強さ 2
「フッ」
大きく鼻で笑った。
「兄さん何か?」
「いや」
ジアとニアの二人は、高みの見物で訓練を見ている。
昼からの歩行訓練。
二人は参加せず、見るだけだ。
そんな中、ジアは唐突に笑った。しかし顔のシワは寄り、相変わらず険しいまま。
そんな対称的な感情が同居している。
(アイツか)
ニアには、兄の異変の原因が分かっていた。
ナルティア・レーグラント。
三月経つが一向に折れることは無い。
兄弟も、強い言葉やちょっかいを出しているが、効き目はない。
(気に入ったんだね)
兄、ジアは戦闘狂の気質がある。
強いやつと戦うことで、喜びを感じる。
それ故に、壊れることのないナルに喜び、気に入ってしまった。
一方でジアが世界一嫌う存在である『貴族』。
「気に入った」と「嫌いな存在」という二つの感情が、入り混じっている。
(だから、あんな笑いながら、顔は険しい。
対称的なこと感情になっている)
「あの女?」
ジアは目を細め、睨むように見る。
しかしニアは、慣れているため気にしない。
「ん、何か問題か?」
「いーや。何も無い」
「なら良い」
ニアはピエロのように笑って誤魔化した。
(兄さんが、貴族を嫌う理由は一つ。
貴族運営の孤児院で、僕が売られかけたから)
それ以降、人を信じず、人当たりが悪く、暴力的になった。
(兄さんに救われた。
だからこそ、僕のすることは決まっている)
ニアは拳を強く握る。
(兄さんが攻撃をするなら、防御する。
武力で戦うなら、知力で戦う。
信じるなら、疑う。
僕たちはこうして生き残ってきたんだ)
「この役立たずっ!」
「ゴガッ、申し訳ありません」
ここは王城、第三皇女テラシア・ディーネの部屋。
テラシアは尖ったヒールで、執事を蹴飛ばした。
「つまらないじゃない!」
そして何時もの癖で、爪を噛む。
「あのドブ令嬢め、怯えて帰ってくると思ったのにっ。
……あーっ! もう!」
執事はテラシアの、サンドバッグとなっている。
あえて水の祝福を使わないのは、痛みを与えるためだろうか。
しばらくして落ち着いたのか、勢いよく椅子に座る。
「何か仕掛けてやろうかしら」
ニヤリ。
悪い笑みを浮かべ、考えているようだ。
「確か騎士科は警備演習があるわね。
良いこと思いついた。ドブ令嬢にーー」
トントン。
「お邪魔するよ。テラシア」
「あっ、ガイアお兄様!」
その瞬間、テラシアの猫撫声に変わる。
部屋に入ってきたのは、ガレイア・ディーネ第二王子。
テラシアの実の兄にあたる。
一方で『女喰らい』とも呼ばれる男だ。
ブルーサファイアのような、輝きと大人の余裕を感じさせる人物だ。
ダークブルーの髪色に、オールバック。
中性的な顔つきで、目が大きく、深みがある。
ニカッと白い歯を見せた笑顔。
耳にはブルーサファイアの雫の形をした耳飾り。
身長は一九○センチで、細身である。
今は連れていないが、何時もは両手に華状態である。
「なに、ちょっと妹と話そうと思ってね」
「あぁ、それは嬉しゅうございます!
どうぞ、コチラへ!」
「ガイア様、どうでしたか?」
「クククッ、まあ相変わらずのようだ。
今は『ドブ令嬢』がいなくて、憤っている」
ガイアは部屋を出ると、従者を連れ歩く。
「調べました通りでしたか。
どうされますか?」
「どう、とは?」
ガイアはニカッとした笑顔で、従者を見る。
従者には、その笑顔には、何時もの悪巧みの顔だった。
「失礼しました。ガイア様には、不要な質問でした」
「クククッ、なら頼むぞ?」
「ハッ」
ガイアは机に『間違えて』置かれていた報告書を思いだす。
そこには『ドブ令嬢』こと、ナルティア・レーグラントについて書かれていた。
「偶然か必然か。
神も女好きを理解してくれているようだな」




