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天の子  作者: 夢樹明
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市平と焼き物 と、おまけ

 天文18年 8月


「千賀地市平保俊と申します」


 1人の若い武士が、平伏してる。


 あれ?前に同じことがあった気がする。


 お爺と半三、お婆に、彦九郎もいる。しかも、平伏してるのは、お付きの二平だな。どういうこと?


「天丸様、この者は、我が嫡男、市平保俊にございます」


 半三から、経緯の説明があった。


 半三が、僕の家臣になることを決めたとき、直ぐに行ったことは、自分の信用の置ける者を、呼び寄せること。


 そして僕の周りに異常は無いか調べて、自身の信頼できる一族の者を、僕の配下として身の回りに置き、身辺警護を徹底にすることだ。


 自分の嫡男を置くことで、本気度は、わかると言うもの。

 本来は、もう少し僕との関係を築いてから、とも思っていたそうだが、彦九郎が、家臣として、正式に仕えることになったことで、二平も少々焦りも有って、この度、正式に元服して、千賀地を名乗り、改めて家臣として仕えさせてもらおうということらしい。


 いやいや、僕としては、派閥とかいらないから、家臣には、仲良くしてもらって、これから先をのんびり過ごせたら良いと思ってるだけなんだけど、先を考えると、正直難しいかな。


 

 さて、あいさつが、終わったところで、お爺と半三に残ってもらい、お爺から出張の成果を聞いてみる。信楽では、すり鉢を作ってもらえるように、話しがついて、取り引きすることが決まったそうだ。


 ついでに、多羅尾という信楽の土豪と交渉して、焼き物職人をしていた年寄りを数人、引き抜くことができたそうだ。


 さすが、お爺、良く老人とはいえ、焼き物職人を引き抜けたね?と、聞いたところ、フカ、サメの肉と、砂糖の小壺で、なんとかなった、と、笑っていた。


 肝心の陶石も見つけたので、庭の敷石にいくらか欲しいと持ちかけてみたら、そんな物、好きなだけ持って行って良いとの言質を取ったそうだ。


 ドンだけ、凄いんだ、砂糖の威力。お爺にしたら、例え、銭が有ったとしても、なかなか手に入いらない物が、砂糖なのだそうで、自分で食べる寄りも贈り物として、喜ばれるものらしい。


 職人は、伊賀にも行ってもらうつもりだから、半三にもそのつもりで、と伝えておく。


 ただ、お爺から、厄介なことも聞かされた。

 焼き物の釉薬を結構な値段で、吹っ掛けられているらしい。

 職人の老人たちに、聞いて見たが、良くわからないらしい、用意された釉薬を使うだけで、どんな物かは知らされていないそうだ。


 なるほど、道具は使えるけど、その詳しい作り方までは、わからない職人を選んで、口減らしの意味でも連れて行くことを認めたんだな。


 いくら何でも、情報を持っている人間をそう簡単には手放さないよね。


 やっぱり、この時代、甘くはないな。


 それならと、提案する。


 一度、釉薬を買って、ススキを燃やして、白い灰にした物と、焼き比べてみたら良いのではないかな。

 

 簡単に言えば、釉薬とは、ガラス質を含んだ物で、絵付けや色付けした後に付けてから、焼いて、ガラス質を焼き物にコーティングする為の物になる。


 何で、ススキかというと、ススキは、茅とも言い、根から土中の珪素を吸って貯める性質があるから、ガラス質の珪素を含んだススキの灰は、釉薬に使えるのだ。


 お爺と半三は、さすがと、こちらを見て頷いている。



 

 久しぶりに、町中を散歩している。散歩といっても、大半は、二平、改め、市平に抱っこされていてるけど、相変わらず熱田は、賑わいを見せている。


 見物していると、御不浄払いがやって来て、仕事を始めた。

 

 市平は、直ぐに離れようとしたが、僕は、やらせているものの、町で、御不浄払いを見たことがなかったので、見物することにした。


 数人の御不浄払いが、仕事をしている姿を見ていると、1人だけ頭1つ分ぐらい小さい者がいて、思わず、


「ずいぶん、小さい者が、いるのぉ」


 と、ぶしつけなことを言ってしまった。ちょうど、ざわめきが途切れたところに、僕の高い声が響いて、以外に大きな声になってしまった。


「それは、オラのことか!」


 間の悪いことに、相手に聞こえたようで、こちらに、顔を向けて来た。


 直ぐさま、三矢と四つ葉が前に出て、臨戦態勢に入る。


 相手は、それでも、こちらを見てくるが、オバQ頭巾を被ったままでいる。


「申し訳ございません!」


「日吉!やめろ」


 事態に気づいた御不浄払いの頭の者が、こちらに謝って来て、仲間の者は、小さい者押さえつける。


 頭巾を取ろうとするのを「よい、外すな」と、止める。

 そして話し始める。


「わしも、ぶしつけであった。ただ、その者が、12を越えているのか、気になっただけだ」


 御不浄払いを作ったときに、年齢制限を12以上にしたのだ、体力的な問題で、


 頭は、


「この者の年は、数え13になります」


 僕は、

「そうか、13なら、まだ背が伸びる可能性があるか」


「本当に、ございますか?」


 日吉と呼ばれた御不浄払いの者は、こちらに聞いて来た。


「何とぞ、背の伸びる方法をお教えくだされ、この通り」


 と、押さえつけられながら、額を地面に擦り着けて来た。


 ちょっと引いたけど、


「よいか、真面目に働き、雑穀、納豆、魚、骨揚げを良く噛んで食すがよい、それと、海藻の酢の物は、欠かさずにな、そして、良く眠るがよい、さすれば、2年ほどで周りの者ほどには、背は伸びよう」


「それだけで、よろしいので?」


 と、日吉は不思議そうに聞いてきた。


 僕は、


「わしを信じぬか?信じて励め。此度のことは、不問にいたす。行くぞ」


 と、強引に会話を打ち切り、市平たちに、去るように促す。


 御不浄払いたちが、平伏してる間に、素早くその場を後にする。


 まぁ、たんぱく質に、カルシウム、アミノ酸に、糖質に軽い運転をすれば、身体は作られるはずだし、お酢には、カルシウムを吸収する効果があったはずだよな?上手くすれば、背も伸びるはず。


 僕も実践してるし。



 帰った後、市平たちに、お小言をもらいました。

 

 







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