名はハーレムちゃん! 1
「ぬわはっ!?」
そんな素っ頓狂な声を出して、精霊は飛び起きた。
体長は三○センチ。
胸が異常に大きくボンキュッボンの体。
服はピンク色のスカートが大きい、三角形ドレス。
ナルが救った精霊だ。
あの時は、汚水で服が茶色に、体中に汚れが付着していた。今は汚れが落とされている。
「ここは?」
色気、溢れる声。
しかし体が小さいため、全く合っていない。
ガタッ。
すると黙ってメイドが出ていく。
「んん?」
首を大きく傾げ、見送った。
「うん。まあいいや」
精霊は掛けられたハンカチを払い、立ち上がる。
「ん? うえっ!? ハーレムちゃんのドレスに穴がっ!?」
精霊こと、ハーレムちゃんは、自身のピンクドレスを見た。
それには、突き刺さったような、穴が空いている。
ハーレムちゃんの顔は、目が飛び出し、口が大きく開けられる。
とても間抜けだった。
「でも、大丈夫! ハーレムちゃんの力があればー」
その場でクルリと回る。
するとスカートの穴が塞がる。
「さーて、オッケーね。
さてさて、どうしようかしら」
大きい部屋を見渡し、情報を得ようとする。
ガチャッ。
扉が開く音に振り返る。
そこには残念な青年が入ってきた。
この「青年」は、男という意味ではなく「思春期の男女」を指している。
(黒髪ロングを結ぶ。中性的で小さな顔。
大きく強い、青い目。
純粋さがあって、忠犬って感じかしらね。
少し筋肉質で一七○センチ程度。
この世界の女の子にすれば、少し高いかしら)
ハーレムちゃんは、ナルを見定めるように、上から下にじっくりと見ていく。
(ドレスは水色の鱗模様。
だけどサイズが合ってないわ。だれかのお下がりかしら?
金玉を使った髪留めゴム。赤サンゴのネックレス。
う〜ん。お金持ちなのかしら? 変にゴテゴテしてる。「こうしとけば、良いんでしょ?」っていう、いいとこ取りをした感じね。
点数は三○点。
例えるなら「コーヒーにレモン汁とシナモンを入れて、ホイップとキャラメルソースを追加して、ラテアートもしちゃった。どう? 上手いでしょ?」みたいな、駄目ないいとこ取りと、押し付け感があるわね。
ああ、本当に勿体ないわ)
「う〜ん」と唸り、一瞬で評価する。
「精霊様。お初にお目にかかります。
私はレーグラント公爵家。オルデランの娘。ナルティアと申します。
よろしければ、お名前をお教え頂けますと、幸いでございます」
ナルはハーレムちゃんの前に跪き、頭を下げる。
「フム。良かろう!」
態度に、期限を良くし、ベッド上を移動する。
そして両手を腰に当て、胸を張る。
「名はハーレムちゃん。ハーレムを司り、人々に幸せをもたらす存在である。
表を上げなさい。ナルちゃん」
ナルは「ナルちゃん?」という名詞に、疑問符を浮かべる。しかし顔には出さない。
「ありがとうございます。ではハーレム様と。
早速で申し訳ありませんが、何故に下水道を流れておられたのでしょうか?」
低姿勢だが、顔は仕事用の真剣に変わる。
「あ、あーー。……そ、そうね」
真剣な目を向けられる。ハーレムちゃんは目を逸らしながら、思い出す。
地上へと降り立つ。
「これから楽しむぞ!」と意気込んだと同時に、猫やカラスに襲われる。
小さな体が、玩具か食料にでも、思ったのだろう。
降り立って間もない、小さな体では、永遠と逃げることなど無理だった。
そして安寧地を発見する。それが下水道の入口。
入口は不法投棄を防ぐため、網で防がれる。
体を押し込み、網を突破した。
そこには猫もカラスも手出しが出来ない。
ハーレムちゃんは、下水道の仕組みを知るはずもなく、住環境を整えていく。
だが雨による、自然排水が流れ込む。
水に押され、気を失い、下水道を流れていたのだ。
「うぅ」
ハーレムちゃんは、思い出しながら、顔を強く顰める
ナルは、そんなハーレムちゃんの顔を見て、疑問符を浮かべる。
そして、どう言えば自身の威厳を、保つことができるか考えていた。たっぷり熟考している。
言葉を待つ、強い目。悪意は無いのだろう。しかし長考するほどプレッシャーは強くなっていった。
「そう! ハーレムちゃんは、司る概念のため、仲間たちには相手にされず。仲間はずれにされていたの。
そのために人間界の恐ろしさを知らず、いろいろと巻き込まれたわ。
結果、気を失って下水道を流れて、しまったの!」
苦し紛れの嘘ではあった。




