表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天の子  作者: 夢樹明
17/36

天丸の心配と勉強

 天文18年 8月


 暑い~。寝苦しい夜に、ふと目覚めると、四つ葉が、団扇で、扇いでくれている姿を見て感動を覚えた、天丸です。


 朝、起こされて、四つ葉に、ちゃんと寝たのか聞いてみると、あの後、休んだそうだ。


 大丈夫か聞くと、大丈夫と笑って答えてくれた。

 その笑顔を見て、懐かしいような、切ないような気持ちになった天丸です。

 

 それにしても、蚊帳が、手に入って、本当に良かった。ただ、蚊帳は、麻の製品だそうだけど。

 虫に刺されても、つける薬も無い、この時代。

 転んだ、子供の擦りむいた膝に、唾をつけ

る大人の姿に、驚いたあの日。


 待てよ。薬?  ‥‥ヤバい!この時代、戦場での手当てなんて、傷に馬の糞を擦り付けることも当たり前な、恐ろしい時代。


 直ぐに、四つ葉に聞いてみる。返ってきた答えは、そんな馬鹿なことはしない。

 ただし、村独特の風習や因習を、そのまま信じ込んでる者たちは、結構いて、注意は必要とのこと。


「もちろん、天丸様には、そのような者は、近ずかせません」


 と、胸を張る、四つ葉。もちろん笑顔。


 お婆と半三に、相談してみる。お爺は、只今、出張中です。


 とりあえず、お婆たちに、傷の治療について聞いてみる。

 答えは、概ね四つ葉の言っていた事と同じようで、預かり場では、きちんと教えているから、心配いらないと、優しく教えてくれた。

 余程焦って見えていたのか、仕事を差配している者たちにも、対処法を教えているから大丈夫だからと、笑ってくれた。


 ただし、薬草は、生半可な知識では、手を出さないように、釘を刺された。


 そういうのは、勉強して、自分でも経験を積んで、解るようにしなさいと、助言をいただいた。

 

 優しくも、厳しい、お婆の言葉を胸に留めて置こう。




 懸念が、晴れたところで、お婆は、仕事に行き、僕は、半三と、お話しとお勉強です。


 今回は、織田大和守家についてです。


 聞いたところ、天文16年の古渡城戦以降、織田弾正忠家と、織田大和守家との間で、今だに和睦が、成されていないそうです。

 

 今年、3月の三河安城合戦でも、織田弾正忠家では、大和守家を、気にして援軍が遅れ、安祥城は、落城寸前まで追い込まれたそうです。


 その時、三河の将、本多忠高が、流れ矢により討ち死にしたことで、三河勢が、浮き足立ち崩れて行ったことで、辛うじて勝利を手にすることができたとのこと。


 ちなみに、半三によると、本多忠高は、昨年、嫡男が生まれたので、手柄を立てようと焦ったのか、前線に出て流れ矢に当たって討ち死にしたそうだ。


 これは、反面教師な出来事と胸に刻んで置こう。


 さて、つまりは、力を付けた織田弾正忠家の足を引っ張ってやろう、という心の見える織田大和守家。


 そもそも大和守家って何?という疑問を、半三にぶつけてみた。


 半三によると、まずは、斯波家について、話しをした方が、解り安いそうだ。


 本来、斯波家とは、細川、畠山に並ぶ、足利一門の管領家で、越前に居を構え、朝倉家を家臣とした。筆頭管領になる程の有力守護大名だったのだ。


 尾張に来た理由は、越前、尾張、遠江の三つの国の守護であった斯波家に、幕府より遠江の混乱を治めるように、という指示の元、越前を朝倉家に任せ、尾張に居を移した。


 その時、一緒に居を移したのが、越前で、神官出自で、斯波家に使えていた、織田の一族になる。


 斯波家は、たびたび尾張の兵を率いて、遠江を攻め、平定しようとしたが、地元の勢力や今川との戦で、徐々に力を失くしてきたらしい。


 ここで、足利幕府のやり口が、見えてくる。力を持った者は、その力を削がれる。


 事実、越前も朝倉家による下克上で、支配権を失っている。


 祖父の代までは、それなりに権力を保持していたが、松平清康に大敗したことによって、守護代、織田大和守家が、斯波家を抑えるようになり、織田弾正忠家のような、大和守家から分かれた分家も、おのおの動き出して覇を競い出したらしい。


 今の斯波家の当主、斯波義統には、実権は無いそうだ。


 さて、ここで、織田大和守家当主、織田大和守信友についてだが。

 やはり、家臣に実権を握られている。


 坂井大善、坂井甚介、河尻与一らが、実権を握り大和守家の清洲城を実行支配している。

 なぜ、そうなったかは、わからないそうだ。

 それにしても、3人というのは嫌らしい、1人抜け駆けしようとしても、他の2人が邪魔をする。

 ただし、外敵には、共同で当たるので侮れないとか。


 織田信友としては、因果応報ということになるのだろうか。


 ちなみに、お爺は、季節の挨拶として、守護の斯波義統様に、熱田の瓶や贈り物を献上したのだが、どうも、坂井大善が使っているらしい。

 品物の中には、京の都で、名の通った店の白粉も入れてある。

 お爺は、高級品を贈ったのだから問題無い、と言っているし、京というブランドの方が喜ばれる、何時の時代でもブランドには、かなわないんだろうな。




 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ