


 血だらけに成りながら、家に帰り着いたのですが、その日の夜から熱を出して、亡くなってしまいました。


 悲しみにくれる嫁まで、熱を出して寝混んでしまいました。


 やがて嫁も亡くなり、人々は、たたりか、流行り病かと、騒ぎ出しました。


 町の者は、そこらの乞食に、いくばくかの銭を渡して、夫婦を埋めて来るように言ってから、和尚に知らせに行きました。


 玄海和尚は、残念ですと、言ってお経を唱えました。

 やがて、人々は、杜氏の夫婦のことを忘れて行きました。夫婦の住んでいた家には、また、別の者が住んで、やがて、話しに登ることも無くなりました。

 


 ふと、目を覚ますと、後光が差した人影が見えます。きらびやかな装束のその方は、


「大丈夫、次に目を覚ましたときには、この世の極楽にいるの」


 その優しい声を聞いてから、眠気がして深い眠りに着いた。



「おう、目が覚めたか?」


「あんた?」 「おう」


 ガバッと、飛び起きて、


「一体どうして、あんた死んだんじゃ」


「よせやい、縁起でもねえ、俺ぁピンピンしてるぜ、それより腹減ってるだろう、粥を食えよ」


 旦那から、粥の入った椀を受け取ると、

 

「うん、熱っ、え!米かい、夢じゃないの?」


「夢じゃねえよ、俺たちゃ、また生かされたのさ」




 その頃、天丸は、


「お爺、お天が、やる意味あったの?」


「何、言うとる。お天は、天の使者じゃろう」


「‥‥‥」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ