名はハーレムちゃん! 2
苦し紛れの嘘ではあった
「なるほど」
だがナルは納得したように、大きく頷く。
そんな純粋さに、ハーレムちゃんの心は痛む。
(嘘半分。ナルちゃん、どうか許してちょうだい。精霊という威厳のためなの)
「こんな嫌な話は辞めましょう。
さて、ナルちゃん。ハーレムちゃんは、とても、とても嬉しいです。救ってくれただけでなく、綺麗にして、こんな部屋まで用意してくれて」
「綺麗にしたのも、部屋を準備したのも、メイドたちですが」
ガクッ。
ハーレムちゃんは話を折られ、体勢を崩す。
「良いの! ここまでしてくれたのは、ナルちゃんの指示でしょう?」
「ま、まあ」
それを聞き、胸を張り、両手を大きく上げた。
「そこでナルちゃんに、『ハーレム』を、お届けしよう!」
「決まった」とハーレムちゃんは、鼻高くする。
「…………」
「…………」
「…………?」
ナルは疑問符を浮かべ、首を傾げた。
「ハーレムっていうのわね。
複数の人から恋愛対象とされて、困ったふりをして、ニヤけている状態のことよ。
そんな皆に好かれた、嬉しい状態を指すの」
「は、はあ」
反応が良くない。
「ハーレムちゃんは、それを司る精霊。
だからナルちゃんに、感謝として『ハーレム』をお届けするの。
たくさんの男たちに囲まれて、チヤホヤされるのよ。嬉しくないかしら?」
「え、あ、はあ。そうですかね」
しかし詳しく説明されても、微妙な反応をするだけ。
ハーレムちゃんは精一杯、分かりやすく説明をした。激昂してもおかしくない。だが内心は焦っていた。
(あーれ? おかしいわね。
一○○年でハーレムが廃れたのかしら? 国が恐れて、揉み消した? いやいや、そんな馬鹿な。
そもそも王族の一夫多妻、多夫一妻制が廃れるわけ無い。だからハーレムという言葉が無くなるはずが……。
いや、そうだとしたら非常に不味い。
ハーレムちゃんの存在価値がーー)
「ハーレム様」
「は、はい!」
声をかけられ、驚いて返事をする。
「ハーレムを理解いたしました。
しかし私には、勿体のうございます」
そんなナルの言葉に目を見開く。
「……えっ、もしかして、もうハーレムなのかしら?」
「いえ。しかし私にハーレムは似合わない」
「は? いや、そんなことは無いわ。ハーレムは、皆が得られる権利。それに貴方はーー」
ナルの弱気とも読み取れる言葉。
それにハーレムちゃんは反論しようとした。
「いえ! 権利はして良い。しなくて良い。自由ということでしょう。
私は、そのハーレムを、恋愛を望んでいない」
「の、望んでいない……だって」
そんな堂々とした宣言。
ハーレムちゃんは、言葉を失い、膝をベッドにつく。顔は青白く、唇は震える。
これは「恋愛を望んでいない人間などいるのか!?」という驚き。そして司る『ハーレム』を望まない人間がいること。
つまり存在意義を否定したと同然だった。
「……そ、それは本当に?
よく遊んだ男の子、優しくしてくれたお兄さん、だったりいなかったの?
それで無くとも、喋ってみたいとか、面白い人だとか……」
現実を受け入れられず、早口でまくしたてる。
だがナルの表情は変わらない。
次第に言葉は弱く、小さくなっていく。
ナルは苦笑をして、落ち着いた口調で言う。
「いました。しかし今の私にはいない。
さらに言えば、ハーレムの必要性を感じません。
本来、貴族として男性と、お付き合い強制されるかもしれませんが、それもあるかどうか。
ハーレム様」
ハーレムちゃんは口を半開きにし、固まっていた。だがナルに呼ばれ、口を閉じる。
「私は構いません。
どうか他の方にハーレムを届けてください」
「……わ、分かっ……た」
ハーレムちゃんの言葉には、とても強い絶望が含まれていた。
しかし!
ハーレムちゃんに、『諦め』などという言葉は無かった!
翌日、ハーレムちゃんは感謝をしながら、屋敷を飛び立つ。
隠れるとUターン。
ナルの監視を開始した。
「必ずナルちゃんにハーレムを届ける」この強い思いが、ハーレムちゃんを動かした。
そしてナルとハーレムちゃんは、王立中央学院。通称、中学へと向かった。




